『高校生の原子力に対する意識調査2024』が発行される

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「小寒」の昨日は、終日冷たき風ながら、気持ちの良い快晴。
 
朝は神々しき野坂山を望み、夕方は金ヶ崎緑地でワンちゃんの散歩をした後、ランニングで自宅まで。
 
夕陽と重なる敦賀の景色で心身ともにリフレッシュしました。
 

【朝陽に照らされ、神々しき姿の野坂山】

【夕陽と重なる金ヶ崎緑地。多くの方が訪れていました。】
 
寒さ暑さはあるものの、今年も季節の移り変わりを楽しむ余裕をもって過ごせればと。
 
さて、話は変わり、昨日の福井新聞に掲載されていた、福井南高校の生徒たちが編集作成した『高校生の原子力に対する意識調査2024』について。
 
12月25日に発行されたこの調査は、埼玉県、東京都、福井県、京都府、兵庫県、島根県、鹿児島県、沖縄県、New Zealand(North IslandおよびSouth Islandで各1校抽出実施)を対象に2024年5月から6月にかけて一斉調査を行い、結果,国内外181校11,000名から得た回答を基に作成されたもの。
 
WEBに公開されているのは「調査概要及び結果」のみでしたが、早速拝見すると、「はじめに」には、“福井県内の原子力に対する意識差、という疑問を出発点に始まったこの調査も4回目を迎えました。調査対象地域の拡大とともに、その中身も大きく変更を重ねてきました。今年度は、「同世代の方々にエネルギー安全保障や原子力のバックエンドについて関心を持ってもらえるものにしたい」という私たちの思いを形にするために、掲載する情報やコンテンツも皆様が回答くださった自由記述欄を参考に試行錯誤を重ねました。”
 
“エネルギーや原子力、環境問題について考えるのは、難しいと感じられる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、この冊子を通じて「意外と身近だな」と思っていただけたり、「自分の生活や将来にどう関係しているのだろう」と考えるきっかけになれば幸いです。”
 
との生徒さんからの言葉がありました。
 
なお、意識調査のWEB公開版は、以下リンクよりご覧ください。
 
 →『高校生の原子力に関する意識調査2024』WEB公開版はこちら
 
国内合計や各都府県ごとの集計結果では、原子力発電にどの程度関心を持っているか、原子力へのイメージ、今後日本はどのようなエネルギーを利活用していけば良いか、原子力発電の廃炉に関連するクリアランス制度・資源についてどの程度知っているか、日本のエネルギー事情や原子力・教科書へのご意見などの設問があり、興味深く拝見。
 
とりわけ、原子力のイメージに関しては、「必要」とする回答が、“そう思う”、”ややそう思う”を含め68.3%である一方、今後のエネルギー利活用のトップは「太陽光」など再生可能エネルギーが上位を占める結果となっていました。
 

【WEB公開版より、上記設問部分を抜粋引用】
 
こうしたことを自身のXで紹介投稿すると、エネルギー関係にお詳しい方からは、「当たり前ですが、太陽光発電では日中した発電出来ない。一方使う側は24時間使いたい。そのギャップを埋めるのは何、って考えを進めて欲しいですね。高校生なら分かるでしょう。」とのご意見。
 
私からは、「自由記述欄も読みましたが、現時点では必ずバックアップ電源が必要なことまで理解して再エネを選択したか否かまでは?なお、東京や京都+福井ほか5県にニュージーランドまで、原子力立地・消費地を問わず、こうして高校生達がエネルギー安全保障やバックエンド等について考えることに意義があるものと感じました。」とお答えした次第。
 
各電源のメリット、デメリットは設問前にどこかで触れているのかもしれませんが、お答えしたとおり、まずは日本のエネルギー事情について関心を持っていただくこと、その次にS+3Eの基本的考え方を踏まえ、電力システム全体として何が最適解か考えていくことが肝要と感じた次第です(大人も然りですが)。
 
いずれにしても、次代を担う高校生の意識を知れることは、私にとっても意味のあることであり、本編も含めた調査資料をどこかで拝見したいと思います。
 
こうして毎年、テーマや規模を拡大し探求を進める福井南高校の生徒さん、先生方には頭が下がる思いであり、ここに敬意を表するとともに、今後も同世代の皆さんとともに、小資源国日本にとってのエネルギー・原子力について、意識を高める取組みを継続いただくことをお願いする次第です。

『第7次エネルギー基本計画』の原案が示される

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先日発行した「やまたけNEWS(第22号)」でも触れた、次期『第7次エネルギー基本計画』について。
 
恒常的な電力需給ひっ迫と電気料金高騰に喘ぐわが国においては、安価で安定的な電力供給が強く求められるところであり、「原子力か再エネか」の不毛な二項対立ではなく、他国依存度の低い脱炭素電源を幅広く確保していくことが、日本再生の生命線。
 
加えて、2017年以降、世界で建設された32基の原子力発電所のうち、27基がロシアと中国であり、このままでは早晩、原子力技術分野が中露に掌握されてしまうことから、「エネルギー安全保障」の観点からも、現行計画にある「原子力依存度を可能な限り低減」の文言を削除することによって、将来に亘って活用する意思を明確にすべきと述べたところ。
 
その『第7次エネルギー基本計画』が17日、総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会計画にて原案が示され、全文に目を通しました。
 
 →「エネルギー基本計画(原案)の概要」はこちら
 →「エネルギー基本計画(原案:全文)」はこちら
 
部分的に『第6次』とも見比べながら読み進めましたが、前回と同様、エネルギー政策の原点としてまず「福島第一原子力発電所事故の経験、反省と教訓を肝に銘じて取り組む」ことを第一に挙げつつ、基本的視点に掲げる「S+3E」(安全性、安定供給、経済効率性、環境適合性)の観点では、置かれた状況を含め、より丁寧に書かれている印象を持ちました。
 
