40年運転制限に「明確な科学的根拠なし」

ブログ 原子力

昨晩は、若狭町レピアホールで開催された連合福井嶺南地域協議会の幹事会において、来春の統一地方選挙に向けた推薦手続きが行われ、私に対して満場一致で推薦決定をいただきました。
 
挨拶では、連合が掲げる「働く者を軸とする安心社会の実現」を基本理念としつつ、職場と地域の声を活動の原点とし、引き続き取組むことをお約束した次第ですが、職域の代表であるとの責任を忘るることなく、何を置いても残る任期を精一杯全うすることに傾注したいと思います。
 
さて、この幹事会の場には嶺南地域で働く原子力職場の方も複数おられた訳ですが、昨22日はちょうど、総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会が開かれ、8月の「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」で西村経済産業相が示した「日本のエネルギーの安定供給の再構築」を踏まえた原子力政策に関する今後の検討事項が協議されたところ。
 
ここで協議される検討事項とは大きく以下4点。
 
①再稼働への関係者の総力結集
②運転期間の延長など、既設原子力発電所の最大活用
③次世代革新炉の開発・建設
④再処理・廃炉・最終処分のプロセス加速化
 
このうち、②の運転期間延長に関しては、経産省から改めて「40年運転制限」に係る経緯や従来の考え方について説明があり、まず経緯に関しては、原子炉等規制法の改正時の国会審議において、政府及び法案提案者から、以下のような認識が示されていること。
 
①40年という期間は1つの目安であり、明確な科学的な根拠はない
②運転期間に係る規定を含めた安全規制のあり方については、原子力規制委員会の発足後、専門的な観点から検討されるべき
 
また、長期運転に係る従来の検討方針については、令和3年10月に閣議決定された「第6次エネルギー基本計画」において、「東日本大震災後に原子力発電所の停止期間が⻑期化していることを踏まえ、安全性を確保しつつ⻑期運転を進めていく上での諸課題について、官⺠それぞれの役割に応じ検討すること」とされています。
 
つまりは、設置当初から「不変のルール」でないとのニュアンスを含んだものであったことがお分かりいただけるかと思います。
 
こうした前提を踏まえ、杉本達治委員(福井県知事)は、原子力発電所の運転期間延長に関し、「科学的・技術的な根拠をもとに、規制当局も含め十分に議論すべき」と述べたほか、朝野賢司委員(電力中央研究所社会経済研究所副研究参事)は、「革新炉の商用運転には相当の期間を要する」ことから、国際エネルギー機関(IEA)による勧告も踏まえ、運転期間の延長に係る意思決定を第一に据え、既に建設が進められているプラントの運転開始、新増設・リプレースと、時間軸を考慮した進め方を提唱しました。
 
こうした議論も踏まえ、運転期間の延長に関しては、資源エネルギー庁が今世紀末頃までを見据えた原子力発電所の設備容量の見通しを図示。
 
60年間までの運転期間を想定しても、このままでは設備容量が2045年以降、急激に減少し、2090年にはゼロとなる見通しであり、こうした現状を踏まえ、安全性最優先を大前提とした原子力利用政策の観点から、運転期間など、規制面の制度のあり方に関して、原子力規制委員会に対しコミュニケーションを図っていく方向性が示されました。
 
こうした課題は、「40年運転制限」が定められた当初から分かっていたことであり、私からするとこうした議論が「ようやく」されると思わざるを得ない訳ですが、それでも建設的な議論を迎えたこと自体、歓迎するところ。
 
今後は、本来、個々のプラントごとに評価されるべき原子力発電所の長期運転に向け、「明確な科学的根拠」をもって議論が進められ、国の責任において判断がされることを切に期待する次第です。
 

【原子力発電所の設備容量見通し。青が40年、緑が60年制限。(資源エネルギー庁発表資料より引用)】