「電力融通」に「節電」、そして最終手段「揚水発電」で乗り越えた危機

エネルギー ブログ

初の「電力需給逼迫警報」が東京電力パワーグリッド(東電PG)管内に続き、東北電力ネットワーク(東北NT)管内にも発出された昨日。
 
東北NTに対する警報は「電力需給が緩和された」とし解除されたものの、東電PG管内においては「引き続き、予断を許さない状況」として、23日も警報を継続すると経産省が発表しています。
 
使用率「100%」でも「超異例」のところ、日中は需要が供給力を上回る(100%を超える)という「非常事態」となった東電PG管内については、自社の火力発電所の焚き増しなどの出来得る限りの供給力アップを行いつつ、22日5時59分には、電力広域的運営機関(OCCTO)が電気事業法第28条の44第1項及び業務規程第111条第1項の規定に基づき、東電PG供給区域の需給状況改善のため、下記の電力に対して供給を指示。
 
<需給状況改善のための指示が実施された会員>
・東北電力ネットワーク株式会社
・中部電力パワーグリッド株式会社
・北陸電力送配電株式会社
・関西電力送配電株式会社
・中国電力ネットワーク株式会社
・四国電力送配電株式会社
・九州電力送配電株式会社
 
ご覧いただくよう、北海道と沖縄を除く全ての旧一般電気事業者を対象に「○時〜◯時の間、◯◯万kw供給」といった内容で指示がされた状況は、自社の予備率も厳しい中、さながら「日本全体で東電PGを助ける」という姿を見るに、電力自由化になったとはいえ、そこにあるのは利益追求ではなく、安定供給を担う「使命感」ただ一つであると受け止める次第です。
 
こうして全国から電力供給をしてもまだ供給力が不足することから、経産省や東電PGからは再三に亘り節電への協力依頼がされた訳ですが、100%を超えても停電に至らず乗り切れたのは、最終的な需給調整手段となる揚水発電所の電気を使用したことにあります。
 
揚水発電所は上下の2つの調整池を持ち、一定量の水を繰り返して使用する発電所であり、電力需要の少ない夜間帯に下部調整池から上部調整池に水をくみ上げ、電力需要が多い時間帯に上部調整池から下部調整池に水を流して発電するというシステム。
 
ちなみに、ベースロード運転の原子力発電所の夜間電力を用いて調整池にポンプアップして使う(溜める)ことでコスト面でも効率的な運用がされていましたが、東電PG管内で原子力は稼働していないため、現在はそうした使い方が出来ない状況にあることもお知りいただければと思います。
 
その「最後の切り札」とも言える揚水発電ですが、発電可能量100%からスタートをし、上池水量が枯渇すれば即ち停電を意味する緊迫感のもと日中も発電し続け、最終的(22時時点)に29%の発電量を残し、昨日の危機を乗り越えた次第です。
 

【何とか危機を乗り越えたことを示す想定、実績カーブ(東電PGホームページより抜粋)】
 

【22日22時時点の揚水発電可能残量。これが枯渇していたらと思うと寒気がします。(東電PGホームページより抜粋)】
 
東日本大震災時を除けば、これほど電力需給が逼迫したのは歴史上ないことであり、連日述べているよう、すぐにでも政策転換(今出来ることは原子力発電所の早期再稼働)を図らねば、次の夏も冬も同じことを繰り返すことになります。
 
本来、こうした厳冬期や猛暑期であっても国民が安全に過ごすため、製造業を始めとした企業活動の安定化を図るために「安定且つ低廉で品質の良い電気」を供給出来たことが日本の強みであったはずです。
 
そうしたことを皆、壊してしまった政策の責任の所在を明確にするとともに、政府においては胸を撫で下ろしている場合ではなく、この非常事態が現実となったことを「エネルギー危機」と受け止め、早期に政治判断をしていただきたい。
 
なお、国民民主党の玉木雄一郎代表は20日夜、ツイッターで「当面、国民の皆さんには節電をお願いせざるを得ませんが、本来なら国が責任を持って安全基準を満たした原子力発電所は動かすべきなのに、批判を恐れ誰も電力の安定供給に責任を持とうとしない現状こそ危険です」、別の投稿では「政府におかれては原子力発電所の再稼働を含めた責任あるエネルギー政策を示してください。国がやるべきは、節電より発電です。電力の安定供給が不可欠です。」と、全くもって私と同じ考えを述べられています。
 
私自身、国民民主党に参画した訳ですので、原子力立地県の立場として、地方からもこうした意見を挙げていく所存です。
 
さて、そうして迎える今日。
 
先に述べた揚水発電は、昨日の100%スタートと違い、42%の発電可能量しかありません。
 
予断を許さぬ状況と認識し、状況を注視するとともに、本日は敦賀市議会3月定例会の最終日。
 
自身は自身の役割をしかと果たしてまいります。