また、基本的考え方の総論では、「DXやGXの進展による電力需要増加が見込まれる中、それに見合った脱炭素電源を十分確保できるかが我が国の経済成長や産業競争力を左右する状況にある。脱炭素電源を拡大し、我が国の経済成長や産業競争力強化を実現できなければ、雇用の維持や賃上げも困難となるため、再生可能エネルギーか原子力かといった二項対立的な議論ではなく、再生可能エネルギーと原子力をともに最大限活用していくことが極めて重要となる。」と、まさにNEWSで述べたことと同じ認識に立っていることを確認。
 
原子力に関しては、同じく冒頭述べた、これまでの「原子力依存度の可能な限りの低減」の文言を削除したことは良かったと。
 
原子力発電の「優れた安定供給性、技術自給率を有し、他電源とそん色ないコスト水準で変動も少なく、一定の出力で安定的に発電可能」とのメリットを強調した上で、立地地域との共生、国民各層とのコミュニケーションの深化・充実、バックエンドプロセスの加速化、再稼働の加速に官民挙げて取り組む。
 
新増設・リプレースについては、「廃炉を決定した原子力を有する事業者の原子力発電所サイト内での、次世代革新炉への建て替えを対象として、(中略)具体化を進めていく」と記載されたほか、次世代革新炉の開発・設置に向けては、研究開発を進めるとともに、サプライチェーン・人材の維持・強化に取り組むことが明記されました。
 
一方、『既設炉の最大限活用』の項では「再稼働加速タスクフォース」等の取組み、『次世代革新炉の開発・設置』では〝規制当局と共通理解の醸成を図る”とありましたが、主語はいずれも事業者。
 
とりわけ、喫緊の課題である電力需給の改善に向けては、長期化している適合性審査を加速させることが不可欠であり、規制機関の体制強化や審査の効率化を図ることが必要と考えますが、計画にこれを書くことはタブーなのか。
 
また、他の電源についても同様、考え方が示された上で、2040年のエネルギー需給見通しに関しては、発電電力量は1.1~1.2兆kWh程度、電源構成では、再生可能エネルギーが4~5割、原子力が2割程度、火力が3~4割程度と提示されました。
 

【参考:2040年度におけるエネルギー需給の見通し(令和6年12月17日 基本政策分科会資料より抜粋)】
 
電源比率に関しては、2040年までの既設原子力の再稼働、次世代革新炉によるリプレースなどの進捗予想の中で脱炭素電源比率を引き上げねばならないことを考えれば、「致し方ない」と思いつつも、主力電源を「再エネ」に置くことにはやはり違和感を唱えるところ。
 
先日、各電源のコスト試算も発表されましたが、重く乗っているのは、再エネ比率上昇に伴う統合費用の増加であり、さらには、年間約3.5兆円にも及ぶ、国民の皆さんかが負担している「再エネ賦課金」を思えば、将来主力にすべきはやはり「原子力発電」と考える次第です。
 
とはいえ、火力発電の活用なども含め、前回に比べれば「現実的」となった基本計画案であり、引き続き、年内にも最終原案を固める見通しとされる今後の議論を注視する所存です。

国民民主党が「現実的なエネルギー政策」を石破総理に直接要請    

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敦賀市議会は昨日、補正予算案審査のための予算決算常任委員会を開催しました。
 
10時から行われた全体会では、事前に発言通告のあった33件(重複を除くと17件)について基本質疑。
 
全体会終了後、14時15分からは総務民生、産経建設、文教厚生に分かれての分科会にて、所管する事業について審査しました。
 
なお、全体会で発言通告が3人以上重なったのは、以下4件。
 
◉粟野地区認定こども園整備事業費(2692万9千円)
粟野地区(櫛林地係)における認定こども園建設について、園への道路接続(約120m)及び敷地造成(約5400平方メートル)に係る設計を行う。
 
◉コミュニティバス運行事業費(920万7千円)
新幹線開業後の状況を踏まえ、コミュニティバスのダイヤ改正の準備を行う。
 
◉まちづくり法人運営事業費補助金(2182万円)
港都つるが株式会社と一般社団法人敦賀観光協会の一体化による「新たなまちづくり会社」の設立に向け、人件費や備品購入費、内部管理システム導入費等を補助する。
 
◉学校管理運営費(小学校費:343万9千円、中学校費:507万円)
学校や教室に居づらさを感じ、不登校の兆しが見られる児童生徒の居場所づくりを目的とする「校内サポートルーム」の環境整備を行う。
 
質疑の重複を、議員の関心が高いものと取るか、懸念される点があるからと取るか、それぞれあろうかと思いますが、いずれにしても全体会ならびに分科会での質疑を通して事業の目的や費用の妥当性をクリアにしていくもの。
 
他の事業も含め、同会派の議員と各分科会での審査状況を共有した上で、賛否の判断をしていく所存です。
 
さて、国会のほうは本日、第2次石破茂内閣にとって初の本格的論戦の場となる第216臨時国会が招集され、令和6年度補正予算案や政治資金規正法の再改正案などの審議を行う予定としています。
 
これに先立ち昨日、国民民主党は、第7次エネルギー基本計画がまもなく策定されることを踏まえ、同党が公約でも訴えた現実的なエネルギー政策について、首相官邸にて石破総理に直接伝えました。
 

