胸を打たれた「川崎市子ども夢パーク」視察

ブログ 敦賀市議会

先の衆院選を受けた首相指名選挙の決選投票が昨日午後行われ、石破茂首相が第103代首相に指名されました。
 
同日中に第2次石破内閣を発足させた後、石破首相は会見で、「(政治改革について)速やかに自民党案を取りまとめ、年内にも法制上の措置を可能とするべく、多くの党の協力を得られるよう努力する」と述べ、政治資金を監視する第三者機関の設置など、政治資金規正法の年内の再改正を目指す考えを表明。
 
国民民主党からの「スピード感をもってやるべき」との指摘を意識しての発言とも思いますが、有言実行で進めていただきたいところです。
 
なお、国民民主党の玉木代表に関する不倫報道については、会見で「家族、特に妻にはすべてを話した。『こんな大事な時期に、こんな報道されて何やってんだ』と強く叱責を受けた。まったくその通りだ。」と述べた上で、その後行われた両院議員総会では、代表の続投が決定。
 
同日夜に行われた東京・有楽町での街頭演説で謝罪する玉木代表に対し、叱咤と「頑張れ」の声が錯綜する状況が報道されていましたが、真摯に反省いただいた上で、今後は一心不乱に政策実現に向けて邁進される以外ないと思う次第です。
 
さて、国政のことはこれまでとし、昨日から所属する文教厚生常任委員会の行政視察に出席。
 
3日間行程で、初日は神奈川県川崎市の「子ども夢パーク」、2日目は静岡県袋井市の「学校給食センター関連」、最終3日目は愛知県岡崎市の「学校フリースクール」をテーマに視察を進めています。
 
早速、昨日の「川崎市子ども夢パーク」は、「子どもたち一人ひとりが大事にされなければならない。」それを実現するために、川崎の子どもと大人が一緒に考え、多くの話し合い(2年間で200回)をして2003年7月に制定された「川崎市子どもの権利に関する条例」をもとにつくった施設であり、川崎市が決めた「子どもについての約束を実現する場」。
 
ありのままの自分でいられる場
多様に育ち、学ぶ子どもの居場所
自分の責任で自由に遊ぶ場
つくりつづけていく場
子どもたちが動かしていける場
 
をコンセプトに、子どもたちの「やってみたい」を大切にした「プレーパーク」に加え、主に学校の中に居場所が見出せない子どもや若者たちが、学校の外で多様に育ち、学ぶ場「フリースペースえん」を運営するほか、「川崎市子ども会議」の事務所も併設する施設となっています。
 

【プレーパークの一部はこのような感じでした。どろんこ遊びも何もかも自由。】
 
視察ではパーク内をご案内いただくとともに、当施設の総合アドバイザーでもある認定NPO法人フリースペースたまりば 理事長の西野博之様より、先の条例制定からパークの設置、運営に懸ける考えや思いをじっくりご説明をいただき、知見を通り越し、「意識改革」と言って過言でないお話を聞くことができました。
 
箇条書きとなりますが、拝聴したエッセンスを記載いたします。
 
<子ども夢パークについて>
◉子ども夢パークは、映画「ゆめぱのじかん」、NHK「ドキュメント72時間 “どろんこパーク 雨を走るこどもたち”」などでも取り上げられ、大きな反響を得ている。
◉条例制定に向けては、「権利の相互尊重」に辿り着くまでに時間が掛かったが、人間として大切な「子どもの権利」を守ることにつなげることができた。
◉「子どもはだんだんと人間になるのではなく、すでに人間である」(コルチャック先生の言葉)。生まれながらに一人の人間であり、権利の主体であることを認識しないといけない↔︎大人よりも劣った存在として差別されない。
◉条例第29条に「子どもの居場所」があり、夢パークの設立根拠となっている。
◉元々、工場跡地を市が80億円で購入し、図書館建設を考えていたところ、バブルが弾け10年間塩漬け状態にあったところ、ちょうどパークの設置場所に選定された(指定管理料8,900万円で運営)。
◉夢パークは毎日9時〜21時まで開館。当時全国であった中高生による少年犯罪も背景に、遅い時間までの「居場所づくり」を目的としている。
◉「ケガと弁当は自分もち」が合言葉であり、自分の責任で自由に遊ぶこと、「やってみたいこと」に挑戦できる場の提供を考えとしている。
◉日本の子どもの特徴として「自己肯定感の低さ」がある。ユニセフの子ども幸福度で日本は38国中37位。
◉子どもが地域の中でタダで遊べる場所が必要。なぜなら「遊びは子どもの主食」だから。
◉野村総研とオックスフォード大学の共同研究では、今後、日本の仕事の49%はAIが取って変わる時代に入るとあり、これからの子どもたちに求められる力は「非認知能力」ではないかと考える。
◉「非認知能力」とは、「人間として生きていく力を育む」ことであり、それは「遊び」を通じてでしか得られない。
◉夢パークの視察は年間200件。過去には文部科学大臣も来られ、「これが将来の教育の姿だ」と話されたことがある。
◉2024年に夢パークが「グッドデザイン賞」を受賞。理由は、「子どもの権利を尊重し、禁止事項を極力排除し、子どもが自己責任でチャレンジできる場を長年にわたって提供してきたこと」。
 

