処理水海洋放出を巡り韓国視察団が現地視察

ブログ 原子力

故石原慎太郎氏が残した「石原語録」。
 
印象に残るもののひとつに、東京都の築地市場から豊洲市場への移転問題を巡り、移転決定時に都知事だった同氏が述べた「科学が風評に負けるのは国辱だ」の言葉があります。
 
この時は、ベンゼンなど環境基準を上回る有害物質が検出されたなどとする土壌汚染問題でしたが、この言葉を聞いて思い浮かぶのは福島第一原子力発電所事故後にあった「風評加害」について。
 
とりわけ、処理水海洋放出を巡っては、以前より韓国の国内世論が拒否感を示しており、最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表は、「飲めるほど安全なら飲料水に使えばいい」、「最悪の放射能(放射性物質)投棄テロとの指摘もある」など無茶苦茶な発言を続けているところ。
 
日本国内では、東京電力においてはもちろん、国際的な基準に照らし問題がないことを確認するほか、原子力規制委員会の審査も終えての放出判断に至っていることに加え、既に進んでいる国際原子力機関(IAEA)の検証結果をもって、その科学的根拠の妥当性を国際的にも示す方向にあります。
 
そうしたなか、海洋放出を巡り、韓国の専門家(原子力発電や放射線分野の専門家ら21人)らで構成する視察団が昨日、福島第一原子力発電所を訪れ、現地視察に入りました。
 

【処理水を溜める福島第一原子力発電所のタンク群(NHK NEWS WEBより)】
 
この視察団派遣は、7日に行われた岸田首相と尹錫悦大統領との会談で合意していたもので、今日まで、放射性物質による汚染を浄化する多核種除去設備(ALPS)や測定・確認用タンクなどを重点的に確認するとしています。
 
視察団の団長を務める韓国原子力安全委員会の劉国熙(ユ・グッキ)委員長は視察前、記者団に「科学的な根拠をもって安全性を確認していく」と述べ、「(韓国)国民を安心させることもわれわれの役割だ」と強調しており、その姿勢自体は歓迎する次第です。
 
李代表は、その後も処理水海洋放出や視察団派遣を連日非難し、日韓関係改善に傾倒する尹政権への攻撃材料にしているようですが、この視察団やIAEAの検証において科学的に問題がないことが証明された場合どうするのか。
 
それでも「風評加害」に徹するのであれば、今度は国際社会から批判を浴びる側になるのではないでしょうか。
 
他国のことはそれまでとし、わが日本。
 
冒頭の「科学が風評に負けるのは国辱だ」の思いのもと、「空気で物事が決まる」と揶揄される国民性から「科学的根拠をもって判断」する国に脱皮することが必要なのではと考えるところ。
 
この3年間で経験した目に見えない「感染症」、そしてこの処理水海洋放出然り、その影響を科学的に国民理解がされることは即ち、上述の「脱皮」につながるのではと。
 
隣国の対応を鑑みつつ、先に開催されたG7に名を連ねるに、真にふさわしい国でありたいと思う次第です。