【石破総理に要請書を渡す玉木代表ら国民民主党議員団(左から竹詰仁参議院議員、浜野喜史参議院議員、浅野哲衆議院議員、浜口誠参議院議員)】
 
なお、要請した内容は、以下文面のとおり。
 

 
要請の後、玉木代表はXポストで次のように述べています。
 
<以下、引用>
安価で安定的な電力供給がなければ経済成長も賃上げもできません。「再エネか、原発か」の二項対立ではなく、他国依存度の低い脱炭素電源を幅広く確保していかなくてはなりません
 
安全を前提とした原子力発電所の再稼働とともに、建替えと新増設の必要性を明記することを求めました。先が見通せなければ、人材の育成・確保や、技術の維持・強化もできません。
 
2017年以降、世界で32基の原発が建設されましたが、そのうち27基がロシアと中国です。今のままでは、早晩、原子力発電の技術もロシアや中国に依存することになりかねません。
 
石破内閣には、戦略的なエネルギー基本計画の策定を求めます。
<引用終わり>
 
政府のGX方針では「原子力の最大限活用」を掲げつつ、エネルギー基本計画では現行の「原子力の依存度低減」の文言を残そうとするかの動きがあるなか、電力総連などとも連携を図りつつ、国民民主党が要請した内容は極めて現実的と考える次第です。
 
併せて、足下の電力需給をより安定的且つ低廉なものにするため原子力規制に言及しているのは唯一、国民民主党(要請文の下から2番目のポツ)。
 
「安全が確認された原子力発電所は稼働」と至極当たり前のことではなく、要請文にあるよう、「長期化している適合性審査を加速する」ことは、日本経済・エネルギー安全保障の観点から極めて重要であり、米NRC(原子力規制員会)の考えなども参考に、見直すべきと考えます。
 
30年ぶりに動いた「103万円の壁」にあるよう、今度は、国の根幹に関わるエネルギー政策も動かす覚悟で求めていますので、ぜひともご理解の上、国民世論で後押しいただけますようお願いいたします。

福井県市議会議長会「令和6年度中央要望」〜敦賀市議会からは原子力政策について求める〜

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一昨日のブログで、野坂山の山頂が白くなっていたことをお伝えしましたが、二十四節気では今日から「小雪(しょうせつ)」。
 
「寒くなって雪が降る頃」になります。
 
天気予報を見るとまだ雪マークはないものの、「小雪」を合図にそろそろ冬支度。
 
早目にタイヤ交換などを済ませ、本格的な冬に備えましょう。
 
さて、寒さが厳しくなるにつれ、暖房器具の使用等により電力需要が増加し、以前にあった「需給ひっ迫」の心配をまたしないといけないのかと忸怩たる思いが浮かぶ訳ですが、これに関し、現在国で進めているのが「エネルギー基本計画」改定に向けた議論。
 
原子力に関しては一部報道で、現行の「第6次エネルギー基本計画」にある“原子力依存度を可能な限り低減する”との文言が残るのではとあるところです。
 
議論を遡ると、改定論議を始めたあたりの5月15日に開催された第55回エネルギー資源調査会基本政策分科会で委員の杉本達治福井県知事は、「(現行エネルギー基本計画では)可能な限り依存度を低減するとし、原子力の将来像が明らかになっていない」と意見しています。
 
岸田政権時に決めた、政府の「GX実現に向けた基本方針」や「原子力の最大限活用」からすれば当然、次期エネルギー基本計画では、この文言が削除されるものと思っていましたが本当に残すつもりなのか。
 
何の勢力に配慮して躊躇しているのか分かりませんが、この文言が残る場合、国の方針との間で自己矛盾が生じることも含め、明確な判断を切に求める次第です。
 
そうした中、昨日は全国都市会館(東京都千代田区)で開催された福井県市議会議長会(9市の正副議長で構成)の令和6年度中央要望に出席。
 
福井県選出の国会議員に対し、各議会からそれぞれの課題を踏まえ、要望を伝えました。
 

【各議会の思いが込められた要望書】
 
トップバッターで意見した敦賀市議会からは中野史生議長より、「原子力政策と原子力発電所立地地域の安全確保」について要望。
 
原子力政策の方向性を明確に位置付けるとともに、原子力利用に係る取組について、時間軸を含めて具体的に示すことや原子力災害時の即時避難ルートの確保、道路寸断等に伴う市内の孤立化防止に向けて、「敦賀一高島連絡道路」の整備実現のための調査委託等の事業を推進することなどを強く求めました。
 
なお、その後の意見交換会で自民党議員の方とお話しした際、「国民民主党さんの原子力政策は?」と聞かれたので「リプレースはもちろんのこと、新増設まで公約に書いてますよ」と申し上げました。
 
また、同じく自民党のもうお一方の議員さんは国民民主党の政策を把握されており、原子力政策も協力して進めていければとの言葉がありました。
 
同じ党でこうも違うのかと感じましたが、「自民党より踏み込んでいる」ことをお伝えできたことは良かったかと。
 
いずれにせよ、先の“依存度を可能な限り低減”の文言然り、石破政権下でエネルギー基本計画はどうなるのかに注目が集まるところであり、「自分の国は自分で守る」との考えのもと、原子力のみならず、再エネ偏重を是正するという国民民主党の考えをどう反映していくか。
 
「103万円の壁」が30年ぶりに動いた訳ですが、エネルギー基本計画は「3年ごと」の改定。
 
原子力を今の3倍にするとの世界の潮流も背景に、日本再生のためにこの壁も動かしていかねばと考える所存です。

政局はあれど「超現実的」な「エネルギー基本計画」策定を

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昨日午後は、福井県自治会館で行われた「市町議会議員合同研修会」に出席。
 
一般社団法人 地方公共団体政策支援機構 長内紳悟氏による「議会のデジタル化とDX」、政治ジャーナリスト 細川隆三氏による「衆院選を分析!石破政権の課題」と題した講義を拝聴いたしました。
 
