「原子力由来」第4の水素は敦賀市が先駆者に

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世界各国が「あらゆる脱炭素オプションを総動員する」との考えに基づき、それぞれの取組みを進めていることは、これまでもご紹介してきているところ。
 
技術革新が進む中、注目されるエネルギー源のひとつに「水素」がありますが、昨日の日経では、「“原子力由来”第4の水素、米欧が実用化へ日本出遅れ」との記事が掲載されていました。
 
「原子力発電所の電力で製造する水素が、米欧などで実用化に向け動き始めた。夜間など電力需要が少ない時間帯の余剰電力を活用し比較的低コストで量産できる点や、エネルギーを自給できる利点がある。もっとも、反原発感情や安全基準の厳格化に伴うコスト増など懸念や課題も多い。日本では商用化のメドが立っておらず、出遅れている。」(原文そのまま抜粋)
 
反原子力感情を煽り続け、実際、現時点において最もコスト安の原子力より、あたかも太陽光発電の方が安いなどと報じ、「出遅れさせたのは誰だ」と思わず憤りを感じてしまいましたが、日経新聞でさえどこか他人事で記事を書かれているようです。
 

【日経電子版の当該記事より引用】
 
コスト比較についてはご覧の通りですが、水を電気分解して生成する水素は、生成プロセスや原料で便宜上の呼称(色分け)があり、化石燃料で二酸化炭素(CO2)を回収・貯留(CCS)しない場合は「グレー」、化石燃料からをCCS付きで生成すると「ブルー」、再生可能エネルギーで生成する場合は「グリーン」、そして原子力発電由来は「イエロー」(パーブルの場合もあり)などに分類されています。
 
水素を色分けするのは、脱炭素化への寄与度を念頭に何由来かをはっきりさせるためで、「グレー」はコスト安だがCO2を排出する、「グリーン」や「イエロー」はコスト高だがCO2は排出しないということで、産業化に向けた課題はこのあたりの兼ね合いであることがお分かりいただけるかと思います。
 
原子力と水素で言えば、昨年10年ぶりに再稼働した日本原子力研究開発機構(大洗研究所)の高温ガス炉試験研究炉(HTTR)があり、原子炉から熱を取り出し、主原料の水を化学反応させて水素を生む技術の開発、知見の蓄積をしているところですが、こと「原子力発電所の電力で製造する水素」といえば、ここ敦賀市であります。
 
元々、福井県の嶺南Eコースト計画と連動する中で、関西電力のメガソーラーで発電した電気で水素を生成する(グリーン水素)バーチャルパワープラントに向けて取組みを進めている敦賀市ですが、2022年度からは、原子力発電所で発電した電力で水素を生成する実証実験を始めるとのこと。
 
実は私自身、昨年の議会一般質問にて、嶺南エリアのまさに地産であり、安定的に供給できる「原子力由来」で水素生成することを提案した訳ですが、こうして何由来の電源かを特定するシステムが構築されつつある中、嶺南地域にある原子力発電所とで実証が進み、国内の先駆者となることを期待するところであります。
 
なお、水力の揚水発電所(原子力の夜間帯の余剰電力を用い揚水、昼間に発電)がそうであるよう、効率性とコストを考えれば、あくまでも余剰電力で生成することがポイントと考えるところであり、産業利用に拡大していくための課題などについては、自身も把握していきたいと思います。
 
こうして、水素生成の分野でも活用されつつある原子力発電ですが、現行のエネルギー基本計画では、「革新的な水素製造技術の開発などに取り組む」と研究開発を謳う一方、「原子力依存度は低減する」との文言も並び、分かりにくさこの上ない玉虫色の記載となっています。
 
本業の原子力発電のあり様や将来に困惑しているようではいけませんので、こうした動きも念頭に、やはり基本計画へは「原子力を最大限活用」と明確に記載いただき、人材も技術も次代につないでいかねばと、強く思う次第です。