元首相5人衆の書簡こそまさに「科学が風評に負けるのは国辱」だ

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石原慎太郎死す。
 
享年89歳。
 
作家であり、元国会議員、元東京都知事でもある石原氏の、いかなる外圧に対しても決して屈することなく、信念を貫くその姿は、どこか日本国家の重石のような存在であると私自身感じていた次第であり、生前の計り知れないご功績に敬意を表するとともに心からご冥福をお祈りいたします。
 
数ある「石原語録」ですが、常々口にされていたのは日本国憲法前文への不満だったそう。
 
「『平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して…』は、正しくは『公正と信義を』で、『全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ…』は、『欠乏を免かれ』だ。助詞の間違いは日本語の文体を乱し、みにくい印象しか与えないんでね。国家の基本法を正しい日本語に直すことが自主、自立です」
 
何故こんな日本語なのかを思えば、それは即ちGHQから与えられた憲法であることを意味するものであり、石原氏の政治家人生は憲法を抜きにして語ることができないとも言われる根底にあるのは、そうした反骨精神から来る「真の自主憲法」であると考えるところ。
 
この点に関しては、「憲法改正」を見届けることなく逝った故人の無念を思いつつ、現代社会を生きる我々世代で成し遂げねばならぬことと、私自身胸に刻んだ次第です。
 
さて、国家の重石と称した石原氏の話しの後で述べるには失礼かとも思いますが、書かずにいられないのが、石原氏とは真反対の位置にいる、日本を貶めようとしているこのお方達の話し。
 
そのお方達とは、菅直人氏、小泉純一郎氏、鳩山由紀夫氏、細川護熙氏、村山富市氏の5人。
 
名前を見てお分かりの通り元首相経験者であり、その点は敬意を表し「氏」とだけはつけさせていただく訳ですが、この5人が1月27日付けで欧州連合(EU)欧州委員会に、欧州のエネルギー政策を脱原子力に舵を切るよう呼び掛ける書簡を送った問題。
 
さも日本を代表して脱原子力を唱えているかのように受け止められる問題もさることながら、さらに問題視すべきは「甲状腺がん」についての記述。
 
書簡では福島第1原子力発電所事故の影響に触れ「多くの子供たちが甲状腺がんに苦しみ、この過ちを欧州の皆さんに繰り返してほしくない」とある訳ですが、これに地元福島県の渡辺康平県議は新聞の取材に「科学的根拠に反するメッセージだ。日本の首相経験者という権威による『風評加害』のもとになる」と憤りの念を述べたほか、宮城の村井嘉浩県知事は定例会見で「科学的根拠に基づき情報を発信していくべきだ。首相経験者の影響力は大きい。なぜそのようなことをされるのか」と苦言を呈しています。
 
現に、放射線医科学の専門家などからなる国連放射線影響科学委員会(UNSCEAR)が3月に公表した福島第1原子力発電所事故を受けた住民の健康影響に関する2020年版の調査報告書は、福島県内で発症した甲状腺がんについて被曝が原因ではないとの見解を示していることに加え、福島県の県民健康調査の検討委員会も令和元年6月、事故当時18歳以下だった県内全ての子供を対象に実施した甲状腺検査の結果について「現時点において、甲状腺がんと放射線被ばくの関連は認められない」と報告しています。
 
なお、甲状腺がんには治療する必要のない「潜在がん」も多く、裏付けに乏しい中で原子力発電所事故と甲状腺がんを結びつけようとする元首相らの行動は風評被害を広げかねないと、福島県の関係者に反発が広がっていることは至極当然のこと。
 
甲状腺がんの過剰診断の問題などを取材する福島市のジャーナリスト、林智裕氏は「福島はこうした冤罪による偏見と差別に苦しめられてきた。なぜ海外に偏見と差別を広げるのか。福島の住民にどうプラスになるのか」と元首相らの言動を非難しており、私もこれに全くもって同感であります。
 
「理解に苦しむ」を通り越し、「科学を無視」し、他国にまでそのことを知らしめているその言動は、もはや福島県、東北のみならず日本を自ら貶めるものであり、「国賊」と言っても過言ではないと、私自身憤りを隠せない訳ですが、都知事4期目で迎えた東日本大震災対応ではいち早く被災地がれきの受け入れを表明した石原氏であったなら、これを何と言うのでしょうか。
 
都民からの反対意見が都庁に寄せられても「黙れといえばいい」と思いの丈が口をついて出たのはいけなかったかのかも知れませんが、この決断を契機に被災地がれきの広域受け入れが進んだのも事実。
 
福島第1原子力発電所事故の影響、つまりはがれきの放射線レベルを科学的に理解されていたからこそ決断できたこととも言えるのですが、書簡を宛てたこの5人衆とは真逆の位置にいることが、ここでも分かります。
 
「石原語録」のひとつに、東京都の築地市場から豊洲市場への移転問題を巡り、移転決定時に都知事だった同氏が述べた「(前略)科学が風評に負けるのは国辱だ」の言葉は痛烈に記憶に残っています。
 
この言葉を借りて言わせていただければ、5人衆のやっていることはまさに「科学が風評に負ける国辱」であり、裏を返せば「科学に基づかないデマの流布」に値すると考える次第です。
 
昨日、山口環境大臣から5人衆に対し、抗議文が送られたとのこと。
 
曲がりなりにも我が国のトップをお努めになられた方達がこのように自国を貶める言動をしているのでは、天国でも我が国の行く末が心配で心配でたまらないであろう石原氏の顔を思い浮かべる次第ですが、同氏が逝去されたこの日に改めて、「科学が風評に負けてはならない」との言葉、さらには「自主、自立の国家観」を胸に、自分自身の行動基準にすることを誓う次第です。
 

【国賊に喝を入れる石原慎太郎氏はもういない。代役を務められる人はいるのだろうか。】