広く国民に伝えるべきUNSCEARの「科学的評価」

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関西電力は15日に原子炉起動した大飯発電所4号機に続き、高浜発電所3号機(PWR、87万キロワット)も運転再開の見通しが立ったとし、23日に原子炉を起動、26日に並列(発電開始)すると発表しました。
 
順調に進めば8月19日に本格運転を開始する予定であり、経済産業省が6月末の審議会で示した8月の広域予備率5.7%に対し、今夏の運転再開を織り込んでいなかった高浜3号機の戦線復帰により、0.5ポイント程度改善する見通しとのこと。
 
定期検査中に見つかった蒸気発生器(SG)内の伝熱管損傷のため再稼働時期が未定となっていたものではあるものの、厳しい夏季の電力需給を改善するため対応にあたられた関係者の皆さんに敬意を表する次第です。
 
さて、こうして再稼働を果たす原子力発電所ですが、大前提にあるのが「安全」と「国民理解」。
 
このうち「国民理解」に関し、2012年3月に発生した福島第一原子力発電所事故による影響は、11年を経過した今も、負のイメージが払拭されていない状況にあると認識するところ。
 
この影響に関しては、偏見を持たず、中立的・公正な視点のもと、科学的に評価することが極めて重要であると、これまでも述べてきているところですが、7月19日「原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)」のメンバーらが日本記者クラブで記者会見し、福島第一原子力発電所事故について「放射線被曝(ひばく)を原因とする健康被害は認められない」とする解析結果を紹介しました。
 
メンバーは、昨年3月に公表した事故影響に関する報告書を住民や科学者らに解説するため来日しており、22日まで東京と福島で住民や学生、科学者らと対話イベントを開くとのこと。
 
この「UNSCEAR(アンスケアー)」とは、「United Nations Scientific Committee on the Effects of Atomic Radiation=原子放射線の影響に関する国連科学委員会」の頭文字をとったもので、国連の中でも最も歴史のある委員会のひとつ。
 
東西冷戦下で大気圏核実験が頻繁に行われていた1950年代。
 
環境中に放射性物質が大量に放出され、放射性降下物による環境や健康への影響について懸念が増大する中、1955年の国連総会でのUNSCEAR設立は全会一致で決議され、それ以来、核兵器《非》保有国の委員が持ち回りで議長を務めながら、放射線の発生源と影響に関する国際的な調査研究成果を包括的に取りまとめ国際社会に提供。
 
設立当初、日本を含め15カ国だった加盟国は、その後21カ国に増え、さらに今年からは27カ国になっています。
 
その同委員会が昨年3月に公表した報告書は、世界の放射線医学などの専門家が参加し、500本超の論文や調査を基にまとめたものであり、住民の避難経路などを精査した結果、被曝線量は高くないと推計し、「被曝によるがんなどの健康影響が増加する可能性は低い」と結論づけたほか、前議長のギリアン・ハース氏は「報告書は最新の知見やデータに基づいている。結論は堅固で将来も大きく変わるとは思われない」と強調されています。
 

【日本記者クラブで会見するUNSCEARのギリアン・ハース前議長(読売新聞WEB版より)】
 
科学的・中立的な立場から、放射線の人・環境等への影響等を調査・評価等を行う国際機関「UNSCEAR」の重大な報告は、先にあった「国民理解」の醸成に寄与すると思われるものの、私の見る限り、報道の扱いは極めて小さいもの。
 
福島第一原子力発電所に滞留する処理(済)水に対するIAEAの見解然り、こうした国際機関の「お墨付き」は、我が国にとって都合の悪いものなのでしょうか。
 
私は決してそうは思いません。
 
真の福島復興に向けては「風評」を払拭することが極めて重要であること、そのためには「空気感」ではなく、透明性と中立性のもと「科学的」な判断によって物事を進めることが必要不可欠です。
 
本日は、重要な「事実」を一人でも多くの方に知っていただきたく書かせていただきました。
 
「空気感」ではなく「科学的」に物事を判断する国「日本」に。
 
微力ながら、今後も引き続き発信を続けていく所存です。