【パーク内に綴られた「大人への」メッセージ。】
 
<不登校について>
◉学校に行か(け)ない理由は、自分でも分からない。
◉不登校児童生徒を「学校嫌いな子」と決めつけないでほしい。
◉いじめのピークは、小1〜小3と言われており、学校に入ってすぐに体験、あるいはそうしたシーンを見た子どもたちを考えると、不登校は減る訳がない。
◉不登校は35万人時代となっており、学校教育の「制度疲労」が限界に来ていると言える。
◉平成28年12月には、「教育機会確保法」が成立し、学校以外の場で学び、育つ選択肢を増やすことが定められた(将来的な自立を目指す)が、敦賀市では何ができているか?
◉文部科学省フリースクール等に関する検討会議では、ICTを使った学習の奨励も進んでおり、出席認定は1万件を突破している。
◉「大人の良かれは、子どもの迷惑」でもあり、大事なのは「何もしないこと」の保証。
◉子どもは、大人の「支援臭」から逃げていく。「良くしよう」「良くしてあげよう」という大人のアドバイスが、子どものやる気を失わせるため、自分の「やりたい」を支援する環境が必要。
◉「こんなもんで大丈夫」が充電されると、ほとんどの子どもたちが高校進学していく(子ども夢パークの実際がそう)。
◉大人たちの不安が子どもたちを追い詰める。周囲が親を支える取組みが必要。
◉子どもたちの「生まれてきて良かった」、「生きてるだけですごいんだ」の気持ちを大切にしている。
◉大人(親)は「生まれてきてくれて、ありがとう」、「あなたがいてくれて幸せだよ」の気持ちを届けよう。
 
以上、ランダムに書き綴ったため分かりづらかったかもしれませんが、子どもとまっすぐに向き合い続けてきた西野理事長の話しに、正直胸を打たれるとともに、議員である前に、一人の人間として気付かされることが大変多くありました。
 
「学んだことを持ち帰って敦賀市に生かします」と言いたいところですが、これを生かすためには、何をおいても大人がマインドチェンジすることが必要不可欠であり、西野理事長や川崎市が年月を掛けて積み上げてきたことを考えると、軽々しく言うべきではないとも考えるところ。
 
帰りには、西野理事長の著書も購入しましたので、昨日学んだことを今一度、自分の中でも整理をし、思考を重ねたいと思います。
 

【ご自身の貴重なご経験を含めお話しいただいた西野理事長。誠にありがとうございました。】
 
視察2日目の今日は静岡県袋井市へ。
 
引き続き、しっかり学んでまいります。

「災害に備えるまちづくり」は「訓練」から

ブログ 防犯/防災

昨日は、先般ご紹介した令和6年度 敦賀市総合防災訓練ならびに我が町内の防災訓練。
 
まず、町内の訓練では、副区長の立場から防災対策本部の広報担当部長として参加。
 
訓練想定の9時地震発生を受け、「無事」であることを示す「黄色いリボン」を玄関にくくり付けた後、会館に集合。
 
対策本部長である区長の指示に従い、防災部を始め、各班ともに行動を開始するとともに、住民の皆さんはそれぞれ決められた避難場所に集った後、原子力機構グラウンドまでまとまって避難しました。
 
9時40分頃には、全10班が避難を完了しましたが、役員を含め、グラウンドへの避難訓練参加者は「171名」、先ほどの黄色リボンで安否確認に参加されたのは「363戸」。
 

【グラウンドに避難した訓練参加者の皆さん】
 
安否確認には世帯数(499戸)ベースで「74%」と多くの皆さんに参加いただきました。
 

【黄色いリボンは「家族無事」の印】
 
集合した後は、本部長からのご挨拶に続き、敦賀美方消防組合による消火器使用訓練および心配蘇生訓練が行われ、より一層の災害に対する意識、知識向上につながったと感じた次第です。
 

【小さなお子さんも参加した消火器訓練】
 
町内の訓練がほぼ整ったところで中座をし、市の総合防災訓練へ。
 
こちらは敦賀湾を震源とする震度5強を観測する地震発生を受け、8時20分に「警戒レベル4」の避難指示が、東郷地区、中郷地区、愛発地区に発令された想定で訓練を実施。
 
対象地域の住民の皆さんは、開設された各避難所(公民館)へ避難されるとともに、10時からは、体験・展示ブース訓練(東郷公民館)が行われました。
 
会場への到着は10時40分頃になったため、ドローン輸送訓練や給水管作業訓練など、一部終了していたものもありましたが、電力復旧作業関係展示(北陸電力)、防災用品・備蓄物品展示、ペット同行避難啓発展示、炊き出し訓練、給水訓練など、それぞれのブースでお話を伺いしながら会場を回った次第。
 
その中で、災害用伝言サービス「171」の存在は知っていたものの、NTT西日本さんのコーナーでは、実際に安否の録音登録・再生を体験。
 
写真は体験用の機材ですが、災害時に家族が「171」にダイヤルし、行方が分からない私の携帯電話あるいは固定電話の番号をプッシュすれば、録音が再生されるものであり、ぜひ皆様にも覚えておいていただければと思った次第です。
 

【災害用伝言サービス「171」の体験機】
 
また、福井県に1台しかないという「起震車」による地震体験コーナーでは、「南海トラフ地震」モードでの揺れを体験。
 
何かにしがみついていないと座ってもいられないどころか、実際にこの揺れに襲われたらと考えたら恐怖を感じたところであり、こうして「震度○」は「これぐらいの揺れ」と認識しておくことはやはり重要なことと、貴重な経験を得たところです。
 

【起震車は、例えば「東日本大震災モード」など、過去に発生した大地震の揺れを再現できるとのこと。】
 
訓練の最後には閉会式があり、その中で市災害対策本部長である米澤市長、力野福井県議会議員、野路嶺南振興局危機管理幹が揃って仰っていたのは、県内の他地域に比べ、敦賀市の訓練は地域の参加者が多いということ。
 
先の、ひばりケ丘町での訓練然り、災害対策で言われる「自助、共助、公助」に加え、大事なのは「近助」。
 
いざという時に、身近な者同士が助け合える環境があるとないとでは、最悪の場合、生死を分けることになるかもしれないとの思いのもと、議員の立場より前に地域の一員として、地域の防災力を高め、今後も「災害に備えるまちづくり」に努めてまいります。
 
