若き力とクリアランスベンチ

ブログ 原子力

連日、原子力の話題が続きますが、杉本福井県知事は梶山経済産業大臣との面談を終え、今日にも美浜発電所3号機並びに高浜発電所1、2号機の40年超運転の判断をする方向。
 
再稼働に同意すれば、福島第一原子力発電所の事故後に出来た「40年運転ルール」の下では国内初の判断になるということで全国的にも注目が集まるところですが、福井県議会2月定例会での議論から続き、十分な検討プロセスを経た結果として、冷静に見守りたいと思います。
 
これとは別に、昨日の福井新聞朝刊には、県内の原子力発電所4市町で構成する県原子力発電所所在市町協議会(立地協)及び全国の原子力発電が立地する市町村で構成する全国原子力発電所所在市町村協議会(全原協)が、経済産業省などに対し、国のエネルギー政策の指針となる次期「第6次エネルギー基本計画」の見直しに際し、原子力発電の将来のあり方を明確化することや新増設やリプレースを含め、国策としての原子力発電の必要性について、国が前面に立って国民に発信すべきなどを求めたとの記事が掲載されていました。
 
立地協、全原協ともに、要請された内容は、少資源国の我が国における現実的なエネルギーの選択という観点からも至極真っ当なものであり、私自身の考え方とも合致する大変心強いものであると受け止める次第であります。
 
全原協の会長は、敦賀市長が脈々と歴任されており、今回の梶山経産相に対する要請も渕上敦賀市長から力強く行われたことを誇らしくも思うところですが、今回特に感じたのは、国民理解の視点から「原子力を含めたエネルギー政策を学校教育の現場で取り上げるなど取り組みの強化」を項目の一つとして求めているところ。
 
まさに私も、議会での提言の機を伺っていたほど、全く同じ考えのものであり、大いに共感し賛同するものであります。
 
これらを含め、要請された内容はいずれも非常に重要な事項ばかりであることから、国は真摯に受け止め、それぞれ具体的に施策に盛り込み、実行に移していただきたいと強く思うところです。
 
さて、原子力発電と学校教育という切り口で言えば、最近ひとつ嬉しいニュースを耳にしたところ。
 
日本原子力発電株式会社(日本原電)東海発電所(1998年に運転を停止)の解体工事で発生した廃棄物のうち、放射性廃棄物として扱う必要がないものを再利用して作られた「クリアランスベンチ」を福井南高校(福井市)に貸与、設置したとのこと。
 

【日本原電から福井南高校に貸与された際の様子(2021年4月25日の日刊県民福井記事より引用)】
 
「クリアランス」といっても馴染みが薄いと思いますので、若干解説するところですが、端的に以下のパネルをご覧ください。
 

【日本原電作成の説明パネル】

【クリアランス制度の評価の流れ(原子力規制委員会ホームページより)】
 
要するに、廃止措置などに移行した原子力施設から出る金属製などの廃棄物のうち、極めて放射能レベルが低いものを、原子力規制委員会の厳格な確認を経たうえでリサイクルするというもので、貸与されたベンチは、そうして作成されたものということになります。
 
記事によると、福井南高校で原子力発電に関する学習に力を入れていることを知った日本原電が、ベンチを通し、学びを深めるきっかけにして欲しいとの思いを込めて貸与したとあり、貸与にあたっては日本原電の敦賀事業本部よりご挨拶と説明、生徒さんからは感謝の言葉が伝えられたとありました。
 
決して押し付けではなく、こうして自主的に学ぶところに事業者がサポートしていくという、まさに理想系がここにあると思うところであり、先の全原協の要請事項ではありませんが、こうした取り組みを仕組み化していければと考える次第。
 
福井南高校のホームページには、この事例を以下のように記事掲載しており、この言葉からも熱心に取り組まれている様子がヒシヒシと伝わってきますので、全文掲載させていただきます。
 
(以下、福井南高校ホームページより)
本校では高レベル放射性廃棄物の処理をめぐる問題を全校挙げて学習しています。今年2月には探究授業「今・未来・デザイン」を実施したほか,この企画に当初から関わっている今泉友里さん(2年)はその後も自主的に自治体や市民活動に携わる方々への取材・探究活動を行っています。これらの新聞記事がきっかけでこの度,日本原子力発電株式会社様よりクリアランス制度* を利用したリサイクルベンチの設置依頼をいただきました。
 
4月21日(水)には日本原子力発電株式会社 立地・地域共生部の中村又司様ら3名が来校。中村様より全校生徒,教職員へクリアランス制度やカーボンニュートラル,エネルギーミックスのあり方について説明をいただきました。この日より新型コロナウイルス感染拡大防止のため3年生は自宅からオンラインで参加,1年生は教室からの配信参加となりましたが,皆メモをとるなど熱心に聞いていました。説明後には,この問題に取り組んでいる今泉さんが日本原電の担当者らへ「ベンチ設置は,原子力にまつわる議論がより身近に感じられ,対話の輪が一層広がるきっかけになると思います」と生徒を代表してお礼を述べました。
 
このクリアランスベンチは経済産業省や文部科学省,原子力発電所内部や原子力に関わる学術機関を中心に設置されていますが,高校に設置されるのは全国初。日本原子力発電株式会社の担当者は,誰でも触れられるオープンな場所に設置することで今後は広くクリアランス制度について国民に周知,再考してもらうきっかけになればと話していました。
 
なお,このベンチは1階ロビーへ設置しています。来校の際にはぜひパネルとともにご覧になってください。
 
 →→→福井南高校ホームページはこちらから
 
40年超運転が国内初であれば、このクリアランスベンチが高校に設置されるのも全国初。
 
国内初の商業用原子力発電である日本原電の敦賀発電所1号機の運転開始から半世紀を経て、原子力発電の理解活動に対しても先進的に取り組む福井県を、これまた誇りに思うところであります。
 
いずれにしても、原子力発電に対しては、賛成か反対の二項対立構図をいつまでも続けていてはいけないと思うところであり、国際的なエネルギー獲得競争環境の中にあって、日本のエネルギー政策は、あらゆるエネルギー源をミックスしていかなければ立ち行かず、原子力発電はそのリソースのひとつであることを、少しでも多くの方にご理解いただく必要があるのだと思います。
 
そうした観点からも、クリアランスベンチを通じ、若い皆さんに原子力発電を身近に感じていただけたのであれば、大いに意義のあること。
 
私自身、こうした取り組みに汗をかいていきたいと思いますし、このブログをお読みいただいた方でもし、役所や学校など公的施設、会社などに置くことを検討したいというご意向がございましたら、ご遠慮なくお声掛けいただけますよう宜しくお願いいたします。