【内容紹介】2020年エネルギーフォーラムin敦賀

エネルギー ブログ

本日は、プラザ萬象で開催されました「2020年エネルギーフォーラムin敦賀」を聴講。
 
コロナによる社会・環境変化、経済対策、そしてエネルギー政策について「現実的且つ冷静な視点」で述べられたものであり、是非皆さんにも知っていただきたいとの思いのもと、早速シェアをさせていただきます。
 
私のリアルタイムメモの全文掲載となりますが、お読み取りいただけますようお願いします。
 

 
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【2020年エネルギーフォーラムin敦賀】
 
1.日 時:令和2年11月7日(土) 14:00〜16;00
2.基調講演
(1)テーマ:経済情勢の行方とエネルギー問題 〜感染症と地球温暖化の関わりを考える〜
(2)講 師:岸 博幸 氏(慶應大学大学院教授)
(3)内 容:
・原子力は福井県嶺南地方の主力産業であり、日本にとっても益々重要となる電源。
・コロナ発生以降、実体経済は全然良くなっておらず厳しい状況が続いている。
・経済に関しては、コロナで落ち込んだ需要を早く取り戻すとの議論ばかりであるが、コロナ前もそれほど経済情勢は良くなかった。
・デフレは20年以上継続、人口減少などにより、経済の潜在成長率は1%を切っていて生産性も低く、何も解消していない。
・コロナは100年に一度の疫病であり、構造変化・社会の価値観の変化がこれから起こる。
・構造変化のひとつは「デジタル化」。これまで進めようとしても進まなかったリモートや在宅勤務、医療分野では初診から遠隔医療が可能となった。
・もうひとつは、人々の環境問題や社会問題への意識が高まると考えている。
・さらに、コロナで自分の生死に関わる健康の心配をした経験が脳の中に残ることから、生活環境への意識も変わる。
・日本でもディスタンス(距離を取る)が当たり前となってくる。
・渋滞学では、手を伸ばして隣の人が伸ばした手が当たらないのが、人間が快適に過ごせる距離とされている。
・この快適さを経験した社会は、あらゆる面で変化をすると考える。
・ヨーロッパは政策に関しては先進国。オランダの首都アムステルダムでは、復興戦略で経済成長を目指さない、地域住民のつながりを強め、環境を考えるレジリエント(柔軟性ある)都市にすると示している。
・日本においては、コロナで落ち込んだものを取り返すのは当然のこととして、色んなことを改革していくとしており、初めに具体論(携帯料金、デジタル庁)から入った菅政権の取り組みは個人的に評価している。
・過去に成功した政権は、具体論から入り政策を進化させたケースが多く、菅総理にはそのポテンシャルがある。河野大臣も改革の筆頭であり、条件は揃っているのではないか。
・短期的課題が多い中、ひとつだけ長期的課題を述べたのが所信表明演説の「2050年の温室効果ガス実質ゼロ」。
・ではこれで、今後のエネルギー政策や環境問題への対応はどう変わってくるか。
・おそらく現状で政府の中に現実的な考えはない。
・政府の成長戦略会議では極めて入口の議論しかされていない。
・答えはシンプルで、石炭はかなりドラスティックに減、天然ガスもある程度は減らさざるを得ない。現時点で再生可能エネルギーでは賄えないので、原子力が基幹電源として見直されるべきであり、菅総理もその重要性ことは頭にあると考えている。
・野心的目標であるからこそ、そう考える。
・原子力の再稼動を増やす、新増設に向けても良い流れにある。
・菅総理は世論の反発があってもやることはやる。
・分かりやすい例はデジタル化、ハンコを無くすことについて選挙の政策に入れようとした際、当時官房長官として菅さんは「反対」(世論・業界の反発を考慮)したが、総理になったら実施判断した。
・そうやって考えるとエネルギー政策も同じなのではないか。所信表明で原子力を入れたということは、2050年温室効果ガスゼロに必要だと思ったからであり、頑固な菅総理は踏ん切る気持ちがあると考えるのが自然。
・シッカリと言及された点については、非常に大きな意味合いを持つと勝手に考えている。
・福島事故以降、原子力は常にアゲインスト。批判ばかりであった世論がこれから変わるのではないかと期待している。ニュートラルに見て評価すべきは経済産業省の取り組み。例えば福島第一の処理水の問題に対して、非常に前向きに真摯に対応しているので、そう遠くはない時期に解決すると考える。
・高レベル放射性廃棄物の最終処分地の関係も然り、これまでにない動きが出てきている。エネ庁が真剣に取り組んでいる証拠。
・女川原子力発電所も再稼動の見通しが立ってきた。
・これらを考えるとプラスに働く要素が多く出始めており、良い方向と受け止めている。
・反対しているのは、立憲民主党や共産党。これが無くなることはないが、総理は決断していくであろう。
・日本経済の再生のためにはエネルギーコストを下げる必要があることや地方創生のためにはエネルギー産業が必要であることからすれば、そうした正論の声をなるべく多くの方から挙げていくことが重要。
・こうした問題は賛成派の方が冷静なので、声を挙げないケースが多い。基地問題と原子力問題は似ている。
・総理の野心的な目標を達成するためには原子力発電は必要不可欠であり、新増設の話しもどこかでしていくはず。こうした声を地道に挙げていかなければならない。
・「全力脱力タイムズ」に開始から5年間レギュラーで出演しているが、何だか分からない番組と言われながらもここに来て視聴率が良くなってきている。少し違うかもしれないが、地道に続けていれば良い方向に向かう。
・デフレの解消、生産性を上げる、コロナの中でそのことを改善していく大変さがあるが、3E+Sのエネルギー政策の当たり前の考え方は役割を果たす。
・原子力は地域経済に必要なことに加え、そのことが日本経済にも貢献していると立地の皆さんは考えて欲しい。
・地方を活性化する本質は、いかに産業を根付かせて雇用を増やしていくかであり、地域振興の観点からも原子力は必要。安定的稼働で、より長期的に役割を果たすことが出来る。長年の歴史は大きなアドバンテージである。
・批判に負ける必要はなく、この嶺南地域が日本を救うとの矜持を持って行動して欲しい。
・繰り返しになるが、野心的な目標を掲げた頑固な菅総理は、どんな手段を使ってでも必ずやり通す。即ち、原子力の重要性が見詰め直されることになる。
・これからの数年の大事な期間を逃して欲しくない。
 