結びに、訓練に参加された皆様、準備や運営にご協力いただいた関係者の方々、大変お疲れ様でした。

問題なのは「ジェンダーギャップ」ではなく「ジェネレーションギャップ」

ブログ 働く仲間とともに

昨日午前中は福井市へ。
 
連合福井男女共同参画社会推進委員会主催の「地域協議会委員 合同会議」に推薦議員として参加してまいりました。
 
福井、丹南、嶺南の3地域協議会から集う同委員会では、2024〜2025年度の運動方針に、
 
 1.労働組合における男女平等参画の取り組み
 2.職場・社会におけるジェンダー平等の推進
 3.行政の意思決定機関への女性参画の促進と意見反映
 
を掲げており、昨日行うグループワークのテーマが「女性の政治参画向上に向けて」ということで、推薦議員団にもお声掛けいただいたもの。
 
参加した推薦議員は、県議1名、私を含む市議3名の計4名でしたが、ちょうど4グループに分けたテーブルに各1名が座る形で進められました。
 
女性の社会参画率を高め、性別により偏った社会構造からの変革を方針とする中、日本全体では、世界経済フォーラム(WEF)が6月に発表した「※ジェンダーギャップ指数」は、146カ国中118位で、先進国では最低となっていることに加え、特に経済と政治分野における女性参画率が低い(他国と比べ、女性管理職や女性議員が少ない)状況が続いています。
 
※ジェンダーギャップ指数とは?
グローバル・ジェンダー・ギャップ指数(The Global Gender Gap Index:GGGI)とは、 世界経済フォーラムが毎年発表している世界におけるジェンダー格差指数。各国を対象に、政治・経済・教育・健康の4部門について、男女の間にどれだけの格差が存在しているかを分析してスコア化し、そのスコアを元に各国のジェンダー平等達成度の順位をつける。(指数は女性/男性で算出、平等なら1、最低は 0)
 
以下のレポート、推移を見ていただくと、顕著な傾向がお分かりいただけるかと存じます。
 

 ※Economyは経済、Politicsは政治
【出典:The Global Gender Gap Report 2024 p.219】
 

【各年のThe Global Gender Gap Reportを基に作成した日本の順位推移(朝日新聞記事を引用)】
 
なお、政治分野において、国会議員の男女比は11.5%で、経年変化は極めてわずかであるとしています。
 
このような背景のもと、グループワークではさらに「実生活と政治の関わりについて」をテーマに置き、女性から政治はどのように見えるのか、実生活の困りごとと政治の関わりなどについて話し合いました。
 
1テーブル5名程度ということで、話し始めるとすぐに打ち解け、私の方からは自身の議員経験で感じたことをお話しするとともに、敦賀市議会の女性比率や、例えば公人であっても、昨今のプライバシー保護の観点から特に女性への配慮が必要と、公開している住所や電話番号などの表記を選択制にしたことなどをご紹介しました。
 
なお、この際、私自身は最初「公人はすべてオープンにすべき」の「べき論」を主張していたことを反省している旨、率直な気持ちもお伝えした次第です。
 
お話しの中では、周りの女性を見ていても政治への関心は低い、(各級議員ともに)選挙の時の公約がどれだけ果たされているのか疑問、政策が抽象的で身近に感じにくい、子育て政策に地域間格差があるなどの声があったほか、関心の低さは、議員の活動が見えていないことにあるのではとのご指摘もいただいた次第。
 
また、最後にグループごとに発表した中で、「今の子ども達は、小中高大と(性別に関し)フラットに進んでくる中で、社会に出た途端ギャップを感じるという状況になっている。問題にすべきは、ジェンダーギャップではなくジェネレーションギャップなのではないか。」との意見に仰る通りかもと感じたところです。
 
自身も労組役員時代に男女平等参画の活動をしていた際の経験から、ある若い人から「今は学校でも男女の区別や順位を競うことがないし、結婚しても男性が家事・育児をやるのは当たり前。なので、世代が変われば自然にジェンダーギャップは無くなるのではないか。」と言われたことを思い出しました。
 
とはいえ、自然に変わるの待っていては受動的ですので、ジェンダーギャップを埋めるには特に、私たち世代以上の「オジさん」が女性の立場や視線をより理解し、意識を変えることに尽きると思いますので、以降「能動的に」思考し、行動していきたいと思います。
 
こうして直接、女性役員の皆さんとお話し、ジェンダーのこと以外でも様々知ることができ、非常に有意義な時間となりました。
 
結びに、同じグループになった妊婦さんの組合役員さん。
 
出産を控えた立場から貴重なお話しを聞かせていただきありがとうございました。
 
何をおいても母子ともに健康で、元気な赤ちゃんを出産されることを心より願っています。
 
ではでは、本日のブログはこれまでに。

「令和6年度 敦賀市総合防災訓練」を開催します

ブログ 防犯/防災

ここ最近は、抜けるような青空が広がる日が続いており、徐々に紅葉する樹々からも秋の深まりを感じるところです。
 
こうして「秋晴れ」の下で暮らしていると、自然災害とは無縁のように思うところ、現在、鹿児島県の奄美地方や沖縄本島北部で線状降水帯が発生しており、午前2時40分には、鹿児島県与論町に大雨特別警報が出されています。
 
警戒レベルは5段階のうち最も高い「5」で、土砂崩れなど何らかの災害が既に発生している可能性が高いとあります。
 
雨量に関しては、9日5時までにアメダス与論島の24時間雨量は573.5mmに達しており、これは昭和53年(1978)からの観測史上1位の記録的な大雨で、これまでに経験したことのない危険な状況に、気象庁は「直ちに身の安全の確保を」と呼び掛けています。
 
