2025年3月21日
地域の「知のインフラ」をイノベーションする
写真は、敦賀駅前にある知育・啓発施設「ちえなみき」(2025年2月15日撮影)。
開業以来、市内外から多くの来館者でにぎわう、「本屋でも図書館でもない」この空間と存在を、私自身も利用している中で、今ではすっかり自慢の場所に思うところ。
昨日午後はまさに、この「ちえなみき」の取り組みから、『地域の「知のインフラ」をイノベーションする』とのテーマにて、第2回敦賀まちづくりシンポジウムが開催され、参加してまいりました。
【会場のあいあいプラザ入口に掲げられた看板】
なお、参加対象は、まちづくりに関心のある企業・自治体関係者の方、教育関係の方、市民の方など。
敦賀市、大日本印刷株式会社(以下、DNP)、丸善雄松堂株式会社が主催、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社が共催しての開催とあって、会場のあいあいプラザ1階ホール後方には各社のブースが設置され、DNPの「メタバース役所」やミサワホームの「MOVE CORE」(ムーブコア:移動する住空間)などのお話を聞き、シンポジウム開始前から新たな技術導入による「可能性」を感じた次第です。
シンポジウムは、3名の方からの基調講演とパネルディスカッションで構成され、それぞれ書き留めることができたポイントは以下のとおり。
※ワードのみの記載となっている点はご容赦ください。
<基調講演A 米澤光治 敦賀市長>
テーマ:敦賀の目指すまちづくりについて 〜知のインフラを中心に〜
1.「ちえなみき」が生まれるまで
・元々は、駅西地区を目的地とは想定していなかった
・学びや発見を促すことで、「将来の敦賀を担う人材を育てる」ことを目指す
・「敦賀で暮らすことが楽しい」と思える場の必要性
・本を通じて「人」と「地域」と「世界」がつながる
2.「ちえなみき」が生まれてわかったこと
・市民利用としての役割を果たす
・ワークショップ、イベントなどで市民が融合し、つながる
・市外の人との交流がひろがる
・「ちえなみきに泊まろう」の企画は、2年目で応募率8倍(160名)の人気
3.「チエナミキ・※インフラストラクチャー」とこれからのまちづくり
※インフラストラクチャー(infrastructure)とは、社会や産業の基盤となる施設や設備の総称で、略して「インフラ」とも呼ぶ
・敦賀市の課題と「ちえなみき的なもの」
・人口減少(少子化・高齢化)への対応
:新幹線時代の交流拠点都市
・市民の「ウェルビーイング重視」
<基調講演B 丸善雄松堂(株)地域共育事業本部長 兼 (株)編集工学研究所取締役 鈴木 康友氏>
テーマ:地域の知のインフラとは何か
・①知が活発に流通し、蓄積される地域は活性化する、②新しい知へのアクセシビリティ、③知と人の流れ
・選書と空間とコミュニティの掛け算
・地域の知のインフラの危機
→人口が減少している、書店が減少している、図書館・文化施設は停滞している
→知が停滞すると人も地域も停滞する
→書店や図書館の減少は知との出会いを制限し、学びの機会を奪う
・「ちえなみき」から始まるイノベーション
・サードプレイスとしての活用
・「ちえなみきメソッド」で地域の知をイノベーションしていこう
<基調講演C 三菱UFJリサーチ&コンサルティング 戦略コンサルティング 兼 イノベーション&インキュベーション部 プリンシパル 山本 雄一郎氏>
テーマ:知のインフラとしての「ちえなみき」の価値の捉え方
・ウェルビーイング起点で価値を測定する
・敦賀市総合計画における「雇用の創出」の観点
・新たな産業と求められる知のインフラ
→産業が求める人材の育成
→人材を核とした新たな産業の呼び込み
→新たな産業×新たな産業が求める人→知のインフラによる雇用創出
<パネルディスカッション>
テーマ:“知のインフラ”により新たなコラボレーションを生み出す敦賀市のまちづくり
テーマ1:「チエナミキ・インフラストラクチャー」の重要な要素は何か
(市長)今あるものを「ちえなみきメソッド」でアップデートすることもできるのでは。
(丸善)本の独自選書や企てにより「知的好奇心」を生む。学習環境をデザインする。情報と空間、活動と共同体の4つから成り立つ。「ちえなみき」には全てが揃っている。「ちえなみきメソッド」としてはうまく回っているが、どれか一つでもかけると回らなくなることに留意が必要。歴史や伝統芸能は重要な掛け算の要素。
テーマ2:新たな「サードプレイス」創出に向けた知のインフラのリアル/バーチャルな拡大。増幅の具体案は?
(DNP)デジタル空間で享受できる、敦賀市は交通の結節点として域外の方がつながる可能性あり。「ちえなみき」にあるリアルとつなげていければ、メタバース空間で予期せぬ可能性を生み出すことも考えられる。リアル側が活性化すれば、それを見たいという人も増える。世代間を超えて、デジタル空間に集まってコミュニケーションを図ることで、「ちえなみき」をサードプレイスにもできるかと。
(ミサワホーム)敦賀市の絶景のところに、ムーブコアを使って「ちえなみき」を搭載することも可能。
(市長)デジタル空間はアートなどとも親和性が高い。一方、リアルのムーブコアは社会実験などで試してみることも考えられる。
テーマ3:本日講演内容の実現に向けたアクションの方向性・検討材料は?
(丸善)将来に向けての公共インフラにどう位置付けていくか。図書館象を示していくことはこれからできる。
(市長)「ちえなみき」のような“突然変異”がこれからひろがる。中身が空の「箱モノ」ではなく、「コンテンツ付き箱モノ」には価値がある。
こうして約2時間のシンポジウムを拝聴し、「ちえなみき」をベースにしたまちづくりへの期待、可能性を大いに感じるとともに、知のインフラによる雇用創出やメタバース・ムーブコアとの連動などの新たな視点、知識を得ることができ、大変有意義な時間となりました。
実際、私自身も気比史学会の「ミニ歴史講座」にて、ちえなみき2階のセミナー&スタディをお借りする際、特に休日は予約で埋まっており、大変盛況な市民利用を実感。
まさに市民の「普段使い」によって、コンセプトである「知の拠点」となっていることを、議員、利用者双方の立場から嬉しく思うところです。
結びに、シンポジウムの中で何度も出てきた「ちえなみき的な」発想や考え方は、まちづくりの様々な面で応用できることも併せ、「知のインフラ」の成長とともに、敦賀の発展ありと感じるとともに、そうしていかねばと感じた次第です。
(おまけでお誘い)
気比史学会では、3月23日(日)10時30分より、ちえなみき2階セミナー&スタディにて『ミニ歴史講座』を開催します。
楽しく敦賀の地域史を学んでいきたいと思いますので、お時間ある方はぜひお気軽にお越しください。
→「ちえなみき」HPのイベント開催情報(3月分)はこちらから。気になるジャンルがあればぜひ!