福井県知事が「議論に入る前提はクリア」との認識を示す

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13日夜半に福島県沖を震源として発生した地震の被害は、東北・関東地方にて150人を超える負傷者を出したものの、いずれも命に別条はないとの報告であり、ひとまず安堵しました。
 
ライフラインに関しては、一部断水が続いているようですが、東北・関東エリアで生じていた最大約86万軒の停電に関しては、管内火力発電所の緊急稼働等も含め、翌14日9時までに全て解消。
 
余震の恐れがある中においても、早期復旧に向け献身的に作業にあたられた電力マンの皆さんに敬意を表するところであります。
 
交通機関においては、東北新幹線が全線の点検作業のため運転再開には10日以上を要すことから、秋田ー東京間の飛行機なども増便するようでありますが、ここはやはり安全を第一に、エリアの各交通機関が協力をしての対応をお願いしたいところです。
 
さて、今回の震度6強の地震に際し、原子力施設に関しては原子力規制委員会が既に「特段の異常なし」と報告しているところでありますが、その原子力に関し、福井県においてはこの週末大きな動きがありました。
 
関西電力が保有する原子力発電所のうち、運転開始から40年超えて運転を目指す3基について、高浜発電所1、2号機に関しては以前に野瀬高浜町長が町としての判断を杉本福井県知事に報告され、その際、知事からは「町の考えを伺ったに留める」と受け止められていたところ。
 
これに続き、美浜町の戸嶋町長は12日に、同じく40年を超える美浜発電所3号機の再稼働を巡り、梶山経済産業大臣とのオンライン面談後に、週明けに同意を表明するとの考えを明らかにしました。
 

【荒波の奥に見えるは関西電力美浜発電所(2020年3月撮影)】
 
これと並行し、関西電力の森本孝社長は12日に杉本福井県知事と県庁で面談し、県が関電に求めている原子力発電所の使用済み核燃料を搬出する中間貯蔵施設の県外計画地点について、青森県むつ市の施設を電力各社で共同利用する案を含めて検討を進めていると報告。
 
「2020年ごろ」としていた確定時期は「2023年末を最終期限とする」と表明しました。
 
面談には資源エネルギー庁の保坂長官が同席し、梶山経済産業大臣もオンラインで参加のうえ、美浜原子力発電所3号機と高浜原子力発電所1、2号機の再稼働への理解を求めたとあります。
 
これに対し杉本知事は面談後の取材に、運転開始から40年を超える関電の原子力発電所3基の再稼働に向けて「議論に入る前提はクリアした」と評価。
 
さらに、「(中間貯蔵施設の)計画地点について一定の回答があった。さらに一歩踏み込んで計画地点の確定時期を明示し、関電の覚悟も伺った」と評価したうえで県会に再稼働議論を促す考えを明らかにしました。
 
一方、この翌日14日の新聞では、むつ市が「共用化を認めた事実はない」とするコメントを発表。
 
12日の関電の動きには市として関与していないとしていますが、この点に関しては、保坂長官が「状況が整い次第、青森県やむつ市に対し、できる限り早く政策的視点からの説明を行いたい」と述べているよう、改めて国として正式な動きとなることが想定されるところ。
 
また、梶山経産大臣は「40年超運転が終わった後の地域社会のあり方も含め、将来の立地地域の目指すべき方向性を立地の皆さまと一緒に真剣に検討していくことが必要」と強調し、他省庁の施策も活用して産業の複線化や新産業創出などを最大限支援するとも述べられましたが、立地地域が国に求めているのは、やはり「国が、この先原子力発電をどのように位置付けるのかの考えを国民の皆さんに明確に示すこと」。
 
国内初の40年超えプラントの再稼働に向け、議論が一歩前進することは大変喜ばしいことに違いありませんが、これと併せて、原子力発電に対する「国の覚悟」を次期「エネルギー基本計画」に反映することこそ、長年国のエネルギー政策に貢献してきた立地地域の強い思いであることを念頭に、こちらの議論も加速していただきたいと切に願います。