なお、11月に大雨特別警報が出たのは初めて。
 
「この時期は大丈夫」とタカを括ってはいけないと、気付かされる次第です。
 
さて、ちょうど今日明日の両日は「令和6年度 敦賀市総合防災訓練」が開催される訳ですが、上記の観点から言えば、この時期に実施することに意味があると考えるところ。
 
本訓練は、敦賀市ならびに敦賀美方消防組合主催で、「敦賀市地域防災計画に基づき、敦賀市、防災関係機関及び地域住民による総合防災訓練を実施し、初動対応の確立、防災体制の確認等を行うとともに、地域防災力の向上を図ることを目的」とし実施され、市内10地区を4ブロックに分け、毎回、1ブロックを対象に各年で実施しています。
 
今年度は、中郷地区・東郷地区・愛発地区のブロックを対象に訓練実施(これで3巡目が終了するとのこと)。
 
訓練の詳細は、以下のチラシをご覧いただきたく存じますが、大きく分けますと、本日9日は「避難所設営訓練」、10日は「実働訓練」と「展示ブース」設置となります。
 

【敦賀市ホームページに掲載の案内チラシ】
 
市ホームページでは、市民の皆様に以下のように呼び掛けています。
 
災害による被害を最小限にとどめ、その拡大を防止するためには、日ごろからの防災意識を高めることが重要です。「見て、体験する」総合防災訓練を通して、いざという時に備えましょう。
体験・展示ブースは、どなたでも参加・見学できますので、ぜひご参加ください。

 
発災想定は、10日午前8時00分に福井県嶺南地方(敦賀湾)を震源地とする、震度5強の地震。
 
明日は、私の住む町内でも同じく防災訓練が開催されますが、これと合わせて参加をし、「災害に備えるまちづくり」に向け欠かせない、地域防災力の向上に努めていきたいと思います。

「リサイクル燃料備蓄センター」が事業を開始

ブログ 原子力

先般、13年ぶりの原子炉起動を喜んだ東北電力の女川原子力発電所2号機。
 
既に報道にあるよう、11月3日、発電機試験併入中に、原子炉内の中性子を計測する検出器の校正用機器を原子炉内に入れる作業を行っていたところ、途中で動かなくなる事象が発生したため原子炉を停止。
 
東北電力はホームページで、「再稼働(発電再開)に向けた今回確認された事象の原因調査を行い、引き続き、安全確保を最優先に、一つひとつのプロセスをしっかりと対応してまいります。」とコメントしており、ここは焦ることなく、万難を備えて工程を進めていただきたいと思います。
 
一方、原子力に関しては、東京電力福島第一原子力発電所2号機で本年9月から行われてきた「※燃料デブリ」の試験的な取り出し作業が完了。
 
※燃料デブリとは
事故当時、1〜3号機は稼働中だったため炉心に燃料が格納されていました。事故発生後、非常用電源が失われたことで炉心を冷やすことができなくなり、この燃料が過熱、燃料等が溶融しました。その溶融した燃料等が冷えて固まったものを燃料デブリと言います。
 
東京電力によると、7日午前11時40分にデブリを格納した容器を専用のコンテナに移し、試験的取り出しが完了したとあり、廃炉の完了に向けては、総量で880トンにのぼると推定されるデブリの取り出しが最大の難関とされ、今回取り出したのは数グラムとみられるものの、今後の分析で得られるデータは、本格的な取り出し工法の検討に欠かせないとしていて、事故から13年半を経て廃炉は新たな段階に入ることになります。
 
ご参考まで、詳しくは東京電力HP「燃料デブリ取り出し状況」のページをご覧ください。
 
 →「燃料デブリ取り出し状況」のページはこちら
 
また、原子燃料サイクルの観点から大きなニュースとして、原子力規制委員会は11月6日、リサイクル燃料貯蔵(RFS)が青森県むつ市に立地する「リサイクル燃料備蓄センター」(むつ中間貯蔵施設)について、使用前確認証を交付。
 
同施設が、実質的な「事業開始」を迎えました。

【事業開始を迎えた「リサイクル燃料備蓄センター」のイメージ図(RFSホームページより引用)】
 
むつ中間貯蔵施設は、原子力発電に伴い発生する使用済み燃料(東京電力、日本原子力発電)を再処理するまで、最長50年間(順次設置する施設ごと、キャスクごと)、安全に貯蔵・管理するものですが、1990年代後半、使用済み燃料貯蔵対策について、官邸レベルで議論されるようになり、サイト外貯蔵に関しては「2010年までに確実に操業開始できるよう、国および電力事業者は直ちに所要の制度整備、立地点の確保等に取り組むことが必要」との報告書がまとめられました。
 
こうした背景も踏まえ、2000年には、むつ市より東京電力に対して立地に係る技術調査の依頼があり構想が具体化し、その後、施設の建設工事が進捗するも、2011年の東日本大震災発生により停滞。
 
原子力規制委員会の審査を経て2020年11月に許可、RFS他事業者は2024年8月、青森県およびむつ市との間で、むつ中間貯蔵施設に係る安全協定を締結するなど、一つひとつステップを進め、ようやく「事業開始」となったものであり、地域の皆様のご理解とご協力に感謝申し上げるとともに、これまでの関係者の方々のご尽力に敬意を表する次第です。
 
RFSでは、「安全最優先で事業に取り組むとともに、事業の透明性を高め、地域に根差した事業運営に努めていく」とコメントしていますが、使用済み燃料を再処理し、回収されるプルトニウムをMOX燃料として加工した上で、有効利用する原子燃料サイクルの推進は、わが国のエネルギー政策の基本的な方針。
 
先の衆院選福井選挙区で複数の候補者が述べていた「使用済み燃料の問題が解決していないのに、リプレースなど無責任(進めるべきではない)」との考えに対しては、今の日本のエネルギー事情を考えれば、バックエンドのことを盾に、新たな電源開発をしないことこそが「無責任」と思うところ。
 
