世界は「あらゆるオプションを総動員」〜EUタクソノミー基準に原子力を追加〜

エネルギー ブログ

強い寒気の南下に伴って、昨日の夜からは北陸地方を中心に局地的な雪になるとの予報。
 
積雪の急増に警戒が必要とされていて、今朝恐る恐るカーテンを開けると確かに一面真っ白。
 
現在のところ目測では10センチ弱といった積雪でありますが、日本海にはJPCZ(日本海寒帯気団収束帯)に伴う活発な雪雲が現れていて、既に北陸地方にかかっている模様であり、雪マークが並ぶこの週末は、不要不急の外出を避け過ごすことが賢明かと思う次第です。
 
さて、関心事が多方面に亘る今日この頃ですが、元々の欧州エネルギー危機に輪を掛けて、ウクライナ情勢の緊迫で深刻さが増しているなか、注目の「EUタクソノミー」に関し動きがありました。
 
原子力産業新聞記事なども参考に内容を紹介させていただきますと、欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会(EC)は2月2日、環境上の持続可能性を備えたグリーン事業への投資基準「EUタクソノミー」において、持続可能とみなす技術的精査基準を規定した「地球温暖化の影響を緩和する(補完的な)委任法令(Delegated Act: DA)」に、一定条件下で原子力関係の活動を含めることを原則的に承認したと発表。
 
ECは昨年の12月末、原子力と天然ガスの関係活動を含める内容の案を「持続可能な資金提供に関する加盟国の専門家グループ」、および諮問機関である「持続可能な資金提供プラットフォーム」に提示していた訳ですが、これに強く反対するドイツやオーストリアを振り切って、これら機関からの見解に基づいて、今回政治的合意に達したとしています。
 

 
ECによると、EUが2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を達成するには多額の民間投資が欠かせず、この目標の達成に必要な活動への民間投資をEUタクソノミーで誘導する方針であり、同タクソノミーで加盟各国のエネルギーミックスを特定のエネルギー技術に決定付けるのではなく、CO2排出量の実質ゼロ化に資するすべての方策を自由に活用させることで、CO2排出量の実質ゼロ化への移行を促す考え。
 
近年の科学技術の進歩を考慮すると、原子力と天然ガスへの民間投資はこの移行を促進する役割を担っているとECは指摘しています。
 
原子力と天然ガスに関しては、タクソノミー規制の下で明確かつ厳しい条件を設定してもいて、とりわけ原子力については、事故耐性燃料の活用要件を技術的精査基準の中に設定することや、高レベル廃棄物の排出量が最小限になる第4世代原子炉の将来の活用に向けた要件を同基準に盛り込むこと、新規原子力発電設備のリードタイムの長さを考慮して、既存原子炉の運転期間延長に向けた設備の安全性改善等を同基準の要件にすることを求めています。
 
活用にあたり、こうした課題認識を共有するということも同タクソノミーの意味合いと受け止めるところですが、今回の発表について、欧州の原子力企業約3,000社を代表する欧州原子力産業協会のY.デバゼイユ事務局長は、「原子力がEUタクソノミーに加えられたことを歓迎する」とする一方、原子力が引き続き「過渡期の技術」として扱われていることは残念だと表明。
 
「我々は原子力が地球温暖化の影響緩和に貢献し、EUタクソノミーにすでに含まれている発電技術ほどの害を及ぼさないと確信している」と述べたことに、私自身、全く日本にも同じことが言えるものと共感した次第です。
 
既に把握していたように、脱炭素に向けて、世界は「あらゆる(電源)オプションを総動員」するとの考えであり、再生可能エネルギーに偏重しつつあったEUがこうした政策決定したことはまさにそのことを証明するものと認識する次第です。
 
さらに忘れてならないのは、日本と同じ島国の英国。
 
再エネ偏重による電力システムの脆弱さ、電力自由化の失敗に気づき、既に革新的原子力の導入をめざし具体的な政策選択に舵を切るなど、経済成長をリードするのは奇しくもEUから抜けた英国ではないかとも言われています。
 
ドイツを見習えと主張してきた勢力は、こうした状況を見て、今度はEUに学べと言うのでしょうか。
 
決して言わないと思いますが、私から見れば、こうした世界の動きは「至極現実的な対応」と思うところであり、日本はいつまでも「再エネか原子力か」の二項対立論議を続けている場合ではありません。
 
「敵は原子力」ではなく、「脱炭素」。
 
エネルギー資源に乏しい日本が、このタイミングで真に現実的な選択に舵を切り直せるか否かに将来がかかっていると言っても過言ではありません。
 
近年の電力需給ひっ迫に怯える状況とも合わせ、この寒波襲来の日に真剣にそう考える次第です。