請願第2号『日本政府に「核兵器禁止条約」への賛同と批准を求める意見書の提出に関する請願』に対する討論全文

ブログ 敦賀市議会

令和2年9月定例会最終日に行いました、請願第2号『日本政府に「核兵器禁止条約」への賛同と批准を求める意見書の提出に関する請願』に対する、私の討論内容(全文)をご紹介いたします。
 
請願者は「原水爆禁止国民平和大行進・世界大会福井県実行委員会」、紹介議員は、日本共産党敦賀市会議員団の2名。
 
請願の趣旨は、①核兵器廃絶・核兵器のない世界を実現するためには、唯一戦争被爆国である日本政府が、率先して核兵器禁止条約に参加し、その先頭に立つべきではないか、②アメリカの「核の傘」からの離脱を決断し、核兵器禁止条約への賛同と批准の手続きを進めるべきではないかというものです。
 
私は、核兵器のない世界平和を希求する立場のもと、この「核兵器禁止条約」の存在や参加すること自体を否定するものではありませんが、核兵器のない世界を実現するための現実的なプロセスとして、本請願趣旨には賛同できないとの思いから、「ふたつの現実」の論点により討論させていただきました。
 
もちろん、私の考えを押し付けるものではございませんが、日本国民にとって大変重要なテーマにつき、是非皆さんにも考えの一つとしてお知りいただきたく。
 
参考まで討論原稿の全文を掲載しますので宜しければご覧ください。
 
【以下、原案に反対する立場での「やまたけ」の討論全文です】
 
市民クラブの山本たけしです。
 
私は、請願第2号『日本政府に「核兵器禁止条約」への賛同と批准を求める意見書の提出に関する請願』を不採択とする委員長報告に賛成の立場から討論を行います。
 
まず私は、世界唯一の被曝国である我が国の立場として、核兵器のない世界の実現を訴え続けてこられた被爆者の方々や被爆地の努力に対し心より敬意を表するとともに、私自身、核兵器のない世界平和を切に希求するものであります。
 
そのうえで、本請願にある、「核兵器禁止条約」に日本が率先して参加をし、条約不参加を表明している核保有国などを説得することが日本政府の役割ではないか、またアメリカの「核の傘」から離脱を決断し、核兵器禁止条約への賛同と批准の手続きを核兵器国に求めるべきではないかという2点の趣旨に関しては、「ふたつの現実」、すなわち目的を達成すための「現実的なアプローチ」、そして「現実的な国家安全保障」の観点において賛同出来ない大きな理由があると考えます。
 
ひとつめの「目的達成に向けた現実的なアプローチ」に関して、我が国には、唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界の実現に向け国際社会の取組をリードしていく責務があるとの決意のもと、日本政府は今から50年前の1970年2月に「核兵器の不拡散に関する条約」(NPT:1968年7月1日に署名開放、70年3月5日発効)に署名、1976年6月に批准をして以降、米、露、英、仏、中の5か国を「核兵器国」と定め、「核兵器国」以外への核兵器の拡散を防止する「核不拡散」、各締約国が誠実に核軍縮交渉を行う義務を規定した「核軍縮」、そして締約国の「原子力の平和利用」を「奪い得ない権利」とする3本柱の規定について先導的立場としての役割を果たしてきています。
 
なお、このNPTの締約国は2020年1月現在、核兵器国、非核兵器国を合わせ191か国・地域となっています。
 
また、今ほどの(日本共産党敦賀市会議員団の)討論では、日本は橋渡しとしての役割並びに外交努力をしていないとありましたが、我が国においては核兵器のない世界の実現のため、日本と核兵器国の軍事有識者などが協議を行う「核軍縮の実質的な進展のための賢人会議」、国連総会への核兵器廃絶に向けた決議の提出、軍縮・不拡散イニシアティブ(いわゆるNPDI)の枠組みや個別の協議等を通じ,核兵器国と非核兵器国の間の橋渡しに努めつつ,核兵器不拡散条約(NPT)体制の維持・強化や包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効促進,核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の交渉開始といった、核兵器国も参加する現実的かつ実践的な取組を積み重ねています。
 