「原子力か再エネか」の不毛な議論ではなく、「原子力も再エネも」活用すべきとの考えと同様、原子力関連事業を進めるには相当な期間を要することを踏まえた上で、最終処分地選定を含む「バックエンド側も」、リプレースや新増設など「フロントエンド側も」同時並行的に進めることこそが、とりわけ国の舵取りをする政治の責任であると、RFSの「事業開始」にあたり、改めて思うところです。

トランプ氏の歴史的勝利に世界、そして日本は

ブログ 政治

今日から二十四節気の「立冬」に入ります。
 
秋分と冬至のちょうど中間にあたる「立冬」は文字通り、冬の始まりを表しますが、これに合わせたかのよう、実際の天気も今日から明日をピークに寒気が流れ込むとのこと。
 
西日本でも10℃を下回るところが増え、各地で今シーズン一番の冷え込みとなる予想とのことですので、急な気温変化で体調を崩さないよう、皆様お気を付けください。
 
さて、昨日は西浦での辻立ちから始まり、午後は所属する文教厚生常任委員会にて、「市立敦賀病院の中期経営計画の進捗状況」について所管事務調査を行い、令和10年度の黒字化に向けた取組みや現段階での経営状況の確認を行なったところですが、何と言っても話題の一番は世界が注目の「米大統領選挙」。
 
結果は既にご承知の通り、共和党候補のドナルド・トランプ前大統領が民主党候補のカマラ・ハリス副大統領を破り、歴史的勝利。
 
一度退任した後に2期目に就任するのは、19世紀のグロバー・クリーブランド大統領以来132年ぶり2人目となるとのことで、過半数以上が確定した後、トランプ氏は「第47代大統領に選ばれたことは栄誉だ」と勝利宣言しました。
 

【コンベンションセンターに登場したトランプ氏(CNN.co.jpより引用)】
 
なお、今朝(日本時間)の開票集計を見ますと、大統領選挙人計538人のうち、トランプ氏が291人、ハリス氏が223人の選挙人を確保。
 
また、大統領選と合わせて行われた連邦議会の上下両院選では、共和党が上院の多数派を4年ぶりに奪還。
 
下院は両党が過半数の議席獲得を巡って争っているとあります(今朝時点)。
 
仮に下院でも共和党が過半数を獲得すれば、ホワイトハウス(大統領)と上下両院の多数派を共和党が独占することとなり、同党の赤色のシンボルカラーにちなんで「トリプルレッド」の可能性も出てきており、こうなると、トランプ政権の法案は基本的に成立することになることはもとより、議会による大統領への弾劾裁判も回避できる状態となります。
 
少数派与党となった日本とは逆で、圧倒的な「数の力」を背景に、大統領の思うがまま政策が進められることに留意しておかねばなりません。
 
とりわけ、世界のパワーバランスの観点で言えば、ロシアのウクライナ侵略を巡り、ウクライナへの支援から撤退する可能性のあるトランプ氏が勝利したことを欧州は警戒し、逆にロシアは歓迎しているとみられるとあります。
 
トランプ勝利を受け、中国は「不確実性と予見不可能性が増す」と警戒
 
混沌とする中東に目を移すと、4年間の大統領任期中、イスラエル寄りの政策を貫いたトランプ氏の復帰に、ネタニヤフ首相は祝意を示した一方、「最大限の圧力」政策が復活する公算が大きいイランは、警戒を強めています。
 
お隣韓国はと言えば、トランプ氏が在任中、「裕福な国」である韓国が米国の軍事力に「ただ乗りしている」と主張し、在韓米軍の駐留経費を巡り、韓国に大幅な負担増を迫った経緯を踏まえ、トランプ氏の返り咲きに備えて、2026年以降の駐留経費負担を決める協定に今月4日、駆け込むように署名を済ませています。
 
こうして、良くも悪くも世界各国に極めて大きな影響を与える、米大統領の巨大で強大な力を感じざるを得ないところですが、翻って日本。
 
前トランプ政権時代は、安倍晋三元首相が「蜜月」関係を築きましたが、石破首相も「今後、トランプ次期大統領と連携を密にしながら、日米同盟、日米関係をさらなる高みに引き上げていきたい。今後、トランプ氏と接点を早急に持つべく努力してまいりたい」と語っています。
 
このままいけば、おそらく首班指名されるであろう石破首相におかれては、「強く、折れない」トランプに対し、またもや「変節」では今度こそ大きく国益を失しますので、その言葉にブレなき舵取りをお願いする次第です。

「地域における少子化問題」と「ハラスメント」について学ぶ

ブログ 敦賀市議会

3連休明けの昨日は週頭街宣。
 
衆院選の後、国民民主党がメディアで取り上げられる機会が増えているからか、会釈やお手振りなどでリアクションいただける方も増えているような。
 
街頭では、同党の政策を中心にお話ししましたが、こうした活動の目的の一番は政治に関心を持っていただくこと。
 
反応の多い少ないに関わらず、停車の間に何かワンフレーズでも耳に残るよう、演説も工夫のうえ続けていく所存です。
 

【自転車で通過する高校生との挨拶も爽やかでした。】
 
さて、敦賀市議会では昨日午後、2件の研修会を開催。
 
まず、年に一度開催している議会議員研修では、事前にテーマ選定をした上で、今年度は「地域における少子化問題にどう向き合うか」と題し、立命館大学産業社会学部教授の筒井淳也氏より講義いただきました。
 
