今度は関西から北陸へ。今季2例目となる電力融通。

エネルギー ブログ

昨夜半から強く吹き始めた風は、みぞれ混じりの雨とともに窓ガラスを叩き、今朝方はその音で目が覚めました。
 
それもそのはず、福井地方気象台によると、敦賀市には現在、波浪警報、風雪・雷については注意報が発表されていることに加え、本日から週後半に掛けては寒波襲来とのこと。
 
特に今日は冬型の気圧配置が強まるため、日本海側を中心に猛吹雪に警戒の予報となっていることから、車の運転等に十分注意して過ごしたいと思います。
 
さて、私の場合、この「寒波」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは「電力需給」な訳ですが、先週末の東京電力パワーグリッド(東電PG)供給域内で発生した「需給ひっ迫」に続き、昨日は北陸電力送配電の供給域内でも厳しい状況となりました。
 
全国的な電力需給ひっ迫の根本的要因については、以前のブログで説明をしたところですが、直接的リスクに関し、東電PGが低気温による暖房需要増であったのに対し、今回の北陸電力送配電の場合は電源トラブルにより供給力が低下したもの。
 
トラブルがあったのは敦賀市にある敦賀火力発電所1号機であった訳ですが、これにより、北陸電力送配電供給区域に対して広域的な融通を行わなければ、電気の需給状況が悪化する恐れがあったため、電力広域的運営推進機関(OCCTO)は、電気事業法の規定に基づき昨日5時31分、関西電力送配電に6時から8時の間、20万kwの電気を供給することを指示。
 
いわゆる電力融通により難を凌いだ次第。
 
なお、電力融通を受けるのは、先の東電PGに続き今季2例目のこと。
 

【1月12日朝時点の北陸送配電「電力使用状況グラフ」。本日実績を示す「赤線」は昨日と同様の推移となっている。】
 
こうして「綱渡り」の状況が続いていることを身をもって感じるところですが、今冬の需給見通しは、以前に公表された需給検証報告書のとおり、厳気象H1需要(過去10年間で最も厳気象(厳寒)であった年度並みの気象条件での最大電力需要のこと)に対して予備率3%を確保する見通しは得たものの、全国的に予備力が十分とは言えない状況にあります。
 
また、OCCTOにおいては、今年度より需給バランス評価として加えている「kWh余力」についても、現時点では厳気象においても燃料在庫・調達に基づく余力は確保しているものの、ベースロード電源の停止など今後のリスクについて継続的に注視することが重要としています。
 
さらに、今冬の高需要期に向けて、kW及びkWhの両面において、今後の需給変動や電源トラブルなどによる需給バランス悪化を早期に捉え、情報発信や対策を講じることが重要であり、当該機関ではkW及びkWhの需給バランスモニタリングを定期的に実施・公表するとしています。
 
そのひとつ「kW面からの電力確保状況」では、気象予報を踏まえた需要想定や発電機の計画外停止状況を監視し、需給バランスを確認しており、具体的には、1ヶ月程度先までの週別バランスについて、需要を厳気象H1需要等に設定し、必要な供給力が確保できているか、リスクケースも含めて週単位での需給バランスを予備率として確認しているとあり、ちょうど今現在の1月2週目に関しては下図のとおりとなっています。
 

【OCCTO公表資料「kW面からの電力確保状況(2022年1月7日時点)」より抜粋)】
 
ご覧のように、予備率は東京の4.2%を最低に、北陸や関西においても7.3%と全くもって予断を許さない状況であることが分かります。
 
OCCTOは、当月半ばに最新の供給力情報等をもとに情報更新し、公開するとしたうえで、但し、想定以上に大規模な供給力減等があり需給バランスの悪化が予見される場合には、確認できたタイミングにて速やかに追加公開するとしています。
 
「需給バランスの悪化が予見された場合には、国や一般送配電事業者と連携し需給対策を講じます。」とした当該機関の役割でもある「電力融通指示」は既に今季2回。
 
こうした状況を肌感覚で感じるに、ベースロード電源であるべき原子力発電所を有しながら戦線に加われないことに忸怩たる思いを抱きつつ、厳しい環境の中にあっても電力安定供給に尽くす関係者の皆さんには、心からの感謝とエールを送る次第です。