憂国のエネルギー政策が閣議決定

エネルギー ブログ

本日は、二十四節気の「霜降」。
 
「そうこう」と読むこの季節は、朝晩の冷え込みがさらに増し、文字通り、北国や山里では霜が降りはじめる頃とされ、だんだんと冬が近づいてくるとの意味だそう。
 
我が家では既に「こたつ」が登場しておりますが、季節の変わり目、皆さまも体調にご留意されお過ごしください。
 
季節の変わり目といえば、既に過ぎたこの夏の電力需給に貢献した関西電力美浜発電所3号機(PWR、82万6千キロワット)が特定重大事故等対処施設(特重施設)設置期限を控え、本日23日から約13ヶ月間の定期検査に入ることとなりました。
 
23日昼頃に解列し、原子炉を停止する予定とのことですが、同3号機は新規制基準下で全国初の40年超運転プラントとして今年7月に営業運転を再開して以降、短期間の稼働ではあったとはいえ、夏季の電力安定供給に大きく貢献しただけでなく、「40年超」でも安全・安定運転が可能なことを実証(もちろんのことですが)したことは紛れもない事実であり、大変大きな意義、役割を果たしたものと考える次第です。
 
特重施設を完成させた後の再稼働は来秋を予定するとのことですが、安全性をより一層高めたプラントとして、引き続きの活躍を期待するところです。
 

【夏の電力安定供給に貢献した美浜発電所3号機(写真右手が3号機:7月の再稼働前に撮影したもの)】
 
そうした中、奇しくも昨日、政府は「第6次エネルギー基本計画」を閣議決定。
 
10月31日に英国で開幕する「国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)」前に閣議決定する必要があったことや、衆院選が重なったことから、「持ち回り閣議」で決定となったとのことですが、国家の根幹に関わるエネルギー基本計画を持ち回りで決定されたのは、政府関係者によると「恐らく初めて」ということであり、有識者や産業界、そして国民からも様々な意見がある中でのこうした決定には拙速感が否めないと感じるところです。
 
なお、先の自民党総裁選挙で唯一、高市早苗候補(当時)は本基本計画の見直しを示唆していましたが、小泉、河野のKK大臣が閣僚から外れたとて見直しなく、そのまま踏襲するのは、菅政権を否定すべきでないとの思惑も働いているようでもあり、結局のところ、岸田政権のエネルギーに対する本意はどこにあるのか懐疑的に見てしまいます(それでも、2050年再エネ100%を掲げる政党より数段現実的ですが)。
 
いずれにしても、日本のエネルギー政策は、再生可能エネルギーの比率を大幅に引き上げる方向へかじを切る一方、原子力発電に関しては新増設やリプレース(建て替え)に関する記載が今回も見送られました。
 
2030年度の温室効果ガス削減目標は「26%」から「46%」へ大きく引き上げられましたが、日本の国土事情から、風力や太陽光発電を増設する余地は限られていることが指摘されているほか、削減目標達成へ再エネを補完する原子力政策の将来像を示さぬまま見切り発車した形のエネルギー政策は、次期改定まで(3年後)まで維持されることとなります。
 
これを受け、電気事業連合会の池辺和弘会長(九州電力社長)は、記者会見で、「(温室効果ガス排出量を実質ゼロにする)カーボンニュートラルの達成には原子力は絶対必要だと思っているので、記載してほしかった」と述べたほか、足元では、火力発電の燃料として使う液化天然ガス(LNG)や原油などの価格の高騰により、燃料価格の動向を数ヶ月先の料金に反映する仕組みとなっている「電気料金」に上昇圧力が続く見通しであることから、「原子力発電の再稼働は経済性という意味でも価値がある。電気料金の上昇を防ぐ意味でも原子力は大事だ」と述べました。
 
一方、CO2の排出量が多い石炭火力発電をめぐって欧州を中心に全廃の機運が高まっていることに関しては「エネルギー情勢は各国で違いがある。一律に新設禁止とか全廃とかを決めるべきではない」と疑念を呈したともあります。
 
資源小国、陸続きでなく海に囲まれた島国である我が国こそ「超現実的な」エネルギー政策でなくてはならないことは火を見るより明らかですが、「脱炭素化」の言葉にそのことを見失い、国力の衰退を招くと真剣に憂う訳ですが、嘆いていても何も始まりませんので、私自身は一人でも多くの方に日本のエネルギー事情についてご理解をいただけるよう、できることを地道に取り組んでいきたいと思います。
 
最後に、「再エネか原子力か」の二者選択思考は不毛な議論を呼ぶだけであり、早期に脱しなければならないと、エネルギー基本計画決定のこの日に改めて認識を強める次第です。