原子力発電の最大限利用に進む英国、同じ島国日本は

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徐々に桜の開花予報を耳にする季節となりましたが、その前に春を知らせる花と言えば水仙。
 
昨日も車を運転していると、可愛らしく連なって咲く水仙を発見し、思わず撮影。
 
後で調べると、花言葉は「自己愛」や「神秘」、黄色の水仙は「私のもとへ帰って」とのことで私とは似つかないものの、こうして道端に咲く花の姿から元気をもらった次第です。
 

 
さて、話題をガラリと変えますが、一昨日は総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会が開催され、エネルギーを巡る社会動向と原子力の技術開発について議論がされました。
 
同委員会では2月、約10か月ぶりに開かれた前回会合で、今後の議論に向け、(1)着実な再稼働の推進、(2)革新的な安全性の向上等に向けた取組、(3)国民・自治体との信頼関係の構築、(4)原子力の安全を支える人材・技術/産業基盤の維持・強化、(5)原子力の平和利用に向けた国際協力の推進、(6)核燃料サイクルの着実な推進と最終処分を含むバックエンド課題への取組みの各論点を提示。
 
論点ごとの意見整理を踏まえ、今回は、革新炉開発、原子力を支える人材・技術に係る課題を抽出のうえ、海外電力調査会上席研究員の黒田雄二氏、日本原子力研究開発機構理事の大島宏之氏からのヒアリング、意見交換を行った上で、「原子力発電の新たな社会的価値を再定義し、わが国の炉型開発に係る道筋を示す」ため、同委員会のもとに「革新炉ワーキンググループ」を設置し議論を深めることとなりました。
 
専門委員として出席した原産協会の新井史朗理事長は、サプライチェーンの維持に関し、「原子力の持続的活用の観点から、高品質の機器製造、工事・保守などの供給は必須で、これらが国内で一貫して行われることが重要」とした上で、既存炉の徹底活用とともに、新増設・リプレースの明確な見通しなど、関連産業の長期的展望が求められると述べられましたが、足元の現状からすればまさに、革新炉を言う前にこうした意見に重きを置いた政策に舵を切るべきと思う次第です。
 
一方、海外を見てみると原子力発電の先進国でありながら、今や相次ぐ新電力の撤退により政府が巨額の補償をしている電力システムを「失敗」と認識、欧州エネルギー危機、ウクライナ情勢とも相俟って、島国が採るべきエネルギー政策を模索する英国では、3月17日に英国原子力産業協会(NIA)にて英国議会における超党派議員連盟(APPG)の原子力推進派(原子力APPG)が「英国がエネルギーの供給保証を強化するには、大小様々な規模の原子炉で2035年までに少なくとも1,500万kWの設備が新たに必要」と政府に訴える声明文を発表したとのこと。
 
折しも、英国のジョンソン首相が3月15日付けのThe Daily Telegraph紙で、「今こそ新たに原子力で大きな賭けに出るべきだ」との原稿を寄稿した直後のことでしたが、「賭け」の文言はやや引っ掛かるものの、労働党政権時代の歴史的な過ちを正し、ベースロード用電源として天候に左右されない原子力発電を大幅に拡大、ロシアのプーチン大統領の脅迫に翻弄されることのない盤石なエネルギー供給保証を英国内で確立すべきと述べたことと併せ、危機感をもって対応する政治の姿勢ここにありと認識する次第です。
 
なお、ジョンソン首相はその後の3月21日、首相官邸に英国原子力産業界の首脳を招いて円卓会議を開催し、英国の原子力発電開発を加速する方法や、国内のエネルギー供給保証の改善方法について協議しており、首相からは「クリーンで安全なエネルギー源である原子力が、英国の将来のエネルギー供給システムの中で主要部分を占める」という明確なビジョンを提示。
 
原子力産業界の代表者からは、それぞれが国内外の専門的知見に投資して開発中の大型炉やSMRなど、様々な原子力技術やプロジェクトを紹介したとあります。
 
振り返って今の日本。
 
絶対的に電源が足りない状況、調達価格高騰で崩壊寸前の電力システム、そして何より同じ島国であることは英国と同じなのに、「どうにかなる」とどこか悠長に構えているようにしか見えません。
 
目の前にある危機を認識しながら、敢えて目を瞑り、原子力発電利用の議論を避けているようにしか見えない政府、国でありますが、電源開発に時間を要するエネルギーなだけに、今すぐにでも英国のような現実的な政策、方針の明示をしていただきたいと強く求めるものであります。
 
何度も申し上げますが、政治の思考停止で負担を強いられるのはいつも国民であることを思えば、ジョンソン首相のように、岸田首相には早急な政治判断により、政策転換の声を挙げていただきたい。
 
この一心であります。