GX実行会議の「基本方針」は真の「政策転換」と言えるのか

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上皇さまは本日、89歳の誕生日を迎えられました。
 
今年7月には「右心不全」と診断され心配したものの、その後は治療にて改善傾向にあるとのことで安堵。
 
譲位から3年以上が経過をしましたが、これからも上皇后さまとともに穏やかに過ごされることを願う次第です。
 
さて、昨日「転換なるか」と注目したのは、政府のGX実行会議。
 
このGX実行会議ですが、改めて内閣官房のホームページを見ると「産業革命以来の化石燃料中心の経済・社会、産業構造をクリーンエネルギー中心に移行させ、経済社会システム全体の変革、すなわち、GX(グリーントランスフォーメーション)を実行するべく、GX実行会議を開催します。」と書かれており、改めて歴史的な意味合いを持つものであることを再認識したところ。
 
午後開かれた会議では、GX実現に向けた今後10年間のロードマップ(工程表)を含む基本方針が取りまとめられ、原子力発電所の60年を超えた運転を認めるルールの新設や建て替えなど、足元のエネルギー安定供給に向けた対策と、企業の二酸化炭素の排出に負担を求める「カーボンプライシング(CP)」の導入が2本柱で、日本の産業・エネルギー政策の大転換を目指すとされました。
 
なお、基本方針については、国民から意見募集をした上で閣議決定し、原子炉等規制法など関係法令の改正案を来年の通常国会に提出するとのこと。
 
とりわけ、8月末に岸田総理から検討指示のあった原子力発電に関しては、工程表において、安定供給と脱炭素化の両立に向け「重要な役割を担う」と明記したうえで、既存の原子力発電所を最大限活用するため原則40年、最長60年という運転期間のルールは、東京電力福島第1原子力発電所事故後の審査対応などで停止した期間を除外し、60年を超える運転延長を可能にすること。
 
また、持続的な原子力の活用のため、原子力発電所の建て替えにも踏み込み、廃止が決まった発電所を対象に次世代型原子力発電所に建て替える方針も示しました。
 
私が特に注目していた、この「建て替え」に関し、実際会議に提出された、西村経産大臣からの「GX 実現に向けた基本方針(案) 〜今後10年を見据えたロードマップ〜」には、次のように記載されています。
 
「将来にわたって持続的に原子力を活用するため、安全性の確保を大前提に、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設に取り組む。地域の理解確保を大前提に、まずは廃止決定した炉の次世代革新炉への建て替えを対象として、六ヶ所再処理工場の竣工等のバックエンド問題の進展も踏まえつつ具体化を進めていく。その他の開発・建設は、各地域における再稼働状況や理解確保等の進展等、今後の状況を踏まえて検討していく。」
 
さらには、同じく経産大臣からの「GX実現に向けた基本方針(案)参考資料」で示された、各産業・分野ごとの「今後の道行き」では、以下のスライドが示されています。
 

【第5回GX実行会議(令和4年12月22日)資料より抜粋】
 
このスライドで分かる通り、時間軸を考えるにおいては「技術熟度に合わせた開発の加速」とし、事業者等からの個別のヒアリングを踏まえて、「研究開発を進めていく上での目標時期」として策定したもの(実際に建設を行う場合の運転開始時期等は、立地地域の理解確保を前提に、事業者の策定する計画に基づいて決定されることとなる。)と定義づけられています。
 
あくまでも開発目標であり、商業用としての設置時期は事業者に委ねられているところが味噌と受け止めたところですが、そもそも「革新軽水炉」とはどの炉型を指すのかは明記されていないため、これを受けて審査基準を整備する原子力規制委員会としても動きようのないところ。
 
なお、敦賀にとって関心の高い日本原電敦賀3、4号機に関しては、これら条件に勝手に当てはめると、
・新規制基準に適合させる改良型加圧水型炉(APWR+)は、新たな安全メカニズムを組み込んだものであること
・過去経過を辿れば、敦賀発電所1号機の廃止決定との関係を踏まえ、増設計画を進めたものであり、いわば「建て替え」といえる
・現在、敦賀2号の審査を優先するため、後回しとしているものの、敦賀3、4号は既に申請済みプラントであること
・従前に地域の理解が得られていること
となり、GX実行会議に示す「建て替え」の対象になるものと考えます。
 
あくまでも自論ということですが、ひとつの考えとしてご理解いただければ幸いです。
 
最後に、原子力発電のことが取り立たされているGX実行会議「基本方針」ですが、中身は、原子力の活用の前に「徹底した省エネルギーの推進」、次に「再生可能エネルギーの主力電源化」について書かれています。
 
蓄電池開発などを含め、再エネを活用していくことに異論はないものの、欧州の事例や我が国の国情を考えれば、「主力電源化」することには反対するものであるとともに、「原子力依存度を可能な限り低減」とする現行「エネルギー基本計画」との齟齬を現実論で見直すまでは、真の「政策転換」とまでは言えないものと肝に銘ずる次第です。