長内氏の「議会改革は市民のためにならない」との発言には違和感を覚えましたが、それぞれお聞きした話の中で得たヒントは、今後の活動に活かしていきたいと思います。
 
さて、昨日お伝えした女川原子力発電所2号機の原子炉起動。
 
予定通り起動をし、今後は11月上旬を想定している再稼働(発電再開)に向けて、各種試験・検査、作業などを進めることとなります。
 
13年ぶりとなる再稼働に向けて、引き続き、安全確保を最優先に工程を進めていただきたく存じます。
 
また、女川原子力発電所と同じ沸騰水型(以下BWR)で続くのは、中国電力の島根原子力発電所2号機。
 
安全性向上対策工事が完了し、昨日28日には、燃料装荷を開始したとの発表がありました。
 
同2号機での燃料装荷作業は2010年10月以来約14年ぶり。
 
原子力規制委員会から、燃料装荷に必要な試験使用承認書が同日交付された上で行われたもので、1週間程度かかる見込みの燃料装荷を終えた後、計画通りに進めば12月上旬にも原子炉を起動するとのこと。
 
福島第一原子力発電所事故から13年余り。
 
生成AI(人工知能)の普及に伴う電力需要の拡大で、世界の原子力政策は転換期に入り、脱炭素と電力の安定供給を実現する原子力発電所は、資源に乏しい日本のエネルギー戦略を考える上で欠かせないことは言うまでもありません。
 

【生成AIに対応するためのデータセンター、半導体工場新設などに伴う今後の電力需要予測(資源エネルギー庁 基本政策分科会資料より)】
 
林芳正官房長官は29日の記者会見で「わが国全体の経済成長の観点から再稼働の重要性が高まっている」と言及しましたが、その意味でも、女川、島根と続くBWRの再稼働は大きな節目と言えます。
 
岸田政権では「原子力発電の最大限活用」を掲げ、再稼働を加速する構えとした政府ですが、それは当たり前のこととして、上述の通り、データセンターなどの増加で拡大する電力需要を支える脱炭素電源として原子力発電は欠かせず、今後は建替え(リプレース)や新増設も進めなければ、「電力不足」によって、国民生活や経済活動が行き詰まることは明白と考えます。
 
なお、衆院選の福井1区、2区候補者にリプレースや新増設の必要性について問うたアンケートで、「○」としたのは、1区の稲田朋美氏と2区の高木毅氏の2名のみで、他の候補は「×」または「△」でした。
 
原子燃料サイクルが回っていない、最終処分の問題が解決していないのに進めるのは無責任だとの回答が多かったように思いますが、では、その条件がクリアになったら良いのですね?或いは、いわゆるバックエンド側の課題解決に向けて取り組んでくれるんですね?と問い直したいところ。
 
衆院選で自民、公明両党が過半数割れし政権が不安定化する中、今年度に見直す「エネルギー基本計画」は、議論の曲折も危惧されるところですが、この見直しは日本再生に向けた肝であり、使用済み燃料の問題を含め、「超現実的」な計画を策定いただくことを切に願うところです。

世界は「原子力を3倍にするためのファイナンス」

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原子力規制委員会は16日、関西電力高浜発電所1号機(以下、高浜1号)の高経年化技術評価に関する保安規定の変更を認可。
 
劣化評価が適切に実施されていることを確認した上、評価の結果を踏まえた施設管理方針の内容も妥当としました。
 
高浜1号機は11月に運転開始から50年を迎えることから、国内初となる50年超運転のプラントとなる見込みであり、今後引き続いての安全安定運転を期待いたします。
 
こうして原子力発電の長期利用を着実に進めることは、わが国の脱炭素化並びに電力の安定供給に向けて極めて重要と認識するところ、国民民主党においては、衆院選の公約に「原子力発電所の建て替え(リプレース)や新増設を進める」と、どの党よりも踏み込んだ政策を掲げている一方、これを進めるには、技術開発や建設にに取り組もうとする事業者の環境整備が鍵を握るところ。
 
そうした中、5月より「エネルギー基本計画」改定に向けた検討を開始している総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会は10月8日、10回目となる会合を開催し、電力システム改革が直面する課題や最近のエネルギーをめぐる国際情勢などを踏まえ議論しました。
 
冒頭、資源エネルギー庁の村瀬佳史長官は、今回のテーマに関連し「こうした議論をしている間にも大きな変化が生まれている」と絶え間ない世界の潮流変化を強調。
 
一例として、9月にマリオ・ドラギ氏(前欧州中央銀行〈ECB〉総裁・前イタリア首相)が、EUの産業競争力強化に向け公表した「The future of European competitiveness」(通称、ドラギレポート)の他、同月の米国コンステレーション社によるスリーマイルアイランド原子力発電所1号機の再稼働と、その全発電量を20年間にわたりマイクロソフト社に供給する計画発表などを紹介し、「欧米に見られる脱炭素化の大きな動きだ」と指摘しました。
 
また、杉本達治委員(福井県知事)は、立地地域の立場から、「既設炉、革新炉を問わずに、事業者が安全対策を十分に行えるよう、国が事業環境整備を行うことが重要。原子力の必要規模・開発の道筋など、原子力の将来像をより明確にする」ことを改めて要望。
 
資源エネルギー庁からは、9月の国連総会サイドイベント「原子力を3倍にするためのファイナンス」会合における世界の主要金融機関14社(ゴールドマンサックスなどを含む)が原子力への支持を表明したことも紹介。
 
