「40年超運転」と福島第一原子力発電所の処理済水「海洋放出」

ブログ 原子力

ご承知置きの通り「やまたけブログ」はカテゴリー分けをしておりますが、ここ10日間を振り返ると3割は「原子力」の話題。
 
と申しながら、本日もふたつの「原子力」に関する話題に触れたいと思いますが、新聞でも大きく取り上げられている件につきご容赦のほど。
 
ひとつ目は、福井県にある関西電力が保有する美浜発電所3号機と高浜発電所1、2号機の40年超運転について。
 
先の県議会2月定例会での判断は見送ったところでありますが、6日、杉本福井県知事は、畑県議会議長と面談し、運転開始から40年を超えた原子力発電所を対象に1発電所につき最大25億円を立地県に交付する国の方針を明らかにするとともに、県内の立地地域の将来像を議論する会議の創設など国がまとめた地域振興策を報告し、3機の40年超運転について「県議会でも再稼働の議論を進めていただければ」と改めて要請しました。
 
国に関しては、福井県における「立地地域の将来へ向けた共創会議(仮称)」を創設、嶺南のエネルギー産業を活性化させる「嶺南Eコースト計画」への参画(国から職員2人派遣)、原子力の必要性に関して全国各地で説明会を開催、高浜町と京都府舞鶴市にまたがる青葉バイパスの新規事業化などを示したとのこと。
 
交付金に関しては、以前に運転30年超の原子力発電所が立地する道県を対象に1発電所につき25億円の交付金を創設した経過があり、今回、さらに長期運転となる発電所を対象に手厚く配慮する措置を講じることになる訳ですが、県民の皆さんの受け止めはいかがか。
 
畑議長は、再稼働に関して会派ごとの協議を促す意向を示したとのことであり、今後慎重な議論がされることと思いますが、私は県や議会が以前から求めている「国の原子力に対するスタンス明確化」に関し、将来に亘り利用していくことを形で示すことが極めて重要であり、軽水炉の新増設・リプレースを次期エネルギー基本計画に盛り込むことこそが「覚悟あるスタンス」であると、国策に貢献してきた福井県としての誇りを持って、是非そうした点を論じていただきたいと切に思うところであります。
 
ふたつ目は、福島第一原子力発電所の「処理済水」海洋放出の件。
 
これに関してはまず、自民党会派に所属する細野豪志元環境相がツイッターで、本件に関する新聞記事を引用し、「処理水の海洋放出を首相が決断するなら支持したい。『汚染処理水』という表現そのものが風評の拡散」と指摘した通り、あたかも「汚染」したものを放出するかのような表現がされているところですが、この細野議員の表現も実は言葉足らず、正しくは原子力規制委員会の更田委員長が会見で「処理済水というのが正しい言い方なのだと思っています」(平成30年8月22日の委員長定例会見)と述べている通り、「処理済水」が最も適した表現ですので、皆さんにも是非ご承知置きいただきたく。
 
この処理済水に関する客観的データ、科学的な安全レベルという点については、過去に何回か自身のブログでも説明をさせていただいておりますが、ここでは至近に記載しました昨年10月のブログをリンクしますので、そちらをご覧いただきたいと思います。
 
 →→→福島第一原子力発電所の処理済水「海洋放出」について(2020年10月17日のブログより)
 
このブログで記載しましたように、真実をもとにした現実論を選択せねばならない環境下において、菅首相は昨日、首相官邸で全国漁業協同組合連合会の岸会長と会談し、海洋放出を念頭に理解を求めたとのこと。
 
岸会長は「反対という考えはいささかも変わらない」と強調したうえで、政府側に風評被害対策の充実などを求めたとあります。
 
福島第1原子力発電所の廃止措置の着実な進展は震災からの復興の前提であり、そのためにも処理済水の処分は避けて通れない問題で、海洋放出が確実に実施可能な現実的な方法だという専門家の提言を踏まえ、政府の方針を決定していくとの首相の姿勢には大いに賛同するものでありますが、会長の仰る風評被害はあってはならないこと。
 
今後、より漁業関係者や国民の理解が得られるよう、こちらも国が責任を持って、処理済水の安全性について広く説明、周知されることを望むところであります。
 
最後に、この処理済水に関しては、これまた更田原子力規制委員長が以下のように述べています(令和元年8月21日の原子力規制委員会記者会見録より)
 
「風評被害について言うと、12年保管しておけば半分、24年で4分の1とかそういったものですけれども、果たして量が減衰していくことに伴って風評被害が小さくなるのかというと、量の問題ではないのではないかという感想は持っています。というのは、トリチウムの量だけで言えば、通常の原子力施設から放出されているトリチウムの量なり、濃度というものは、処理済水に比べて決して小さいわけではないですし、それから、諸外国の例で言えば、もっと多くのトリチウムを放出している例はあるので、そういった意味で量が問題なのか。風評被害というのは やはり心の問題ですので、長く待てば風評被害が小さくなるかというと決してそうではなくて、むしろ風評被害の後ろ送りにならないかというところもあるからこそ、議論の難しい問題なのだと思っています。」
 
この発言からは既に1年半が経過しており、これ以上後ろ送りにしたとしても風評被害が小さくなる訳ではないことからすれば、科学的真実を持って、政治は今こそ判断し、国民の皆さんは関心をもってそれを正しく知る権利を行使していかなければ、私はもっと大きなもの、つまりは震災からの復興が遅れる危機につながると考える次第です。
 
本件の理解に関しては、私自身もその現実を少しでも知っていただけるよう活動にあたっていきますので、ブログをご覧いただいた皆さまにおかれましては是非こうした状況や考えについてご理解いただければ幸いに存じます。
 

【敷地一杯に並ぶ処理済水が保管されたタンク(東京電力ホールディングスホームページより)】