アルマ望遠鏡の成果から思う、今の日本を生きる世代の責任

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先週21日(旧暦8月15日)は、地球と月、太陽の位置関係から、8年ぶりの満月となった「中秋の名月」が話題になりました。
 
完全に解明ができていないこの宇宙に神秘を感じつつ、天体に思いを寄せるというのは、日本人にとって古からの習わしでもあると思うところですが、その「宇宙の謎」を解き明かすため日本の技術が大いに貢献しているとのニュース。
 
自然科学研究機構「国立天文台」などの研究チームが、南米チリの高地にあるアルマ望遠鏡を用いた探査で、約130億年前の宇宙で塵に埋もれた銀河を複数発見、このうちのひとつは「観測史上最古」の隠れ銀河だったとのこと。
 
このアルマ望遠鏡について、国立天文台のホームページを見てみると、正式には「アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計」と言い、南米チリ共和国北部、標高5000メートルのアタカマ砂漠に建設された電波干渉計のことで、2011年に科学観測を開始し、日本を含む東アジア、北米、欧州南天天文台の加盟国と建設地のチリを合わせた22の国と地域が協力して運用しており、口径12メートルのパラボラアンテナ54台と口径7メートルのパラボラアンテナ12台の、合計66台を結合させることで、1つの巨大な電波望遠鏡を作り出しています。
 
日本は計画全体のおよそ4分の1の貢献をしており、パラボラアンテナは66台のうちの16台、電波をとらえる受信機は10種類のうち3種類を開発したうえ、日本製の16台のアンテナで集められた信号を処理するためのスーパーコンピュータも日本が開発したものであり、アルマ望遠鏡には、日本の最先端技術が惜しみなく投入されています。
 
アルマ望遠鏡は、人間の目には見えない電波(波長数ミリメートルの「ミリ波」やそれより波長の短い「サブミリ波」)を観測でき、ガスや塵は恒星や惑星の材料であるため、恒星や惑星がどのようにして生まれるのか、それらの集合体である銀河がどのように生まれ、進化してきたのかを調べる研究がアルマ望遠鏡を使って盛んに行われていることに加え、宇宙を漂うガスの成分を調べ、生命の起源に関連するアミノ酸のような有機分子を探索する研究も進められています。
 
視力6000に相当する高い分解能と、従来の電波望遠鏡を100倍上回る高い感度で、アルマ望遠鏡は「私たちの起源」を宇宙に探ります。
 

【アタカマ砂漠に並ぶアルマ望遠鏡(国立天文台ホームページより)】
 
つまりは、宇宙初期における銀河の形成や進化への理解に役立つと見られ、世界各国が運用に参加する「理想の望遠鏡」アルマ望遠鏡は、2019年のブラックホール撮影にもつながるなど、「宇宙の謎」解明に欠かせない存在の中心に日本の技術があるということは大変誇らしいことと感じた次第です。
 
こうして世界に誇る日本の技術を見るに、どうしても民主党政権下で時の蓮舫行革大臣が述べた「2番じゃダメなんですか」の言葉が蘇ってくる訳ですが、やはり「2番じゃダメ」なんです。
 
宇宙の起源や天体観測とスケールの大きなことと比較にならないのかもしれませんが、世界に誇る日本のものづくり産業、原子力産業などに関しては、コスト至上主義やエネルギーコストの増大(再エネ賦課金による電気料金高騰)で既に失われたものが多くあることに加え、2050年CO2実質排出ゼロに向けたカーボンニュートラルの流れの中で、今後は鉄鋼、化学、セメント等のエネルギー多消費産業は特に、国内での操業を止めていくことが予想されるとの指摘がされています。
 
日本の成長を支え、屋台骨である産業力、技術力、(安定で低廉な)電力供給力が低下することは、即ち国家の衰退に直結することは誰が考えても明らかであるのに、「イノベーション」と「野心的」の言葉でごまかし、将来に淡い期待を寄せるかの現状を心の底から危惧するところです。
 
先人たちが長い年月をかけて培われてきたものを外的要因で「捨てさせられる」のではなく、このままでは「自らの手で放棄する」ことになることだけは、今を生きるもの、将来世代に責任を持ってバトンタッチすべき世代として何としても阻止せねばならず、それを変えられるのはただひつ「政治判断」でしかありません。
 
私自身、そこに携わるものとして何の貢献もできていないことに忸怩たる思いですが、それを嘆いていても仕方ありません。
 
自分ができることは、こうした危機的状況にあること、選択すべき道は何かをひとりでも多くの方にお伝えし、世論から変えていくことしかないと思い、今後も引き続き、その部分においての役割を果たす所存です。
 
本日は、アルマ望遠鏡の成果から今の日本を生きるものの責任という、妙な流れとなってしまいましたが、その点ご容赦いただき、少しでもご理解をいただければ幸いに存じます。