(以下、ポイントのみ記載)
◉福井県の出生率は、全国的に見ると「踏みとどまっている」状態。
◉福井県内自治体の年齢別人口性比(女性に対して男性がどれだけいるか)では、敦賀市は性比(20代後半)1.24。同程度規模の自治体に比べると男性余り、女性不足の傾向にある。ちなみに、高浜町2.23、美浜町1.57、おおい町1.81で「男余り」が顕著。原子力発電所の影響と推定。
◉地域からの女性流出による男性余りが出生率低下圧力になる←女性にいかに残ってもらえるか。
◉普段の出会いが結婚につながるとし「通婚圏」の認識を持つことが大事。
◉結婚→出産が成立するには、「通婚圏」での男女のバランスが必要。若者がどこに住むかは、仕事のありなしで決まる。
◉「少子化」の課題は地域によりさまざま。都心部、都市郊外部、非都市部に分類して考えることが肝要。
◉非都市部では、例えば駅前にマンション建設したところは「踏みとどまって」いる。共働きのしやすさからと言える。
◉80年代までの「ニュータウン型」開発は衰退しており、生活(居住)コストを抑えた駅前型開発の余地があるかが鍵。
◉非都市部への仕事の分散は、現状では製造業(発電所も)が強く、将来の可能性としてはリモートワーク(非都市部に住みながら都市部企業に雇用される)に依存(一発逆転としては、これぐらいしかない)。
◉出生の条件の「前提」は「仕事」があることとした上で、以下の順序付けで考えることが肝要。
 1.地域(通勤圏内)に安定した仕事・雇用があること
 2.住居・生活コストが高くないこと
 3.その上で、子育てがしやすいこと
◉よく言われる自治体間移住(自治体間競争)は、出生率を上げることはあるが、下げることは考えにくいので問題になることはない。
◉バランスの取れた少子化対策は、①未婚者を視野に入れた政策、②子育て世帯への支援、③少子化を前提とした政策をサークルとして結びつけること。※①②③に序列はなし
◉政治家は口に出さないが、少子化問題は「撤退戦」。縮小していくことを前提に「撤退戦」をどう展開していくかが重要。
 
また、続いて開催した「ハラスメント研修」は、先の9月定例会での「敦賀市議会ハラスメント防止条例」審議結果を踏まえ、議会運営委員会において今後の取組みを協議する中で、まずは議員各位の認識共有、意識の高揚を図るべく研修を行うことを決定。
 
その上で、昨日は、以下2件の動画視聴により研修を実施しました。
 
1.「政治分野におけるハラスメントの防止について」
 政治分野におけるハラスメント防止研修機材(内閣府男女平等参画局作成)
2.「議員のためのハラスメント防止研修」
 全国市議会議長会作成(講師:一般社団法人 公務員研修協会 代表理事 高嶋直人氏)
 
とりわけ、2.の研修では、議員は「全体の奉仕者」(憲法15条の公務員には議員も含まれる)、公務員(地方議会議員は特別職の地方公務員)としての自覚、厳しい議論と人格否定は違うなど、「議員に求められるコンプライアンス」の話に始まり、次の項目についてご教授いただきました。
 
◉公務員に高い倫理観が求められる理由
◉役所と民間の違い
◉コンプライアンスとは
◉公務員に特化したハラスメント防止対策が必要
◉パワハラの基本知識
◉公務員のパワハラの定義と該当する言動(事例1〜7)
◉見落としがちなパワハラ発生要因
◉パワハラをする人のタイプと対応策
◉ジェンダーハラスメントとは
◉全国地方議会の動き
 
詳細は割愛しますが、何より先に立つのは、先に述べた「全体の奉仕者」としての「高い倫理観」を持つこと。
 
このことは「敦賀市議会政治倫理条例」にも謳われていることでもあり、今さら言うまでもないことですが、改めてこのことを肝に銘じるとともに、ご教授いただいたことを常に念頭に置き、自身の行動・言動を徹底する所存です。
 
こうして昨日は、私にとっても、おそらく議員各位にとっても、大変内容の濃い、有意義かつ今後の糧となる研修となりました。
 
“知って行なわざれば知らぬことと同じなり”
 
「知行合一」の教えに従い、得た知識、学びを生かしていかねばなりません。

自民党よ、安全保障分野で国民民主党に負けないで欲しい

ブログ 政治

昨日午前中は、母体の原電労組敦賀分会のソフトボール大会。
 
気持ち良い秋晴れの下、組合員だけでなく管理職も混じってのチーム編成で和気あいあい、好プレー、珍プレーに笑いありと楽しい時間を過ごしました。
 
私もあるチームに入れていただきプレーしましたが、こうした場で生まれるコミュニケーションこそ組合行事の意味と改めて実感した次第です。
 
さて、3連休が明け、今日からさらに国政関連の動きが活発化してくると思いますが、衆院選以降に注目を集めているのは国民民主党が主張する「103万円の壁引上げ」による所得税減税。
 
以前にこのブログでもご紹介しているため内容は割愛しますが、自民党は協議に乗ると言いつつ、加藤財務大臣は「財源の問題が…」と”やらない理由”をほのめかしているこの政策。
 
国民民主党をはじめ、有識者からは、過去最大の歳入によって生じている余剰金12兆円や、もっともこの政策は、経済の上向きによる税収増を狙ってものであり、7.5兆円程度であれば、名目で5%成長すれば自然増収で手が届く範囲であるため、それほど心配する必要はないと説明されています。
 
また、「政治とカネ」の問題に関しては、国民民主党の玉木雄一郎代表が3日、政治資金規正法の再改正は、12月初旬にも召集見込みの臨時国会で行うべきだとの認識を示しました。
 
政策活動費の廃止や、調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の使途公開と残金返納を挙げ、「臨時国会で再改正し、年内に速やかに実現すべきだ」と述べた上で、「政治とカネの問題に決着をつけろということだ。検討している時間も余地も残されていない。自公は結論を出すことを求められている」と強調しています。
 
この衆院選も各党が「政治改革」を謳って戦った訳ですから、「待ったなし」でスピード感をもって実行することこそ「政治の信頼回復」につながるため、玉木代表の言うとおり、「決着」をつけていただきたいものです。
 
一方、国の根幹に関わる外交安全保障政策に関しては、サイバー攻撃に先手を打って被害を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」(いわゆるアクティブサイバーディフェンス)に関し、年内の関連法案提出が見送られる方向となったと政府関係者が3日明らかにしました。
 
