東京には屋根がある

エネルギー ブログ

0〜18歳への子育て世帯に対する5000円給付といい、目玉政策(実効性は別として)を打ち出す小池都知事ですが、昨年12月には、新築戸建て住宅などへの太陽光パネル設置を義務付ける環境確保条例の改正案を可決したことは記憶に新しいところ。
 
審議の中では、太陽光パネルの大半が中国製であることによる人権問題(ジェノサイド)との関係、廃棄コストや災害時の危険という視点も挙げらたうえでの可決であったと認識するところですが、これに関し、エネルギー環境政策の第一人者である山本隆三氏(国際環境経済研究所所長)はFacebookで以下のようにコメントしています。
 
(以下、引用)
『先日の毎日新聞「理念先行?太陽光パネル」の記事の中で「パネルのリサイクルが簡単ではない」という私のコメントが引用されています。小池知事のインタビューも載っていますが、エネルギー不足に対処するためにも太陽光パネルを導入するそうです。今の電力不足は、降雪時など太陽光パネルが発電しない時に起きるので、パネルを新たに設置する意味はありません。都庁にエネルギーのことが分かる人がいないのか、知事が全く意見を聞かないのかわかりませんが、どっちにしても呆れます。』
 
なお、記事には「東京には屋根がある」との知事発言も記載されていましたが、これは、かの小泉進次郎氏も過去に同じことを言っていたような…。
 
いずれにしても、山本隆三氏の辛辣な指摘を私は仰る通りと受け止めたところです。
 
さて、これまでも述べてきているよう、私は「原子力か再エネか」の不毛な二項対立議論から一日も早く脱却すべきとのスタンスでありますが、ひとつ頭に置いておくべき新たな知識として、こちらもその道の第一人者、キヤノングローバル戦略研究所の杉山大志研究主幹のレポート「【研究ノート】メガソーラーの所要面積試算」(令和5年1月5日)がありました。
 
これは、100万キロワットの原子力発電所をメガソーラーで代替する場合のメガソーラーの所要面積を概算したもので、結果、日照が無い時間に電力供給するために電気を(4週間分)貯めておくバッテリーの面積も概算した結果、合計ではおおむね、山手線の内側の面積の約2倍が必要になるとありました。
 
→杉山氏のレポート「【研究ノート】メガソーラーの所用面積試算」はこちらから
 
これまでも太陽光発電で原子力と同等の発電量を得るには、広大な面積が必要で、原子力発電所(100万kW級)1基分を代替するには、約58平方キロメートル(山手線の内側面積とほぼ同じ)の面積が必要となると例えられてきましたが、これは瞬時の発電量(MW)の話。
 

【第1回低炭素電力供給システム研究会資料(2008年7月8日)、日本のエネルギー2010(資源エネルギー庁)より作成(九州電力HPより)】
 
瞬時の電力量が等しいというだけでは、電力の安定供給は出来ませんので、本当に原子力発電所を代替するというのであれば、電気をバッテリーに貯めておいて、夜間や曇天・雨天時にはそれで電力を供給(=発電電力量(MWh))しなければならないことから、これに必要な面積を計算したものですが、今後は、現実的な代替として捉える場合「山手線内側の面積の約2倍」と説明することにしたいと思います。
 
上表を見れば、原子力発電所の設備利用率が70〜85%であるのに対し、太陽光は12%、しかもこれら再エネのさらなる導入拡大のため、国民から徴収する「再エネ賦課金」は年間4兆円にも上っています。
 
それでも再エネの「主力電源化」を目指すとする国の基本政策にはやはり、首が肩につくほど傾げるばかりですが、こうした知見も頭に置きながら、引き続き客観的データを基に公平な視点で情報発信に努める所存です。