「NO」と言える日本。COP26石炭火力発電廃止に合意せず。

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「◯○賞」受賞というと大抵はおめでたいものですが、何とも違和感を覚えるものもある訳であり。
 
英グラスゴーで開催されている国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)において、環境NGOの国際ネットワーク「気候行動ネットワーク」が2日、「本日の化石賞(Fossil of the Day Award)」を日本に贈りました。
 
この「化石賞」とは、気候変動交渉・対策の足を引っ張った?国を毎日選出して贈られるもので、問題に対する批判と、改善への期待の意味が込められているとされ、この日は日本の他にノルウェー、オーストラリアがとともに「本日の化石賞」を受賞しました。
 
受賞の理由は、同日に岸田首相が首脳級イベントにおいて行ったスピーチにおいて、化石燃料の火力発電を推進していることにあるとしており、今回のCOP26では、とりわけ脱石炭が求められているにもかかわらず、日本が2030年以降も、そして2050年に向けて石炭火力発電を使い続けるという点が批判されているようであります。
 
さらに、アンモニア・水素を使った火力発電を「ゼロエミッション火力」として盲信していると批判されています。
 

【日本に送られた「化石賞」(NGO気候行動ネットワークHPより)】
 
またCOP26においては、石炭火力廃止声明も合意されていますが、これにも日本政府は加わっておらず、萩生田経産相はその理由について、「単一の完璧なエネルギー源がない現状では、多様なエネルギー源をバランスよく活用することが重要。そのため日本は声明に賛同していない」と述べています
 
これまでであれば、長いものには巻かれるように、本意でなくとも合意したであろう日本が、こうして自国のエネルギー事情をベースに国際社会に「NO」を主張したことを私は大いに評価をするところです(中印米豪などの石炭大量消費国も賛同してませんが)。
 
現に、石炭火力に関しては、経済産業省資源エネルギー庁が発行している「エネルギー白書2021」においても、2019年時点で供給割合が最も大きなものがLNGで37.1%、その他、石炭と石油を合わせた火力発電で75.7%を占めているとあり、2015年度から原子力発電所の再稼働が始まったことで減少しているとはいえ、石炭火力が占める2019年度の発電量は全体の25.3%となっています
 

【一次エネルギー国内供給の推移(エネルギー白書2021より)】
 
ちなみに、国際社会に目を向けると、COP26の開催国で、日本と同じ島国の英国においては、ここのところ風が弱く風力の発電量が不足。
 
石炭火力頼みで綱渡りの電力供給が続いているほか、2024年夏には石炭火力を廃止するとしてはいるものの、本当にこのまま突き進むべきか、電気代高騰や停電頻発が起きるのではないかとの懸念もあり、与党保守党内でも異論が噴出している状況にあります。
 
なお、そもそもの石炭消費量で言えば、2019年の国別シェアを見ると、中国の消費量は38億1879万トンで、中国だけで世界全体の半分を消費しています。
 
中国の石炭消費量は、2000年代に入って急速に増加し、2013年には40億トンを超え、その後大気汚染対策により2016年まで減少しましたが、2018年(前年比2.0%増)、2019年(前年比1.0%増)に再び増加しました。
 
また中国とインド(総消費量の12.9%)で世界の石炭消費量の62.9%を占め、米国、ロシア、日本を含む上位5カ国で世界の石炭消費量の75.1%を占めているものの、「化石賞」を受賞した日本の2019年の石炭消費量は1億8,571万トンで世界第5位ですが、全体に占める割合は「2.4%」となっています。
 
つまりは、どの国が大きな影響を持つのかは言わずもがなですが、その国自体も先の石炭火力廃止に参加しない中では、日本のスタンスのみを批判される筋合いはないものと考えます。
 

【世界の石炭消費量の推移(エネルギー白書2021より)】
 
こうした日本国内のエネルギー事情、世界の状況を冷静に見るに、ここでの日本政府の対応は極めて真っ当なものと考える次第です。
 
環境団体がこうした「賞」の名のもと批判するのも勝手、日本国内でも「温暖化対策に貢献していない」などと自国を貶めるかの報道をするのも結構ですが、日本の石炭火力は高効率で、しかも高いレベルで環境対策も講じられていて、このような技術を途上国や他の国に導入するよう働き掛けていることへの貢献度や、そもそも25%を占める石炭火力の代わりを確実に何の電源で賄うのかについて具体的に示唆している団体、報道機関は皆無であり、これでは「無責任」としか言いようがありません
 
※釈迦に説法ですが、先の英国でありませんが、太陽光や風力などを増やせば増やすほどバックアップの電源が必要となります。
 
佳境に入りつつあるCOP26。
 
繰り返しとなりますが、気候変動、脱炭素とは叫びつつ、自国の電力供給をいかに安定安価で行うかを睨む中での国際交渉であることは明白であることから、日本政府においては是非、国内外世論や圧力に屈することなく、前述にあるよう毅然と「NOと言える」国であって欲しいと切に期待する次第です。