政府は有識者会議を設置し、制度設計を進めてきたものの、岸田文雄前首相の退陣で議論が停滞。
 
交代した石破茂首相は衆院選の与党過半数割れを受けて苦しい政権運営を余儀なくされており、経済対策を巡る与野党協議に力を入れざるを得ない状況に陥っているとありますが、本年4月24日には議員立法「※サイバー安全保障法案」(サイバー安全保障態勢の整備の推進に関する法律案)を参議院に提出し、衆院選でも公約に掲げていた国民民主党としては、「防衛力を強化を言うなら真っ先に整備させるべき法案だ。協力するから成立させようではないか。石破内閣はやるべきことをやるべきだ。」との見解を示しています。
 
※国民民主党が提出した「サイバー安全保障法案」の概要は以下の通り。
 近年、国内外において国家の関与が疑われるサイバー攻撃の脅威が増大している。本法案はサイバー安全保障態勢の整備に関し、基本理念・国の責務・施策の基本事項を定め、サイバー安全保障態勢の整備を総合的かつ集中的に推進するもの。
 

【先の衆院選における国民民主党公約(概要版抜粋)】
 
そしてまた玉木代表はXで、「自民党よ、安全保障分野で国民民主党に負けないで欲しい。」とポスト。
 
経済政策、政治とカネ、安全保障と、上記に挙げた3つの例をご覧になって、皆さんはどう思われるでしょうか。
 
政治がこれ以上、先送り、やらない理由ばかりでは、国家が停滞するのみであります。
 
各政党とは等距離であくまでも政策ごとに連携、連立入りも部分連合もしない、大臣ポストもいらない、手柄は他党に取られてもいい。
 
とにかく「政策でこの国を動かす」ことこそが、国民の皆さんの豊かな暮らしと安全を守ることになると愚直に進む国民民主党に、今後も注視いただけますようお願いいたします。

心をつなぐ 世代をつなぐ 文化のちから 〜第64回敦賀市文化祭〜

ブログ 敦賀の歴史・文化

秋晴れに恵まれた「文化の日」。
 
国民の祝日に関する法律では、「自由と平和を愛し、文化をすすめる」とあります。
 
ここまで大それた考えにまで及びませんでしたが、昨日は10月27日から開催されている「市民文化祭」(敦賀市文化協会・敦賀市教育委員会主催)に行ってまいりました。
 

【メイン会場のプラザ萬象】
 
足を運んだプラザ萬象 大ホールでは、ちょうど花展・呈茶が催されており、生花を鑑賞しつつ、お茶を一杯頂戴した次第です。
 

【お饅頭とお茶に「ほっと」癒されました】
 
また、多目的室(市民ギャラリー)で併設開催の、敦賀気比高校OBOGアート展「けひのわ」も鑑賞。
 
同校美術専攻科卒業生は、学んだ技術をベースにプロとして活躍されている方、趣味として続けられている方様々なれど、それぞれの道で磨き続けているアートはどれも力作揃いで、素人の私から見ても訴えるものがありました。
 
なお、「けひのわ」は残念ながら昨日で終わってしまいましたが、市民文化祭については、絵画・書道・写真・俳句短歌・手芸そして文化祭ポスター原画展が11月7日から展示となります。
 
敦賀市文化協会におかれましては、「心をつなぐ 世代をつなぐ 文化のちから」の基に伝統文化の継承と発展に取り組むことはもとより、新しい流れにも目を向けながら、文化でつながる親しみのある町へ会員一同取り組んでおられます。
 
文化祭は、11月10日(日)が最終日となりますので、ぜひ足を運んでいただければと存じます。
 
その後は、敦賀市立博物館へ。
 
本来、こちらの企画展で予習をした上で、昨日ご紹介した2日の記念講演会を聞くべきでしたが、「日本横断!運河計画」の展示をじっくり鑑賞してきました。
 

【敦賀市立博物館にて開催の企画展「日本横断!運河計画」】
 
講演会にあった「加賀藩」に関しては、徳川幕府から明治新政府に転換するちょっと前の、大きな社会の変革期に政治的駆け引きによって、またもや本気で運河計画が検討されはじめ、西廻り航路(大阪廻り)が危うくなり、再び荷物を上方へ運ぶ中継点として注目されるようになった敦賀は、京都への糧道として、そして北前船の寄港地としても重要な役割を果たし、その商圏は日本全国に及んだこと。
 
それは「交通の要衝・敦賀」である以上、仕方のないことであり、江戸初期以来の、港の賑わいが戻りはじめた敦賀に、高度な技術を持った測量集団が、加賀藩の命を受けて敦賀にやってきたとのエピローグのもと、数々の展示がされていました。
 
また、愛発の「疋田舟川」については、部分的ではあるものの、平安時代からいえば数百年を経て初めて実現した運河計画として文化13年(1816)に完成。
 
その後、天保5年(1834)に廃止され、再び安政4年(1857)に使われるようになりますが、彦根藩主・井伊直弼が領内の宿駅が衰退することや大津にある米の価格が下がるなどを理由に執拗に反対していたことも紹介されており、当時の政情を思い浮かべた次第です。
 
