廃止措置ビジネスも「誇り」をもって進むべし

ブログ 原子力


 
写真は、11月2日(水)・3日(木・祝)で開催された文部科学省主催の「つるが国際シンポジウム2022」に出展していた日本原子力発電株式会社(以下、日本原電)のブース。
 
ご紹介したいのは「私」ではなく、私が腰掛けている「クリアランスベンチ」です。
 
まず、「クリアランス」とは簡単に言えば、廃止措置などに移行した原子力施設から出る金属製などの廃棄物のうち、極めて放射能レベルが低く、人への影響が無視できる「放射性物質として扱う必要のないもの」について、法令等で規定された手続きに基づき、資源としてリサイクル可能な有価物(スクラップ金属等)や一般の廃棄物として取り扱えるようにすること。
 
このベンチの脚部は、日本原電東海発電所(1998年に運転を停止)の解体工事で発生した廃棄物のうち、クリアランス制度を経てリサイクルした鉄を用い製作されたものであることから「クリアランスベンチ」と呼んでいます。
 
前置きが長くなりましたが、今回のシンポジウムのサブタイトルは「~原子力発電所の廃止措置から芽生えるビジネスと豊かな暮らしを楽しむまちづくり~」であり、まさに、このクリアランス物の再利用拡大を始め、廃止措置ビジネスを通じた地域振興をテーマとしたもの。
 
私が参加した3日は、「福井県・嶺南地域の地元自治体の取組み」に関する紹介講演(敦賀市企画政策部も登壇)、「国内外の廃止措置ビジネスの課題と展望」や「豊かな暮らしを楽しむまちづくり」などのテーマについて、原子力業界や地元の方々、高校生が参加してのパネルディスカッション等が行われました。
 

【会場は福井県若狭湾エネルギー研究センター】
 
それぞれ拝聴する中から、私にとって多くの学びと気づきがありましたが、すべては書き切れませんので、印象に残ったことをふたつだけご紹介します。
 
ひとつ目は、福井南高校の女子生徒の言葉。
 
福井南高校といえば、2021年4月21日に日本原電よりクリアランスベンチの貸与を受け、その際「ベンチ設置は,原子力にまつわる議論がより身近に感じられ,対話の輪が一層広がるきっかけになると思います」と生徒代表が述べるなど、現在もなお関心高く、原子力発電をテーマに探求学習されている学校。
 
パネルディスカッションであった彼女の言葉は、「原子力のことを誇りに思うことが大事。そう思う人が少ないからクリアランスのことも知らない。(原子力が)福井県の自慢にならない限り、福井県の子ども達に広がっていくのは難しい」とあったうえで、「大人みたいなアプローチはできないが、高校生以下の子ども達にどう伝えるかを考え活動していきたい」とあり、真剣に取り組んでいるからこそのご意見と受け止めた次第。
 
また、同じくパネルディスカッションで、廃止措置ビジネスの「福井モデルへのご示唆」を問われた米国原子力廃止措置共同体事務局長のジェームスA.ハミルトン,P.Eは、明確に以下の点をアドバイス。
 
①長期、短期の目標を明確にすること。
②クリアランスはステップのひとつに過ぎないとの意識を持つこと。
③コンセプトの設定、規則も実務者で協議すること。
④ステークホルダーとのエンゲージメント。金属業界とも議論し、原子力の金属は優良であることを意識してもらうこと。
⑤まずはやりやすい部分から始めて、成功を重ねていくこと。
⑥誇りを持つこと。続けていけば注目され、信頼される。
 
既に実績を挙げている方の言葉は重みと説得力がありましたが、ここでも最後に「誇り」の言葉が出てきたことが印象に残りました。
 
これに、ご示唆を仰いだ県の嶺南Eコースト計画室室長は「全国初の取り組みであり、気概を持って取り組んでいく」とありましたが、まさにこの福井県嶺南地域で国、県、立地自治体が連携のもと進める「廃止措置ビジネス」をポジティブに捉え、住民の皆さんのご理解のもと前進させるべきと考える次第。
 
とりわけ、今後「西日本の原子力研究拠点」に位置づけられ、既に敦賀発電所1号機、ふげん、もんじゅと炉型の異なるプラントが廃止措置に移行している敦賀は、半世紀を経て、再びトップランナーとして新たな原子力の道を切り拓く役割があるのかと思うところ。
 
奇しくも先の9月定例会では、これに関連した和泉明議員の一般質問に対し、渕上市長は「あまり好ましくない施設」との答弁がありました。
 
クリアランス制度が担保する安全性などを鑑みれば、私には答弁の意図が分かり兼ねるものでしたが、首長のリーダーシップと手腕は今後どう発揮されるのか。
 
前述のとおり、沸騰水型、新型転換炉、高速増殖炉、この先は加圧水型と、これだけ異なる炉型を取り扱うとすれば、それこそ「世界初」のことと認識する次第であり、私自身は「誇り」と「ポジティブマインド」のもと、言動は厳に慎重せねばと肝に銘じつつ、今後の敦賀市の動向に「超」注視するものであります。