エネルギー危機の欧州から学ぶこと

エネルギー ブログ

ここ最近の曇天で助かっていることといえば電力需給ですが、先日は関西電力美浜発電所3号機が再稼働時期を前倒しするなど、「安定供給」の使命感のもと、電力各社は供給力確保に全力を挙げるところ。
 
九州電力の発表によると、2022年2月21日より第25回定期検査を実施していた川内原子力発電所2号機が、6月13日の発電再開後、徐々に出力を上昇させながら、各機器の機能を確認するための調整運転、最終検査である総合負荷性能検査を終え、通常運転に復帰したとのこと。
 
また、同じく2022年4月30日から第14回定期検査を実施してきた九州電力の玄海原子力発電所4号機は、原子炉停止中における所要の検査をほぼ終了し、7月10日に原子炉起動の後、13日には発電を再開し、現在徐々に出力を上昇させている状況にあります。
 
順調に進めば、8月上旬には総合負荷性能検査を実施し、通常運転に復帰する予定とのことであり、厳しい夏季の電力需給において、ベースロード電源が補完されることを頼もしく思うとともに、一日も早い「戦線復帰」に向けご尽力されている関係者の皆さんには、敬意と感謝を申し上げる次第です。
 
一方、世界に目を向けますと、主に再生可能エネルギーに偏重し過ぎた政策によってエネルギー危機に陥っている欧州ですが、ロシアの軍事侵攻以降、その危機が一層深刻さを増しているのは言うまでもないところ。
 
11日には、ロシアとドイツをつなぐ天然ガスの主要パイプライン「ノルドストリーム」が定期検査で供給が止まり、経済制裁やウクライナへの武器供与を理由に、ロシア側が検査終了後も供給停止を続ける恐れがあるとのこと。
 
ロシアからドイツに向けてはノルドストリームのほか2本のパイプラインがありますが、このうちポーランド経由は5月中旬に停止、ウクライナ経由も7分の1に供給量が落ちている中での停止であり、現にプーチン大統領は「制裁はエネルギー市場の破滅的な価格上昇につながり、欧州全体の家計に打撃を与える可能性がある」と述べていることからも、明らかな報復措置と受け止める次第です。
 
思えば、このノルドストリームの定期検査は昨年も夏でした。
 
普通考えれば、電力需給の高まる夏季を避けて検査する訳ですが、昨年欧州が大混乱に陥ったきっかけはノルドストリーム1の定検停止だったことを踏まえれば、明らかに「狙って」夏に定期検査をぶつけていると考えるところであり、冒頭に述べたよう欧州のエネルギー危機はいよいよ厳しくなるものと認識する次第です。
 

【ロシアから欧州へのガスパイプライン。図の1がノルドストリーム(1)】
 
振り返って日本。
 
欧州の状況を「対岸の火事」と見ている場合ではありません。
 
欧州がここまでの危機に陥った要因から大いに学ぶとともに、関西、九州の例から明らかな通り、この需給逼迫と迫るエネルギー危機を乗り越える鍵は原子力発電であり、この参院選で大勝した与党には、「原子力発電を最大限活用」と述べたことを速やかに行動でお見せいただくことをお願いする次第です。
 
「黄金の3年間」でやるべきことは山ほどあると思いますので。