2025年1月16日
韓国の現職大統領拘束は「対岸の火事」ならず
『韓国は今、銃を持たない内戦状態だ』
一方が他方の息の根を止めないと終わらない 心理的殺戮戦が各地で起こっている 内戦をほうふつとさせるこの混乱がどのような結末を迎えるか ただ恐怖を感じるばかり。
とのタイトル、書き出しで綴られたのは、1月15日付けの朝鮮日報コラム。
問題が起きた時はなるべく当該国の新聞情報をと、朝鮮日報(日本語版です)にアクセスしたところ、このおどろおどろしい文面に当たったところですが、続く内容からさらに不安を余儀なくされることに。
<以下、コラム引用>
戒厳令事態後の政局で今起こっている現状をこれまで通りの「陣営間の対立」「与野党衝突」程度に考えているなら、それは現状を読み違えている。ソウル・漢南洞の路上で、光化門広場で、汝矣島の国会で、敵意に満ちた激しい対決の悪循環が今も続いているのだ。大統領公邸は鉄条網が張られた都心の要塞(ようさい)となり、流血事態の危機感も高まっている。妥協の糸口も見えない。一方が他方の息の根を止めなければ終わらない、文字通り心理的殺戮(さつりく)戦が各地で繰り広げられているのだ。
(中略)
まさに時を同じくして韓国で封切られた「シビル・ウォー アメリカ最後の日」は米国で内戦が起こるという設定の現実告発映画だ。2021年の国会議事堂での暴動で見るように、二つの陣営に分裂した米国もいつ爆発してもおかしくない状況にある。しかし米国には強固な自己防衛システムが存在する。国の中心をつかむエリートグループ、いわゆる「元老たち」に加え、危機的状況では政派を超越する政治家と司法が存在する。このシステムの力で極端な分裂を阻止し、衝突を回避してきたのが米国民主主義の250年の歴史だ。
しかし韓国に「元老」は存在せず、政治は政派性を帯びるばかりで、司法への信頼も弱い。そのため今の内戦のような混乱が今後いかなる結末を迎えるか。考えただけで一層恐ろしくなる。
<引用終わり>
なお、このコラムは、朴正薫(パク・チョンフン)論説室長が書いており、ここぞとばかりに室長がペンを握ったものと想像するところ。
【高位公職者犯罪捜査処(公捜処)の捜査官らが漢南洞の大統領公邸検問所から敷地内に入り尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の逮捕状を執行しようとしたところ、警護処の第55警備団兵力が捜査官らを取り囲んで制止した。1月3日撮影。/朝鮮日報より引用】
そして、15日午前10時33分、高位公職者犯罪捜査処(公捜処)と警察によって尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に対する逮捕状が執行され、尹大統領は韓国史上初、現職大統領として身柄を拘束されました。
尹大統領は、逮捕後、大統領官邸を出るに当たって発表した国民向けの映像メッセージの中で、「この国の法が崩れた。捜査権のない機関に令状が発付されること、無効な令状によって(逮捕)手続きを強圧的に進めるのを見て慨嘆に堪えない」、「流血事態を防ぐため、ひとまず不法捜査ではあるが、公捜処への出頭に応じることにした」とし「公捜処の捜査を認めるわけではない」と説明しています。
無政府状態の韓国が今後どうなるのか、仮に左派政権が誕生した場合の朝鮮半島情勢、さらには極東アジアの関係、日本への影響はと次々に懸念が浮かぶところですが、韓国の政権交代含みの混乱は、政権移行期の米国にとっても大きな不安要素となっているとのこと。
ロイター通信によれば、韓国、日本との3カ国協力を強化したバイデン政権の路線を引き継ぐ見通しのトランプ次期米政権にあって、一方では自国の軍事費を軽減するため、同盟国に対する負担拡大を求める立場を強調するなか、問題は、韓国で対米関係に冷淡な左派政権が誕生し、韓国に安全保障の役割拡大を求める米国と「衝突する恐れが出てくる」(ヘリテージ財団のクリングナー上級研究員)との報道。
北朝鮮寄りの韓国左派政権が対北圧力の維持を目指す米国に反発するシナリオも見込まれ、米国の政府高官や専門家には、北朝鮮が韓国の不安定化に付け入り、軍事挑発に出る懸念があるとの見方も根強いとあります。
こうした報道を見るに、韓国の問題は、もはや自国に留まるものではなく、日本にとって「対岸の火事」の出来事でないことは明白。
中国にロシア、加えて朝鮮半島の関係が崩れた場合、地政学的、さらには対米戦線とした場合の最前線に立つのは日本。
周辺諸国との緊張感は過去最高に高まっていることを強く認識し、その中にあっても、わが国の領土と国民の生命と財産をどう守るか。
「話せば分かる」のお花畑理論が通じないことは明らかであり、エネルギーと同様、安全保障においても日本は「超現実的な」対応が求められることは言うまでもありません。