中部電力浜岡原子力発電所の『新規制基準適合性審査における基準地震動策定に係る不適切事案』について

ブログ 原子力

「絶対に忘れてはいけないこと」であり、「忘れられないこと」の一つ。
 
今から28年前の平成10(1988)年10月に発覚した『使用済燃料輸送用キャスクの中性子遮へい材データ改ざん問題』。
 
関係者の間では『原工(げんこう)キャスク問題』と呼ばれ、日本原子力発電株式会社(以下、原電)の子会社であった原電工事株式会社(以下、原工)が、原子力発電所の使用済燃料を運ぶ専用容器(輸送キャスク)を安全に運ぶため、外側に詰められている「中性子」を遮断するための樹脂製の遮へい材を製造・施工した際、検査において国の規定値(仕様)を満たすよう、数値を書き換えて記録(改ざん)したという不正問題。
 
これは、原子力発電に係る事業者としてあってはならないことであり、原子燃料サイクル事業,原子力発電事業に与えた影響が大きいことに鑑み,原電自らの問題として真摯に受け止め、事実関係の早期解明、科学技術庁に設置された調査検討委員会の検討への積極的協力、品質保証体制の見直しなどに取り組むとともに、原工と一体になって、一日も早い社会的信頼の回復に向けて、全力を挙げて取り組むとしたもの。
 
その後は、原因の分析と対策の立案、キャスクの安全性評価・分析、品質保証体制の見直しなど、様々な対応がされ、事態は収束したものの、結果して原工の社名は無くなり、同じ子会社の原電事業(後に原電エンジニアリングに社名変更)に吸収合併。
 
当時、社名が無くなるタイミングで開催された原工組合員に対する労組の説明会に、労働組合(原電労組)の役員をしていた私も同席した際、涙ながらに話す委員長の姿は今でも鮮明に浮かぶところであり、一つの誤った行為によって社会からの信頼を大きく失い、一つの会社を無くしてしまうことになるものと胸に刻んだことを思い返す次第です。
 
あわせて、月日の経過とともにこの問題を風化させることは決してあってはならず、今後も原電グループ全体で、この教訓を繰り返し認識することが必要不可欠と思うところ。
 
唐突に、なぜそうした過去を書いたのかといえば、大きく報道されている中部電力浜岡原子力発電所の問題と重なったから。
 
中部電力においては、以前に発覚した、浜岡原子力発電所3号機、4号機の地震動評価における代表波選定が、審査会合による説明内容と異なる方法や意図的な方法で実施されていた疑いがあることが確認された、いわゆる『新規制基準適合性審査における基準地震動策定に係る不適切事案』について、再稼働に向けた審査を中断。
 
以降、中部電力が設置した外部の専門家による調査委員会が事実関係などを調べてきましたが、昨日11日、調査委員会から報告書を受け取ったと発表しました。
 

【浜岡原子力発電所全景(原子力規制委員会ホームページより引用)】
 
これを受け、中部電力が、同発電所両号機における審査の申請を取り下げる方向で最終調整していることが関係者への取材で分かったとのこと。
 
申請の取り下げは、廃止措置を前提にしたものではないとあるものの、近く正式に決定した上で、規制委員会に届け出る見通しとあり、これまで再稼働を目指して10年以上にわたり審査への対応などを続けてきたことが、振り出しに戻ることとなります。
 
前述の事案を間近に経験した立場として、キャスク問題と同様、原子力発電に係る事業者としてあってはならないことであり、「極めて残念でならない」の言葉しかありません。
 
現時点でこれ以上申し上げる立場でも、申し上げることもありませんので、まずは、14日に社長らが出席して開くとする記者会見に注視する所存です。