同調査会の原子力小委員会委員長も務める黒﨑健委員(京都大学複合原子力科学研究所教授)は、脱炭素電源それぞれのメリット・デメリットを認識した上で、原子力発電のビジネス化に関し、「リードタイム・総事業期間が長いことに尽きる。最初に大規模な投資を図り、安定的に長く利用するもの」と、その特徴を説明した上で、「事業の予見性が重要」と述べ、民間による投資の限界に言及しつつ、国による関与の必要性を指摘しました。
 
なお、同分科会で示された事務局(資源エネルギー庁)提出資料を以下にリンクしますが、「電源の脱炭素化に向けた事業環境整備」について記されたスライドを抜粋掲載しますのでご覧ください。
 
 →基本政策分科会(10月8日)資源エネルギー庁提出資料はこちら
 


 
会合の結びに隅分科会長は、「脱炭素化と産業競争力を両立させる現実的な政策」の必要性をあらためて強調し、今後、具体的な制度設計が図られるよう、次期エネルギー基本計画に「しっかりと方針を盛り込んでいく」との考えを述べたよう、国の政策会合では、ここまでの議論がされています。
 
翻って、先の政治でのエネルギー政策論議はどうでしょうか。
 
「原子力ゼロ」や「再生可能エネルギー100%」で電力を賄うといった絵空事は論外とし、とりわけ原子力発電のような「票にならない政策は選挙で言わない」ことを続けていては、国力は低下するばかりと考えます。
 
奇しくも「エネルギー基本計画」改定に向けた議論と並行しての衆院選となっておりますが、「票にならないことこそ」真剣に、各党の考えをぶつけ合っていただくことを期待する次第です。

日本の成長のためには3Eと電力需要増ヘの対応が必要

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父方の叔父が27日に逝去され、一昨日はお通夜、昨日午前中に葬儀が営まれました。
 
お通夜の際は、裏方のお手伝いをしていた訳ですが、葬儀には参列をし、最後のお別れから出棺までお見送りすることができました。
 
幼少期からお世話になった、97歳で逝かれた叔父が安らかに眠られますことをお祈りするとともに、生まれ育った大比田区の皆様を始め、葬儀に参列いただいた皆様のご厚情に、親戚の一人として心より御礼申し上げます。
 
なお、こうして人の死というものに立ち会うたびに、人は生まれた時、ろうそくに火が灯されるとの言葉を思い返します。
 
生の瞬間に、死に向かっていることを意味する言葉であり、しかも、このろうそくには太くて長いのもあれば、細く、短いものもある。
 
ろうそくは選べなくとも、灯火が消えるまでどう生きるかが人生であると、教えていただいている気がしてなりませんが、昨日、安らかな表情で逝った叔父もそう言っているかのように思えた次第です。
 
さて、冒頭、身内話から人生観の如くなってしまいましたことご容赦いただき、別の話題に。
 
昨日14時から敦賀市民文化センターで開催された、福井県原子力平和利用協議会主催の「2024エネルギーフォーラムin敦賀」に参加。
 
本フォーラムについては、27日のブログでご案内したところですが、「第7次エネルギー基本計画の展望と原子力への期待」をテーマに、エネルギー・環境政策の第一人者である秋元圭吾氏(地球環境産業技術研究機構)のお話を拝聴した次第。
 
トークセッション式で行われ、内容は以下のとおりで構成されました。
 
1.エネルギーと気候変動の現状
2.カーボンニュートラルに向けた各種対策技術の役割と課題
 2.1.再生可能エネルギーの役割と課題
 2.2.CCUS・CDR・水素系エネルギーの役割と課題
 2.3.原子力の役割と課題
3.第7次エネルギー基本計画の展望
4.まとめ
 

【フォーラム会場の様子】
 
基礎知識的な部分も多く、内容はほぼ理解するとともに、「まとめ」にありました、第7次エネルギー基本計画では、改めてS(安全・安心)+3E(①エネルギー安全保障・安定供給、②経済性、③環境)のバランスが強調されるのではないか(第6次では環境のEが強調され過ぎていた)など、現実路線の考え方を共有しました。
 
また、エネルギーにハンディキャップがある日本は、原子力の活用によって相対的なエネルギー価格の上昇を抑制し、産業の競争力を維持してきたことからも、成長のためには3Eと電力需要増ヘの対応が必要とも。
 
まさに私の考えと合致する秋元先生が、今後も国内外の中枢で、冷静且つ科学的な視点から意見提起いただくことをお願いする次第です。
 
結びに、貴重な機会を設けていただきました福井県原子力平和利用協議会の皆様、運営対応にあたられた方々に感謝申し上げます。

「2024年 エネルギーフォーラムin敦賀」が開催されます

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「ここまで電力需給は逼迫している」
 
改めて、厳しい状況を認識したのは、昨日、経済産業省・資源エネルギー庁が、広域予備率が低下した場合に一般送配電事業者が講じる追加供給力対策に関し、現在、広域予備率で「8%未満」としている実施の判断基準を「5%未満」に引き下げる旨見直すとしたこと。
 
理由は、電力の需給運用において、需要の増加等により需給の状況が厳しくなることが見込まれる場合には、一般送配電事業者が広域予備率の状況に応じて追加供給力対策を実施するとなっているところ、このうち、広域予備率8%未満が実施の判断基準となっている「発動指令電源の発動」は、容量市場のリクワイアメントに基づき、12回/年度の発動上限が設けられていますが、東京エリアにおいては9月24日時点で既に10回、中部エリアでは9回発動している状況にあり、発動指令電源の発動回数が年間上限に迫っていることから、2024年度内は基準を広域予備率5%未満に引き下げるとあります。
 
