見上げるだけの偵察用気球

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「中国挑発 荒れる南シナ海」との記事に目をやると、南シナ海のスプラトリー諸島のアユンギン礁付近で、フィリピン海軍への補給任務中だった巡視船が6日、中国海警局の艦船からレーザー照射を受けたとのこと。
 
フィリピン沿岸警備隊の発表によれば、乗組員の目が一時的に見えなくなったほか、危険な操船があったとして、警備隊は「主権の明らかな侵害」と非難したのに対し、中国外務省の汪文斌(おう・ぶんひん)報道官は13日の記者会見で、「フィリピン船が中国側の許可を得ずに仁愛礁海域に無断で侵入した」と主張しています。
 
なお、アユンギン礁はフィリピンの排他的経済水域(EEZ)内であり、これまでの尖閣諸島周辺における行動を見ても明らかな通り、台湾との関係も睨んだ「中国の挑発行為」と認識するものです。
 

【6日に中国艦船が照射した緑色のレーザー(フィリピン沿岸警備隊提供・共同通信)】
 
また、米中間で応酬が続く、米軍戦闘機が今月4日に撃墜した中国の偵察用気球については、中国側が「気象研究用」と主張する一方、米政府は「人民解放軍による世界規模の偵察計画」と断定し、米議会や同盟諸国に説明する状況となっています。
 
そうしたなか、今度は日本。
 
防衛省は14日、過去に日本の領空で気球型の飛行物体が確認された事案3件(鹿児島県薩摩川内市、仙台市、青森県八戸市の上空)について、分析の結果、中国が飛行させた無人偵察用気球であると強く推定されると発表しました。
 
偵察用気球だった場合は領空侵犯に該当するとして、外交ルートを通じて中国政府に事実関係の確認を求めるとともに、領空侵犯は断じて受け入れられないと申し入れたとのこと。
 

【令和2年6月、仙台市の上空で目撃された白い球体(産経新聞より)】
 
問題はここで、気球の飛来が領空侵犯に当たると判断すれば、自衛隊法に基づき自衛隊機が緊急発進(スクランブル)して対処するほか、撃墜に関しては浜田防衛相が「可能で、必要なら実施する」と述べていますが、武器使用のハードルの高さや技術的な問題から実際には難しいとの見方がされています。
 
※上記の太字部分は、投稿後修正
 
敵基地攻撃能力以前に、悠々と領空上を偵察する気球を黙って見ているしかない現状に危機感を覚えると同時に、「自分の国は自分で守る」の当たり前の考えに基づき、国家防衛もやはり現実論で見直すべきとの思いを強める次第です。
 
最後に、レーザー照射を受けたフィリピン沿岸警備隊が出した声明は、「中国の艦船が海上で攻撃的な行動を取っても、領土を守るため、プレゼンスを維持し主権を主張する」。
 
同じ覚悟を持って任務にあたる、日本の自衛隊、海上保安庁の皆さんには敬意と感謝しかありません。