門田隆将氏のご講演に感銘 〜原子力の仕事は国を守ること、日本を守るのはリアリスト〜

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本日は、前置きは控え、敦賀市民文化センターで開催された福井県原子力平和利用協議会創立50周年記念事業「2021年エネルギーフォーラムin敦賀」の内容を報告させていただきます。
 
このフォーラムでは、映画「Fukushima50」の原作となった「死の淵を見た男 〜吉田昌郎と福島第一原発の500日〜」の著者である門田隆将氏のご講演が聞けるとあって、私も以前から楽しみにしていたものですが、期待した通り、そのお話しの迫力もさることながら、福島第一原子力発電所事故の真実から、「原子力という仕事は、命を懸けて日本を守る仕事である」ということ、憲法改正など政治の分野では「日本を滅ぼすのはエリート、守るのはリアリストである」とのメッセージが強く胸に刻まれました。
 
また、門田氏が一番伝えたかったのは、「日本がいかに現場力で国力を維持しているか」ということ。
 
改めて、様々な分野にて現場第一線で日本の安全や技術、技能を守り続ける皆さんに最大限の敬意を表しつつ、門田氏の揺らぎなき信念と思いをより多くの皆さんに知っていただきたいとの思いをもって、本日の投稿とさせていただきます。
 
以下は、門田氏のご講演を会場にてリアルメモしたものです。
 
正確な文字起こしではないため、文脈がやや乱れている点はご容赦いただき、門田氏の強い信念、思いを汲み取っていただければ幸いです。
 
(以下、リアルメモ)
 
1.日 時 : 令和3年11月13日(土)14時〜16時
2.場 所 : 敦賀市民文化センター
3.演 題 : 「福島第一原子力発電所事故の真実とコロナ禍の世界情勢~福島第一原子力発電所事故から10年を迎えて~」
4.講 師 : 作家・ジャーナリスト 門田 隆将氏
5.内 容 : 以下、会場でのリアルメモを記す
 
【はじめに(原作、映画化の裏側)】
◉今日は、日本がいかに現場力で(国力を)持っているかを話したい。
◉原作を書くにあたり、吉田昌郎所長を説得するのに1年半を要した。
◉当時、反原発勢力の圧力は物凄いものがあり、どのテレビ局や制作会社も尻込みをするため映画はできる訳ないと思っていた。
◉そんな中で唯一、来てくれたのは角川会長で、「やれるものであればやってみてください」とお願いした結果、本当に映画化された。
◉様々な紆余曲折があった中で、プロデューサーから何か条件はあるかと聞かれ、「吉田昌郎(所長)役は渡辺謙がいい」と答えた。理由は、吉田昌郎そのものだから。
◉しかし、上司のOKが出ないと取材は進まない。マスコミ嫌いの吉田さんからは当初、相手にされなかったが、吉田さんを説得しないと話が進まない。
◉皆さんには皆さんが影響力を与える人を必ず持っている。それは家族、親戚、恩師、幼馴染、同僚であり、その人たちが本人を説得することをやると言ってくれれば必ず取材に応じてくれると信じ、働き掛けを続けた。
◉そうした甲斐あって、ある日吉田さんが訪ねてきてくれた。病室で(門田氏の)著書を読んでいるうちに「会いとうなったわ」と言ってくれた。
◉既に食道がんで痩せてはいたが豪快な人だった。
 