揚水リソースの運用切り替えなど、その他の対策も基準を厳格化する方向で検討するとのことですが、暑さ寒さの程度はあるにせよ、恒常的な供給力不足に陥っていることを露呈するものであり、審査を終えた原子力発電所を速やかに稼働させるなど、「今できること」を政治判断で速やかに実行いただかねばならないと強く思う次第です。
 
そうしたなか、電気料金の国民負担を含め、「エネルギー危機」にあることを国民皆で課題認識することが重要と思うところ、明日は、今後のエネルギー政策を考えるフォーラム」が敦賀の地で開催されます。
 
それは、福井県原子力平和利用協議会が主催する「2024年 エネルギーフォーラムin敦賀」。
 
開催日時やテーマに関しては以下のとおりとなっています。
 
◉日 時: 2024年9月28日(土) 14:00 ~ 16:00
◉場 所: 敦賀市民文化センター 大ホール
◉テーマ: 「カーボンニュートラルに向けて日本のエネルギーのこれからを考える」
          ~第7次エネルギー基本計画の展望と原子力への期待~
◉トークセッション 
・(公財)地球環境産業技術研究機構(RITE)システム研究グループ グループリーダー  東京工業大学 科学技術創成研究院 特任教授 秋元圭吾氏
・エネルギー広報企画舎 代表 高木利恵子氏
 

【福井県原子力平和利用協議会作成のチラシ】
 
ここで登壇される秋元圭吾先生は、誰もが認めるエネルギー・環境分野における日本の第一人者であり、これまで多くのエネルギー・環境システムの分析・評価や地球温暖化対応戦略の政策提言をされている方。
 
略歴を以下にリンクしますので是非ご覧いただきたく存じますが、「エネルギー基本計画」の検討を行う総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会委員はもとより、世界気象機関(WMO)及び国連環境計画(UNEP)により1988年に設立された政府間組織である気候変動に関する政府間パネル(IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change)委員も務められるなど、国内外でご活躍されています。
 
 →秋元圭吾氏の略歴はこちら
 
なお、秋元先生のお話は、以前に何度か拝聴したことがありますが、東日本大震災・原発事故を受けて、政府がエネルギー・環境政策を白紙から見直すことを決めた際に、内閣官房ホームページのあるコーナーにあった、先生の思いが印象に残っています。
 
<以下、秋元先生の言葉>
 
エネルギー・環境問題は複雑であり、広範かつ深い理解が必要です。コスト等検証委員会委員としても、客観的にデータを読み、より蓋然性が高いことは何かを追究してきました。エネルギー・環境戦略の選択肢については、経済分析を行う1研究機関としてこれに取り組みました。その分析でも、専門性を発揮し、客観的、論理的にデータを扱い、蓋然性が高い分析に努めました。原発への畏れ(おそれ)を覚えます。しかし同時に、各選択肢によって異なって表れる経済的なリスク、気候変動リスク、エネルギー安全保障・安定供給リスクなど、多くのリスク、その裏表となる便益を冷静に見つめることが重要です。一面的な判断、感情的な判断では、将来にわたって社会を幸福にすることはできません。多くの方々が一歩踏み込んだ理解をし、政治家の方々も、一層、広く深い理解に努められ、大きな判断がなされることを望みます。
 
震災、そして福島第一原子力発電所事故の後にあって、このように冷静に科学的な思考を持たれ、今もそのままのスタンスで意見提言を続ける秋元先生。
 
ぜひ明日のフォーラムには多くの方にお越しいただき、これからの日本のエネルギーを考える機会にしていただければと存じます。

エネルギーがないことほど危険なことはない 〜『憂国の原子力誕生秘話』を振り返る〜

エネルギー ブログ 原子力

先ほどの【お知らせ】投稿にて「やまたけNEWS(第21号)」のご紹介をいたしました。
 
「思いと考えは自分の声と足で届ける」をモットーに、一昨日の晩と昨日午前中で町内全戸にはポスティングしましたが、今回のNEWSは敦賀市議会で「エネルギー基本計画見直し」に対して意見書を提出したことや、敦賀発電所2号機の審査の件もありエネルギーのことを中心に記載しています。
 
本日の朝刊に新聞折込みもいたしましたが、一人でも多くの方に伝われば何よりです。
 
さて、NEWSの最後にある「ちょっとひとこと」を書くにあたり、日本社会党機関誌編集局長を経て衆議院議員を6期お務めになられた後藤茂氏の著書『憂国の原子力誕生秘話』を手にしたところ。
 
タイトルの通り、この著書は、戦後日本において、原子力を研究、開発利用した当時の状況が克明に記録されていることに加え、中曽根康弘元総理大臣など、原子力黎明期に活躍された方々の国家観ある壮大且つ強い思いが紹介されており、これまで何度も読み返しているもの。
 
「ちょっとひとこと」にも記載したよう、世界唯一の戦争被爆国が原子力を選択した理由がまさにここに記載されている訳ですが、著書には「無資源国の日本が資源を止められたことが無謀な戦争の一因になったことを、当時はどの人も深刻に受け止めていた」、「エネルギーは国家百年の計だという考えが、自民党、社会党を問わず、政治家の頭にあった」とあり、自国のエネルギーを確保するかが国家の行方を左右するとの考えが根底にあることを改めて強く認識する次第です。
 

【私にとってバイブル的存在の『憂国の原子力誕生秘話』。原子力黎明期の歴史を読み返すたびに力が湧きます。】
 
著書の中で、昭和24(1949)年12月に、国連総会でソ連を含め満場一致で決定され開催された「原子力平和利用国際会議」の様子が記されており、それまでベールに包まれていた原子力の情報が平和利用のために公開されるとあって、72カ国の政府代表や約3,000人もの科学者が参加したとありました。
 