これ以上の紹介は「ネタバレ」となるため控えますが、驚きと学び満載の企画展となっていますので、こちらもぜひご覧いただきたく存じます。
 
改めて、こうして継承される「歴史と文化」は、先人たちが生きた生業そのもの。
 
今もこれからも大切にしていきたいと思います。

ー敦賀から琵琶湖を結ぶー 加賀藩の大運河計画

ブログ 敦賀の歴史・文化

夕方まで強い雨が降り続いた昨日。
 
私の方は、元々予定をしていました敦賀市立博物館主催の記念講演会「ー敦賀から琵琶湖を結ぶー 加賀藩の大運河計画」を拝聴してまいりました。
 
この講演会は、現在、市立博物館で開催している特別展「日本横断!運河計画」の関連イベントのひとつ。
 
自身が所属する気比史学会も協力開催ということで、会場設営や受付などのお手伝いも兼ねて参加した次第です。
 

【特別展「日本横断!運河計画」のチラシ(裏面)】
 
足元の悪い中にも関わらず、会場の市立図書館3階 研修室には熱心な参加者にお集まりいただき、一般財団法人高樹会 代表理事の島崎毅氏よりご講義いただきました。
 

【会場の様子】
 
まず、敦賀ー琵琶湖運河計画を語る上で欠かせないのが「高樹文庫」。
 
江戸時代後期、射水郡高木村(現在の富山県射水市)に生まれた和算家・測量家の石黒信由(1760~1836)以下4代の和算・西洋数学・測量術・絵図作製・航海術等の学問・技術等に関する史料群12,000点余は、大正9年地元有志により設立された高樹会(こうじゅかい)に移され、平成10年新湊市博物館(現射水市新湊博物館)の建設に伴い同館に寄託されたもの。
 
この史料群は、江戸時代後期の学問・技術の水準の高さを示す資料として学術的価値が高く、昭和59年6月6日には2,051点の資料が国の重要文化財に指定された後、追加指定により、現在は6,390点が国指定重要文化財となっており、先の運河計画を紐解く資料もここにあります。
 
その上で、敦賀と琵琶湖をつなぐ運河計画の歴史は古く、平安時代には平重盛(平清盛の息子)、戦国時代には蜂屋頼隆や大谷吉継、江戸に入ると京都商人や田沼意次(幕府)などが事業者となって計画するも「幻」に終わっている訳ですが、講座のテーマである「加賀藩」が敦賀ー琵琶湖間のみならず、日本海ー京都までの「大運河計画」を策定しようとした時代背景には、以下のようなポイントがあったとのこと。
 
<幕末の加賀藩と国際情勢>
① 下関砲撃事件(1864年)により、機能停止となった西廻り航路
② 押し寄せる「黒船」と急がれる海防
③ 経済的に困窮していた幕府と加賀藩
 
こうした背景から、加賀藩の運河開削計画の第一期工事(敦賀~琵琶湖)として、慶応2年(1866)に幕府へ申請、同年12月に認可。
 
運河開削に向けての現地測量と絵図作製は、入手し得る過去の記録、古地図など様々なデータの収集、慶応3年2月2日からは測量を開始(6つのルート)し、実質1ヶ月足らずで測量(高木村への帰村は4月14日)を終えたとありました。
 
さらに驚くのは測量の精度。
 
上記「越前近江糧道測量絵図」の6つのルートと現在の国土地理院地形図とがほぼ一致しているほか、各集落(旧・村落)高札場における標高データの精度や敦賀〜塩津の直線距離(直径)データは、9,996間(約18.2km)における誤差は極めて小さく、石黒家をはじめとする当時の測量技術の高さを伺い知った次第です。
 
また、平面図のみならず、明治以前には前例のない、高低をわかりやすく表現した断面図「直高図」などをもとに、琵琶湖湖面と同じ高さで塩津から敦賀に向かい、沓掛の北側まで露天掘り、唯一の難所、深坂峠にトンネル(JR深坂トンネルと平行の位置)を掘削し、疋田からは 0.67%の勾配(文化年間の舟川の勾配は0.9%)の運河で、敦賀市街地の笙の川に合流させるなど、具体的な計画までがされました。
 

【敦賀・琵琶湖間運河計画図(射水市新湊博物館『石黒信由関係資料 絵図』より引用)】
 
 →拡大してご覧になりたい方は、こちらのリンクへ
 
一方、琵琶湖から京都をつなぐ、加賀藩の運河開削計画の第二期工事に関しても同様、「京都新規通船見取絵図」をもとに説明があり、ここで示されたルートと明治23年に「琵琶湖第一疏水」として実現した運河のルートがほぼ合致しているともありました。
 
こうして、敦賀ー琵琶湖、琵琶湖ー京都をつなぐ「壮大な計画」の歴史を伺い、結びに先生からは、加賀藩の大運河計画が語るものとして、
 
◉明治以前の加賀藩(石黒一門)の科学技術のレベルとその広がり
 ① 十分な実現の可能性を示唆する精度の高い測量技術
 ② 石黒一門の若き門人たちの実力
◉高樹文庫資料の現代社会における存在意義
 ① 明治以前の科学技術と学問の広がり
 
とありました。
 
加賀藩の測量技術と精度はまさに驚異的であり、幕末の加賀藩の高い水準の学問、科学技術の広がりに敬意を表すること、「幻」に終わったものの、琵琶湖から京都までの距離は、敦賀から琵琶湖までの半分であり、経済効果や物流を考えても京都までつなげなければ意味がないこと。
 
そして最後に、明治維新は西洋化であり、これらに頼らずとも日本の技術は高いものがあったと語る先生からは、日本人としてのプライドなるものを感じた次第です。
 
平安時代から「敦賀と琵琶湖をつなぐ」ことにチャレンジし続けてきたことは、いかに敦賀港が国家にとって重要であることを意味するもの。
 
学問としての歴史のみならず、こうしたマインドの部分も含めご教授いただいた島崎先生に感謝申し上げます。
 

 
なお、市立博物館で開催されている特別展「日本横断!運河計画」では、高樹文庫資料の一部が展示されている(必見です)ほか、次の関連イベントは、当気比史学会主催の市民歴史講座。
 
11月16日(土)14時より、「日本横断!運河計画 一敦賀~琵琶湖運河計画と琵琶湖の新田開発一」と題し、今度は滋賀県側から見た運河計画についてお話しいただきますので、こちらもぜひ足を運んでいただければ幸いです。

« 古い記事