産経建設常任委員会 行政視察最終日(宮崎県延岡市)

ブログ 敦賀市議会

充実の行政視察調査も最終日を迎え、昨日は宮崎県延岡市へ。
 
JR日豊本線を走る電車は個性的なデザインで格好良く、乗車した青のソニック号はガンダムをイメージするマスク。
単線路線ならではの擦れ違いもまた良しとし、別大国道を左に南下しました。

延岡市と言えば「旭化成」を思い浮かべる通りの企業城下町。
駅に到着すると吉野彰旭化成名誉フェローのノーベル化学賞受賞を祝う横断幕が掲げられていました。

視察調査の目的は、延岡市周辺整備事業の核として整備された駅前複合施設「エンクロス」について。
敦賀市においては、北陸新幹線敦賀駅開業に向けた駅前周辺の整備に取り組んでおり、既に駅西エリアに「知育・啓発施設」としてブック・カフェ機能を有した施設整備を決定しているところ。
延岡市は、先進的に同様の設備を有しているとのことでお邪魔した次第。

この2日間の視察調査と同様、以下に知り得たことを記載します。
(毎度、議事メモ的で恐縮です)
 
◉整備計画策定までのプロセス
・市町村合併により13万6千人のまちとはなったものの、駅周辺に関しては、東西エリアの分離(跨線橋等なし)や旧来の大型店舗撤退(郊外のイオン進出による駅前空洞化)、地元商店街の活気低下(最盛期100店舗以上が今では半分が空き店舗)などを受け、駅前周辺を「どげんかせにゃいかん!」との思いのもと、市がリードし動き出す。
・整備計画策定に向けては、市民の皆さんの声を最重要視し、様々な場を設け意見収集を行う。
①中心市街地活性化懇談会(民間代表者)
②市民ワークショップ(4回開催:延べ120名参加)
③専門者会議(3回開催)
④市民参加のまちづくりに考えるワークショップ(約70名参加)
⑤まちづくりシンポジウム(約200名参加)
⑥市民アンケート(回答率48.6%)
お気づきの方もいらっしゃると思いますが、とにかく市民の参加者数が多い。
人を集めるコツを市の方に伺ったところ、元々、延岡は市民活動性とボランティア意識が高いまちであり、今回も強制することは一切しておらず、「駅周辺を何とかしたい」と思う市民の方が自然に集ったとのこと。
市民が延岡を愛しているといったところと感じました。
 
◉延岡駅周辺整備計画の策定
・駅まち会議(JR九州や宮崎交通など交通事業者を始め、商店街、商工会議所、市内各種団体にて構成)を6回開催し、整備及びまちづくりについて検討。
・ここでも「駅まち市民ワークショップ」を計5回開催。延べ参加者は何と約400名。
・意見収集するのみに留まらず、開催後には、報告会(85名出席)やプラットフォーム準備会(約60名出席)など、フィードバックも丁寧に実施。
・こうして策定された整備計画の特色は2つ。
①あくまでも市民が主役の施設とすること。
②市が施設を直営で運営するメリットはないと早々に判断し、指定管理者による運営を前提とし計画前進。開業H30年の2年前には指定管理者を選定のうえ、施設整備・運営に関して民間の視点についての提案ももらう形で進めた。
・指定管理者にカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)を選定する決め手となったのは、「地元採用」、「統括責任者は延岡に移住させ地元に根付いた運営体制とする」こと。→実際、そのようにされていました。
・このような経過を踏まえ、駅周辺整備においては7つ、中心市街地のまちづくりに関しては6つの基本方針を掲げ、H22年に計画を策定。
 
◉駅前複合施設「エンクロス」

・名前の由来は、延岡の「延(エン)」と「ご縁(エン)」が交差(クロス)する場所との意味を込め、命名されたとのこと。
(施設の目的・イメージとマッチしたすごく良いネーミング)
・施設は、市民活動の場として日常的な賑わいを生むとのコンセプトではあるが、本当に生まれるのか?との疑問の中、H22年からの検討において必ず市民から出るニーズが、「本」と「カフェ」であったことから、この2つの機能を持たせることを要件に織り込んだ結果、TSUTAYAとSTARBACKSが入店。
・TSUTAYAに関しては、全国の店舗でエンクロスと延岡のことを発信するほか、発祥の地、代官山でもPRされるなど相乗効果が表れている。
・本に関しては、市の蔵書2万冊、TSUTAYAの販売本2万冊の計4万冊で運営。市の蔵書もTSUTAYAの販売本も手に取り、買わずともコーヒー片手に読むことも可としている。市の蔵書は、TSUTAYA側から提案、市が審査する形で選定。



・ちなみに、市立図書館はそのまま残しており、本の種類や利用者ニーズの違いなどで、すみ分けがされているとのこと。
・市民活動の場としては、事前に申請・登録許可を得た団体・個人が無料で施設内のスペースを利用(無料)。これら登録者により、1ヶ月のスケジュールは満杯の状況。
・市民活動の見える化により、第三者へのPR、仲間を増やすことにつながっており、登録件数も増加の一途を辿っている。
・市民活動で現在人気があるのは、アロマヨガや笑いヨガ。笑いヨガに関しては、幼稚園児から90歳超えまでが参加、孫と一緒に来て笑い、元気を得られる素晴らしい効果ともなっている。

・年始のニューイヤー駅伝では、旭化成チームをパブリックビューイングで応援するなどの利用もあり。

・誰でも自由に使える350席の座席とFREE-WiFi、電源席を配置するほか、お子さんや女性も使いやすいよう、キッズスペースも当然あり。図書館と違い、音を出すことも咎めなし。


・利用開始したH30の利用状況は次の通り。
①来館者数 1,283,337人(人口の10倍が利用)
②市民活動開催件数 536件
③市民活動登録件数 127件
④参加者数     6,499人
 
☆実際の利用状況、市民の反応、数字から見ても「成功」という以外の言葉は見つかりませんでした。
 
◯商用施設の招聘ではなく、徹底的に「市民のため」「市民活動の場」に拘り、そのプロセスにおいても「市民意見」を最大限尊重し、反映したこと。
◯これまで抱えていた駅周辺の課題解決も念頭に、ロングスパンで先を見た検討をされていること。
◯延岡駅の一日平均乗客数2,400人を考えれば、「あり得ない(市の担当者談)」「異例」のJR九州の駅舎改修対応は、まちづくり会議にJR九州も参画し続けていたことから、「自分たちでも出来ることを協力したい」と判断されたものとのこと。
 
以上が、視察調査の内容と、成功のヒントと感じた事項です。
 
一昨日から3日間の視察調査を通じ、共通して感じたことは、
①新たなものに食いつくのではなく、我がまちの今ここにある素材(自然、歴史、文化、食)を最大限活かしていくとの思いのもと知恵を絞っている。
②市民の皆さんと思いをともに進めなければ「真の成功」につながらないとの強い思いのもと、あらゆる手段を講じお知らせし、意見収集と反映に努めていること。
③地元出身の役所の方が、確固たる信念(必ずや我がまちを盛り上げる)と情熱をもって、市内外の関係者と接していること。
 
大変有意義であったこの行政視察調査で得たことは、単に理事者に押し付けるのではなく、議員の立場として出来ることは自らも行動をし、進行形の敦賀の各事業に対し、建設的に少しでも反映出来るよう取り組んでいきます。
 
この3日間、ご対応いただきました各自治体の担当者の皆さま、敦賀市議会事務局のご担当に対し、心から御礼申し上げます。