これに日本からは、中曽根康弘、松前重義、前田正男、志村茂治の4人の衆議院議員が参加しており、当時を振り返り中曽根氏は、「我々の時代は戦争を経験している。原子力平和利用国際会議への出席は、まるで出征兵士の意気込みで臨んだ。(米ソ)冷戦下でこれから日本がどう生きていくのか、”国の形”を真剣に考えていた」と語っています。
 
みな戦争経験者であり、だからこそ、原子力を平和利用することによって、新しい「国」を創る。念頭には「国」しかなかった。不退転の覚悟で進めようと、心に深く誓ったのである。
 
ジュネーブ国際会議場は、その格好の舞台だったのだ。国際会議という大舞台で、しかも慌ただしい日程を精力的にこなしながら、国土を荒廃させ、原爆の洗礼を受けてしまった祖国を思い、原子力によって復興させると、心昂らせたのであった
 
と文章は続きます。
 
様々な過程、議論を経つつ、日本の原子力利用は昭和30(1955)年の「原子力基本法」制定を根拠に始まります。
 
ここで、先の国際会議にも参加し、本法案の提出者ともなった中曽根康弘氏の提案理由説明でまず、「本原子力基本法案は自由民主党並びに日本社会党の共同提案になるものでありまして、両党の議員の共同作業によって、全議員の名前をもって国民の前に提出した次第であります。」との言葉ではじまり、基本法を議員立法とした熱い思いが、委員会室に伝わったとありましたが、中曽根氏が続けて述べた提案理由にすべてが包括していると思うことから、以下引用いたします(一部、中略)。
 
(前略)そこで、日本に原子力国策を確立する場合において、いかなる点を考慮すべきかといいますと、われわれの考えでは、まず国策の基本を確立するということが第一であります。日本には有能なる科学者があり、技術者があり、技術陣があります。しかし、国策が確立されておらないようでは、有能なる学者はここに集まってきません。そこで、機構的にも予算的にも、国家が、不動の態勢をもって、全国民協力のもとに、この政策を長期的に進めるという態勢を整えることが第一であります。これによって有能なる学者をこの方向に指向させることができるのであります。
 
第二点は、超党派性をもってこの政策を運用して、政争の圏外に置くということであります。国民の相当数が、日本の原子力政策の推進を冷やかな目で見るということは悲しむべきことであり、絶対避けなければならないのであります。全国民が協力するもとに、超党派的にこの政策を進めるということが、日本の場合は特に重要であるのであります。
 
第三点は、長期的計画性をもって、しかも日本の個性を生かしたやり方という考え方であります。原子力の問題は、各国においては、三十年計画、五十年計画をもって進めるのでありまして、わが国におきましても、三十年計画、五十年計画程度の雄大なる構想を必要といたします。それと同時に、資源が貧弱で資本力のない日本の国情に適当するような方途を講ずることが必要であります。
 
第四点は、原子力の一番中心の問題は金でもなければ機構でもない。一番中心の問題は、日本に存在する非常に有能なる学者に心から協力してもらうという態勢を作ることであります。具体的に申し上げれば、湯川博士や朝永博士以下、日本の学界には三十前後の非常に優秀なる世界的なる学者が存在いたします。これらの有能なる学者が、国家のために心から研究に精を出してもらうという環境を作ることが、政治家の一番重要なことであります。
そのようなことは、学者の意見を十分取り入れて、この原子力の研究というものが、日本の一部のために行われておらない、一政党の手先でもなければ、財界の手先でもない、全日本国民の運命を開拓するために国民的スケールにおいてこれが行われておるという態勢を作ることが一番大事な点であります。このような点にわれわれは機構その他についても十分配慮した次第であります。
 
第五点は、国際性を豊かに盛るということであります。原子力の研究は、各国におきましてはみな国際的な協力のもとに行われております。
 
第六点は、日本の原子力の問題というものは、広島、長崎の悲劇から出発いたしました。従って、日本国民の間には、この悲しむべき原因から発しまして、原子力に対する非常なる疑いを持っておるのであります。このような国民の誤解を、われわれはしんぼう強く解くという努力をする必要があると思うのであります。広島、長崎の経験から発した国民が、原子力の平和利用や外国のいろいろな申し出に対して疑問を持つのは当然であります。従って、政治家としては、これらの疑問をあくまで克明に解いて、ただすべきものはただして、全国民の心からなる協力を得るという態勢が必要であります。
 
この基本法案を総合的基本法としました理由は、日本の原子力政策の全般的な見通しを国民の各位に与えて、燃料の問題にしても、放射線の防止にしても、原子炉の管理にしても、危険がないように安心を与えるという考慮が第一にあったのであります。日本の原子力政策のホール・ピクチャーを国民に示して、それによって十分なる理解を得るというのが第一の念願でありました。
 
日本の現在の国際的地位は戦争に負けて以来非常に低いのでありますが、しかし、科挙技術の部面は、中立性を保っておりますから、そう外国との間に摩擦が起ることはありません。われわれが国際的地位を回復し、日本の科学技術の水準を上げるということは、原子力や科学によって可能であると思うのであります。(中略)原子力の熱を完全にとらえて原子炉文明というものが出てくれば、一億の人口を養うことば必ずしも不可能ではない、そのようにわれわれは考えます。
 
この演説はまさに、半世紀を経た現在にも通ずるもの。
 
著書には、「無資源国の日本が資源を止められたことが無謀な戦争の一因になったことを、当時はどの人も深刻に受け止めていた」、「エネルギーは国家百年の計だという考えが、自民党、社会党を問わず、政治家の頭にあった」ことを紹介しました。
 