3.質疑応答
質問)予算委員会の答弁では、「新増設やリプレースは現時点では考えていない」との答弁があったが、どう受け止めれば良いか。
回答)「現時点では」であり、将来的に可能性があるということで気にする必要はない。
質問)このままの再稼動ペースでは、2030年の原子力比率は達成出来ない。
回答)仰る通りで、このままでは無理。再稼動を進めることに加え、40年超え運転や新増設なども必要であり、現政権では前向きな議論が進むと期待している。
質問)日本原電敦賀2号の評価の仕方、志賀の活断層の問題についてはどうお考えか。
回答)菅総理は安倍政権以上のリアリストであり、再稼働を優先するのは当然。規制庁の審査に関しては、否定しても仕方ないが、現実的に対応いただくしかない。世論、風向きが変われば、時間は掛かるかもしれないが、良い方向に変わってくると思う。
質問)世界の原子力の潮流と高レベル放射性廃棄物の問題がクリアされれば、新増設やリプレースなどの動きが出てくるのか。
回答)再生可能エネルギーの良いところだけがPRされているが、負の面もある。再エネ比率拡大の潮流はやむを得ないが、原子力は否定、再エネは良とする報道が続く以上、地道に対応していくしかない。
質問)ウランの資源量が100年で枯渇する実態がある一方、高速増殖炉や新型原子力発電の技術についてはどう考えるか。
回答)新型炉はエネ庁が頑張っているのは知っている。各国とも協力のうえ進められるものと受け止めている。資源の量に関しては、石炭も同じように言われてあまり変わっていないので、もう少し慎重に取り扱うべきかと考える。
質問)アメリカ大統領選挙の結果の影響は。
回答)間違いなくバイデンが勝つと思うが、そうするとパリ協定にも復帰するであろう。そうすると環境を意識した施策が進むので、日本はそれに向けて準備していく必要がある。
質問)教育の面で、若い世代は将来へのエネルギー確保に向け、原子力が必要と考える傾向もあると認識している。是非、小中学校からエネルギー教育を行うべきではないか。
回答)教育は変えていかないといけないことが非常に多いと感じている。最近の傾向を見ると、世の中のために何がやりたいと考える人が増えているようであり、社会問題・環境問題がクローズアップされてくることを考えると、それに関連づけた形で、伝わるようにしていかなければと考えている。役所は分かりやすく工夫する余地がある。地域の方も後世に伝える役割を担っていただければと思う。これまでの「問題解決型」の人材育成ではなく、これからは「問題を発見出来る」人材の育成が重要だと考える。
 
以 上