人権侵害問題に関する「骨抜き」の決議。毅然とした態度とは。

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昨日、思いの丈を記載しました元首相5人が欧州委員会に宛てた書簡の問題について、公の立場からは環境省から、彼等に対し抗議文が出されたところですが、昨日は国会でも。
 
昨日開かれた衆議院予算委員会で質問に立った、日本維新の会の足立康史議員は、この書簡を「福島への風評拡散」としたうえで、「内閣として立憲民主党の菅直人最高顧問に抗議すべき」と主張。
 
これに岸田総理は、「誤った情報を広め、謂れのない差別や偏見を助長する事が懸念されるもの。政府として風評払拭に取組む」と答弁。
 
さらに足立議員は「菅直人さんは現職の国会議員。抗議に回答を求めるようお願いする」と述べました。
 
委員会室に居た立憲民主党議員の一部は「ギャーギャー」と野次を飛ばす場面となりましたが、現時点で党内でも菅氏に対しお咎めなしということを見ると、立憲民主党としてこの行為を是としているのかと感じた次第。
 
私は、足立議員の発言は至極真っ当であり、福島県民、東北の皆さんの気持ちを踏みにじり、さらには我が国を貶めるこの行為許すまじの思いで、政府として厳しい態度で対応にあたっていただきたいと強く望む次第です。
 
さて、本日は国会の話題を続けますが、私自身も関心事として動向を注視していた中国・新疆ウイグル自治区などでの深刻な人権侵害問題に関する決議については、1日に衆議院で賛成多数により採択。
 
一時は、この決議の取り扱いすら不透明になったことを思えば、日本ウイグル国会議員連盟などの関係者が、対中人権侵害非難決議の実現へ向け奔走されたことの苦労の結果と認識するところですが、実際の決議には「中国」の文言は一切なく、誰に人権状況の説明責任を果たすよう求めたのかも明示していないほか、昨年末の与党調整で当初案の「人権侵害」が「人権状況」に書き換えられ、「非難決議」から「非難」の2文字が削除されたのもそのままとなっており、いわゆる「骨抜き」の内容となっているのが実態。
 
これに対し、与党側はあたかも「野党に配慮した」と述べていますが、賛成した野党や自民の中から不満の声が挙がっていることや、国民民主党などは党としての声明まで公表しており、実際には自民、公明両党の執行部が弾圧の張本人である中国政府に忖度した構図と理解するところです。
 

【当初の決議案から「骨抜き」(穏健表現に修正)となっていく過程(産経新聞ネット記事より引用)】
 
なお、この衆院本会議での採択を受けて、アジア自由民主連帯協議会や日本ウイグル協会、南モンゴルクリルタイ(世界南モンゴル会議)など6団体は2日、声明を発表し、「国会が、中国における人権弾圧およびジェノサイド(民族大量虐殺)に対し、一定の国家意志を示したことは歓迎する」としつつ、決議文について「新疆ウイグル自治区、チベット、南モンゴル、そして香港および中国民主化運動に対する弾圧の実情が、ほとんど反映されていない」と指摘しています。
 
さらに「ウイグルで行われている強制収容所政策、南モンゴルでの母語廃絶、チベットでの信仰弾圧などは、ジェノサイド政策の一環として批判すべきものであることは明瞭だ」と強調、「国会決議において、この点が指摘されていないことは、中国政府のジェノサイドを事実上看過することを意味しかねない」と訴えてもいて、当事者視点だとこう受け止められるのかと、改めてこの中途半端な決議文の意味合いを考える次第です。
 
この対応に関しては、いわゆる「大人の対応」という考えもあるやもしれませんが、私は、こと人権問題に関しては、北朝鮮拉致問題然り、大人もへったくれないとの考えである訳ですが、昨日、追悼の思いも込め、故石原慎太郎氏が国会議員時代に当時の安倍総理に質問した「永久保存」と称される2013年の予算委員会を※YouTubeで見ていましたら、まさに対中外交防衛に関し「毅然した態度」について質する場面がありました。
 
※当該YouTubeを以下にリンクします(「毅然とした態度」部分は40分15秒あたりから)
 →→→YouTube【永久保存】2013.02.12 衆議院予算委員会 石原慎太郎 日本維新の会
 
石原氏の言う「毅然」とは大きく乖離するのがこの今の日本の態度ということになる訳ですが、先の「中国政府のジェノサイドを事実上看過することを意味しかねない」との団体の訴えも念頭に置けば、日本人が得意な「曖昧」にお茶を濁すことは、相手をつけ上がらせるとともに、最も尊重せねばならない弾圧に苦しむ当事者の悲痛な思いまでをも踏みにじることになると認識するところです。
 
今後、ステージを参議院に移して議論されるこの決議ですが、その取扱いについては、そうした思いのもと引き続き関心をもって捉えていきたいと思います。
 
(参考)前述の国民民主党の声明。主語は「中国政府」となっていますので、参考までご覧ください。
 →→→国民民主党「新疆ウイグル等における深刻な人権状況に対する決議」に関する党声明