国際会議に参加した中曽根氏の「(米ソ)冷戦下でこれから日本がどう生きていくのか、”国の形”を真剣に考えていた」との考えは、今に置き換えれば、ロシアのウクライナ侵略以降、世界は熾烈な「エネルギー資源獲得競争」を続けており、緊迫する国際情勢の中で「日本はどう生きていくのか」。
 
かのマリー・キューリー夫人の研究所で助手を務めたフランス原子力界のバートランド・ゴールドシュミット博士はこう言っています。
 
「エネルギーがないことほど危険なことはない。われわれは原子力を推進せねばならないが、一層強く核不拡散と事故のリスクを最小にすることに配慮しなければならない。これは原子力の壮大なストーリーが継続する中で、到達した確信である。」
 
答えはここにありと思う次第。
 
やまたけNEWSの「ちょっとひとこと」には、このような歴史背景と高まる危機感を踏まえ、思いを込めて書き上げました。
 
補足する本日のブログもお読みいただき、私の考えが少しでも伝われば幸いです。

東京電力PG「でんき予報」は電力需要・使用率ピークともに「98%」

エネルギー ブログ

汗が滴る昨朝の街頭では、この厳しい暑さを踏まえ、熱中症対策の徹底を呼び掛けるとともに、対策にとっても大事な電気に関しては、令和6年能登半島地震で大きな被害を受けた北陸電力の七尾太田火力1・2号(合わせて120万kw)が、夏季の電力高需要期前に復旧、運転再開いただいていること。
 
また、地元の敦賀火力発電所1・2号(同120万kw)等の順調な運転があって、北陸管内の安定供給が成り立っている旨ご紹介しました。
 
なお、北陸地方はまだ梅雨明けしていないものの、既に夏本番の様相を呈しています。
 
自身の発電所勤務時代、敦賀2号タービン建屋の瞬時に汗が噴き出すような高温の場所で点検や保守作業の立会いにあたったことを懐かしくも感じましたが、いずれにしても、汗して働く現場の方々を思えば何のその。
 
この程度の暑さには負けていられないと、ネジを巻いた次第です。
 
さて、冒頭、電力需要のことをお話ししましたが、厳しい状況が続いているのが関東エリア。
 
昨日、栃木県の佐野では何と午後2時に41.0℃を観測し、全国を通じて今年の最高気温を更新しましたが、こうなると、クーラーの使用などにより増加するのが電力需要。
 
溜めて置けない電気には「同時同量」の原則、つまりは「需要と供給のバランス」を常に取る必要がある訳ですが、昨日は需要に対し、供給が不足することも予想されたところ。
 
こうした状況から、広域で電力の需給調整を行う「電力広域的運営推進機関(OCCTO)」では、“需給状況改善のための発電設備焚き増しへのご協力のお願い(依頼)”を発出。
 
29日の東京電力パワーグリッド(以下、東京電力PG)管内の電力需給は、高気温影響による冷房需要等の需要の増加が予想され、広域予備率が5%を下回る厳しい見通しとなっていることを踏まえ、同機関会員に対し、下記の事項について、電気の需給状況の改善への協力をお願いしています。
 
<OCCTOからの協力依頼事項>
 
1.ご協力いただきたい事項
(1)東京電力PG管内において、各会員が所有している又は他者から電力買取契約により電力を調達している発電設備等について、可能な範囲で出力を上げた焚き増し運転をすること。ただし、当該発電設備等が他の小売電気事業者等と電力買取契約を締結している場合は、当該契約に従うことを優先し、その上で可能な範囲で出力を上げた焚き増し運転をすること。
(2)発電設備等の焚き増しによって生じた余剰電力は、卸電力市場(時間前市場)への供出を行うこと。小売電気事業者等との相対契約を持つ場合には、当該契約に従い電力の受け渡しを行うこと。なお、精算については、卸電力市場での取引又は相対契約に基づき行うこと。
 
2.ご協力いただきたい期間
 2024年7月29日(月曜日)11時~21時半
 
また、同機関の会員以外の電気供給事業者に対しても、本依頼の直接の対象ではありませんが、こうした状況をご理解いただき、上記の依頼内容に準じて、電気の需給状況の改善への協力をお願いしています。
 
なお、以下は、本日の東京電力パワーグリッドの「でんき予報」ですが、東京エリアの使用率では、需要・使用率ピークともに「98%」(5時20分現在)となっています。
 

【7月30日5時20分現在の東京電力PG「でんき予報」】
 
使用率は、電気の使用量(総需要)を電気の使用可能量(総供給力)で割って算出していますので、この数字からも昨日と同様、大変厳しい状況であることが分かります。
 
足りない供給力にあって、東京電力と中部電力が折半出資する発電会社JERA(ジェラ)は26日、五井火力発電所(千葉県市原市)で建て替えた1号機を8月1日に稼働させると明らかにしました。
 
猛暑で電力需要が高まる中、当初予定より約1ヶ月早めて稼働する五井火力1号機の出力は78万キロワット。
 
新たな設備は液化天然ガス(LNG)を燃料とする世界最高水準、高効率の最新鋭発電設備で、二酸化炭素(CO2)の排出削減にも貢献するとのこと。
 
このような状況に鑑みれば、東京電力PG管内にある、柏崎刈羽6・7号(ともに135.6万キロワット)や東海第二など、100万キロワットを超える原子力発電所が使えればと、忸怩たる思いが立ち上がってきますが、これまでも、そして今もなお、日本はこうした火力発電所に助けられて成り立っていることを忘れてはなりません。
 
今日も電力の安定供給を果たすとの思い一心で現場でご奮闘いただいている皆様、そしてトラブルなく運転する発電所各設備・機器に心より敬意を表するとともに、綱渡りの電力需給を一日でも早く改善せねばとの思いが一層募る次第です。

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