とりわけ、2010年に日本とオーストラリアが主導して立ち上げた地域横断的な非核兵器国のグループであるNPDI(12か国で構成)は、メンバー国の外相クラスによる関与の下、現実的かつ実践的な提案を通じ、核兵器国と非核兵器国の橋渡しの役割を果たし、核軍縮・不拡散分野での国際社会の取組を主導しているほか、国連においては1994年以降、全面的な核廃絶に向けた具体的かつ実践的な措置を盛り込んだ決議案を国連総会に提出してきており、2019年の決議案においては、同年11月の国連総会第一委員会で148か国、12月の国連総会本会議では160か国の幅広い支持を得て採択されたところであります。
 
こういった着実且つ実効性ある取り組みを進めつつ、日本政府としての実行プロセスと「核兵器禁止条約」に対する明確な意思表示については、平成29年5月にウィーンで開催された2020年NPT運用検討会議第1回準備委員会において、当時の岸田文雄外務大臣が次のように述べています。
 
「核兵器国・非核兵器国の間の信頼関係を再構築しつつ、CTBTの早期発効やFMCTの早期交渉開始を実現し、核兵器の質的・量的向上の制限をかけ、国際的に信頼できる検証体制の構築に向け努力を傾注しつつ、核兵器の数を着実に減らしていく。こうして極めて低い数まで削減された「最小限ポイント」に達した段階で、核兵器のない世界の達成及び維持のための法的枠組みを導入することにより、核兵器のない世界という目標にたどり着く。これが日本の考える核兵器のない世界への道筋であり、核兵器禁止条約を現下の状況で持ち出して、核兵器国と非核兵器国の対立を一層深刻化させるのではなく、このアプローチこそが現実的で実践的な核兵器のない世界への近道だと確信する。核兵器を廃絶する法的枠組を持ち出すタイミングを間違えてはなりません。」
 
つまりは、核兵器のない世界に向けては、核兵器国と核兵器国の間はもとより、核兵器国と非核兵器国の間、さらに非核兵器国と非核兵器国の間、いずれの関係性においても顕著な対立構造があってはならず、いかなる関係性のもとにおいても信頼関係を構築しつつ、核兵器を提言したうえで機を捉え法的枠組を講じていくことこそが目的の達成に向けた現実的なプロセスと考える訳であり、私はこうした現日本政府の考えに賛同するとともに、請願にあるような、わが国のこれまでの取り組みを評価することなく、法的措置により強制力を持たせる核兵器禁止条約に参加することのみをもって廃絶の実現に向けた道筋だとする趣旨には賛同できません。
 
次にふたつ目の「現実的な国家安全保障」に関しては、核の惨禍を二度と繰り返さないための最も確かな保証が核兵器のない世界を実現することである一方で、そこに至る道のりの途中においても核兵器の使用はあってはなりません。つまり、諸国間の関係を不安定なものにして、逆に核兵器の使用の危険性が高まるようなことになってはならず、核軍縮は諸国間の安定的な関係の下で進められる必要があると考えます。
 
現実的に、令和2年度防衛白書においては、国際情勢が劇的に変化し、北朝鮮による度重なる弾道ミサイル発射、中国による尖閣諸島など一方的な現状変更の試みの執拗な継続、あるいは中国・ロシア軍機を対象とした自衛隊のスクランブル発進回数は、2019年度では947回に及ぶなど、わが国を取り巻く安全保障環境は急激に不確実性を増している状況にある中、日米同盟を基軸とする米国をはじめとした諸外国との間における防衛協力なくして、わが国の安全保障は成り立たないことからすれば、請願趣旨にある米国の「核の傘」から離脱すべきとの主張は、わが国の領土と国民の生命と財産を他国からの脅威に晒すことに直結するばかりか、現在の国際社会が保っている安全保障上のバランスを崩すことになり、逆に不安定な状況をつくり出してしまうことは、核兵器使用のリスクが高まるばかりか、核廃絶への道筋も大きく遠ざかるものであると考え、全くもって賛同出来るものではありません。
 
このような考えから、請願にある項目に反対するものであります。
 
以上、本請願に対する私の考えを申し上げ、本請願を不採択とする委員長報告に賛成の立場での討論といたします。
議員各位のご賛同を宜しくお願いいたします。
 
以 上
 

【世界の核弾頭保有数】
 

【請願第2号の全文です(次頁の意見書案は割愛しています)】