電気代が高い理由はみんな「亡国のエコ」のせい

エネルギー ブログ

2023年1月から9月にかけて、電気代と都市ガス料金を値下げする経済産業省の「電気・ガス価格激変緩和対策事業」。
 
電気代の値下げ額は一般家庭向けで1kWhあたり7円、企業向けの値下げ額は3.5円ですが、高騰を続ける電気代に苦しむ家庭・企業にとっては大変有効なこと。
 
オール電化住宅の我が家も然り、元々、冬場の電気代が高いこともあって、この冬は蓄熱暖房の使用を2台から1台に、お風呂の保温を長時間しないなどの節電効果ともあいまって、3月の請求分はやや落ち着いたところです。
 
以前にもご紹介した通り、この「電気代値下げ」は国民民主党が一早く提案し、政府が取り入れたものですが、この4月以降の値上げも視野に、同党は更なる値下げ策の必要性を主張しており、物価高騰対策を含めた今後の政府の対応に注視する次第です。
 
さて、この電気料金高騰に関しては、ロシアのウクライナ侵略に起因したものと思われている方が多いかと思いますが、これをみな、「亡国のエコのせい」と3つの要因を挙げられた方がいましたのでご紹介します。
 
その方とは、キヤノングローバル戦略研究所の杉山大志研究主幹。
 
杉山氏によれば、電気代が高騰している。この理由は3つで、①反原子力、②再エネ推進、③脱炭素。
 
以下、杉山氏の意見を抜粋掲載します(一部、表記修正)。
 
【理由1】原子力の停止
 
原子力発電を運転すれば電気代は下がる。図1は、原子力比率(=供給される全電力に占める原子力発電の割合)と家庭用電気料金の関係を示したもの。原子力比率の高い九州、関西は電気料金が低いことが分かる。
東日本大震災から10年以上経過したが、いまだに、日本は多くの原子力を動かせないでいる。
 

【図1:原子力比率は平成21年度のもの。データ出所は以下リンク(関西電力、四国電力、九州電力)。家庭用電気料金は日経新聞調べの標準家庭の規制料金(2023年6月)】
 
【理由2】再エネの大量導入
 
太陽光発電などの再生可能エネルギーの大量導入によって電気代は上がった。再生可能エネルギー賦課金の推移では、2021年度の賦課金総額は2.7兆円であり、一人あたり年間2万円、3人家族なら6万円になる。月額873円とあるのは年間約1万円でこれが平均的な家庭の直接の負担額。残り5万円は企業の負担になっていて、その分、物価が上がったり給料が減ったりしている。
 
【理由3】天然ガスの高騰
 
欧州の脱炭素政策は大失敗した。天然ガスを筆頭にロシアのエネルギー頼みとなった。この足下をみたプーチンは欧州の経済制裁などたかが知れていると見てウクライナに侵攻した。欧州がエネルギーで脆弱性を作りだしたことが戦争を招く大きな要因になったのだ。
欧州は(プーチンの予想には反して)ロシアからのエネルギー購入を止めたが、代わりに世界中からエネルギーを買い漁って、天然ガス、石油、石炭の何れの価格も暴騰した。
過去数年、脱炭素のためとして、世界的に化石燃料の採掘事業が停滞していたことも、価格暴騰に大いに拍車をかけた。
この煽りで日本の主要な発電燃料である液化天然ガス(LNG)価格も高くなった。欧州(TTF)、東アジア(JKM)のスポット価格に比べればそれでも安いが、これは長期契約を結んでいたおかげで、じつは電力会社のファインプレーだ。
 
そして最後にこう結んでいます。
 
「以上のように、いまの電気代高騰は、反原子力、再エネ推進、脱炭素といった、「エコな」政策のせいだ。これを変えない限り、また同じことが起きるのは必定だ。最近、原子力政策には変化がみられる。しかし政府は相変わらず脱炭素、再エネ最優先に邁進している。電気代はどこまで上がるのだろうか。
 
私も杉山氏の懸念に同感であり、本質を突いたこうした要因分析がまったくといっていいほど報じられないのは何故なのか(特に原子力比率と電気料金の関係)。
 
報道もさることながら、やはり「再エネ主力の電源化」を謳っている、現行のエネルギー基本計画は見直すべきと考える次第。