【故吉田昌郎所長(スクリーンの写真)とご講演される門田隆将氏。このシーンだけでも感動。】
 
【福島第一原子力発電所事故の真相、原子力とは】
反原発のマスコミがいい加減な記事ばかりを書いていて、福島事故の状況が国民に全く知らされていない。現場であった真実を何百年先の人々にまで伝え続けるために記録に残そうと話したことで共感し、取材が始まった。
◉まず初めに、一番気になる「事故はあのまま行っていたらどうなっていたか」を問うと、吉田さんは「チェルノブイリの10倍だ」と答えた(1Fの6基と2Fの4基を合わすと10基となることが根拠)。
◉原子力委員会の斑目さんに同じことを問うと「東日本壊滅」と言い、菅当時首相は、最低でも避難民4,000万人だと言った。つまりは日本が終わるということであり、それを止めたのは「現場」であると言える。
◉生き残るか倒れるかのオールオアナッシングの戦い。ひとつでも原子力発電所が爆発すれば終わりの戦いであった。
プラントエンジニアたちが、原子炉建屋に突入突入を繰り返し、あらゆることをやってくれた。ベントも成功させてくれたのであの状況で収まり、今の日本がある。
◉そのことを何故マスコミは書かないのか。
◉このことを伝えるのが自分の務めだとの思いのもと、吉田さんからは門田さんの取材に答えるよう当事者に伝えられ、その後正確な取材が進んだ。
◉取材が進めば進むほど、それは「世界初」の「手動によるベント」に挑戦した戦いであったと言える。
◉自分で操作に行くという時に「死ぬ」という確率がある。
◉一生に一回はマニュアルなき事態に遭遇する。その時にマニュアルに関係なく目的に向かって突っ走らなければならないが、吉田さんはその時、瞬時に原子炉への海水注入のため消防車を要請(発電所内は3台中1台しか使用できず)しており、自衛隊にも2台を要請しろと指示した。発生直後にそこまで具体的に指示をしたことは驚きであり、まさにこのことが功を奏し、奇跡を起こした。
◉現場の人々が次々とマニュアルなき作業をこなした。
◉消防車とともに自衛隊の渡辺陸曹が到着した時に初めて、「助かるかと思った」、「神様だと思った」と発電所員が述べている。
日本を救うために自衛隊員は作業を続け、吉田所長の撤退依頼にも「民間人がいるのに我々が撤退することはできない」と現場に残った。これも日本を守る使命感だが、このことを彼らは当たり前と思っていることを忘れてはならない。
◉死を覚悟してのベント操作に行くメンバーを決める際、伊澤当直長は「申し訳ないが、若い人には行かせられない」と言った時には空気が固まった。その空気を破ったのは井澤当直長本人で「まず俺が行く。俺と一緒に行ってくれるやつは手をあげてくれ」(当時53歳)と言った瞬間に金縛りが解け、「私が行く」の連呼となった。
◉地元の高校を卒業し、東電に入社、福島第一で10年を過ごし一人前になった5号機の副当直長は、「俺がベントを成功させて日本を救う」と思っていたが、それまで声が掛からずにいた。追い詰められた状況で、「お前行くか」と声が掛かった際に、その副当直長は「ありがとうございます!」と答えた(死ぬかもしれないにも関わらず)。
◉副当直長は、自分が途中で死んだら遺体もすぐに回収されないかも知れない場所に行くため、一旦指輪を外し机に置いたが、もう一度付け直した。その時、なぜ付け直したのかを聞いた際、「やり残したことがあったから」とまでは言ってくれたが、それ以上は口を閉ざされた。それでも知りたいと取材を続けた結果、「やり残した」こととは、「ありがとう。今まで幸せだったと妻に伝えられないこと」と話してくれた時には涙が止まらなかった。
◉そして、死ぬかもしれない現場に向かい、弁を開けベントを果たしたことによって日本を救った。
それだけ原子力というのは危ないものであることは認識しないといけないが、こうして現場の人々が戦い抜いた末に今の日本があることを書いたことによって、あれだけ叩きに叩きまくっていたマスコミはやりにくくなった。
◉命を懸けてやってくれという時に、どんな上司からだったらやるかとの問いに対しては、語る言葉は違えど、ほとんどの人が「吉田さんとなら一緒に死ねると思っていたから」と語った。
常に現場の思いを代弁し、常に本店とも戦っていた吉田所長を慕い、ともに戦った。そして、最後に吉田所長は一緒に死ぬ人間を思い浮かべた。それが「Fukushima50」である(実際は69人)。
◉海外メディアはそう呼び、命を懸けて守った現場の人々に称賛の声を送るが、日本のマスコミは言わない。
◉吉田所長がお亡くなりになる前、事故の時に最後まで発電所に残り、一緒に死ぬ人間として真っ先に浮かべたヒキダさん(吉田所長とはくされ縁の方)に送ったメールには、「最後にはお前と一緒に残ろうと思っていた。奥さんを未亡人にするところやった。ごめんな。」とあった。そのメールを見たヒキダさんと奥さんは嗚咽し、泣いた。
原子力の仕事はそういう仕事である。日本を守る仕事である。
 
【政治、憲法改正など】
◉どういうふうな中で日本は危機に陥っていったのか。
◉コロナ対策も然り、中国にも毅然とした対応が出来ない、エネルギー政策についてもフニャフニャしているのは何故か。
◉日本を滅ぼすのはエリート。
政治家や官僚の大体はひ弱な秀才君、エリート君たちであり、その人たちは教えられたことはキチンとできるが、色んなことを吸収して、命を懸けて日本を守るなんてことはできない(中にはそうでない人もいるが)。
◉それが今の日本である。
◉右肩上がりの高度成長期の中で、国家観を教わっていない人たちであることを認識しておかねばならない。
◉東電の使命と問うた際、東電は「電力の安定供給」と答えたが、それは業務であって、使命は「国民の命を守る」こと。他の仕事も同様、そのことを忘れている人が多い。
◉憲法改正が未だにできていないのは、9条を変えたら戦争になると未だに信じている人がいる。ドイツの憲法は60数回改正されている。
◉中国は「必要があれば我が国の領土(尖閣諸島)を武力で守る」と言っている。既に尖閣は中国のもので、攻める側が日本になっている。
◉強い力による現状変更である。

◉自分自身も2013年以前と以後で考えが全く変わった。以後は、憲法改正をしないと日本は守れないとの考えに変わった。
◉平和を守るため、国民の命を守るために何が必要か。戦争をしないための抑止力が必要。
◉憲法を守るという人はドリーマー(現実を見ない人)。18〜29歳の7割は憲法改正が必要と言っている。ドリーマーとリアリストの戦いの中で、若い人が一番現実を見ている。
◉現に自身のツイッターは、若い人が一番反応してくれている。
◉中国は、100年の恥辱を晴らし偉大なる国をめざすと言っているが、その恥辱を晴らす相手は、欧米ではなく日本である。
◉犬と支那人入るべからず、昭和7年の満州国、先の大戦での南京没落。屈辱を浴びせられ続けた同じアジアの日本を許すべからずと思っている。
◉ウイグル自治区の関係ではサイコパスがいたとまで言っていて聞くに耐えない。
◉女性の不妊手術は19倍にも上っておりギタギタにされていて、欧州は声を挙げているのに対し、日本は何も言わない。
◉第二次岸田内閣における外務大臣への林芳正氏起用は、国際社会に誤ったメッセージを送ることになるとのサジェスチョンがあったが岸田総理は聞かなかった。重要なところで「聞く力」はない。
 
【最後に】
◉太陽光発電ひとつをとっても、日本国土を脆弱にしようとする勢力がいる。この日本を守るのはここエネルギーフォーラムに集うリアリストである。