福井県主催の「原子力発電所の審査に関する説明会」が開催される

ブログ 原子力

昨日「番宣」させていただいたFM敦賀ハーバーステーションでのラジオ出演。
 
事前にナビゲーターの西藤さんと軽く打ち合わせをした後、川端耕一議員とともにスタジオ入りをし、いざ本番。
 
緊張を解きほぐすかのような西藤さんのリードもあって、議会報告会の趣旨や内容はもとより、今回RCN放映やYouTube配信するに至った市議会としての考え、思いなども何とかお伝え出来たかと思います。
 
またRCN放映前にはアナウンスさせていただきますが、ひとりでも多くの方に議会に関心を持っていただけるよう、引き続きお声掛けしていきたいと思います。
 
さて、初のスタジオ収録体験に続き、昨日のメインイベントは福井県主催の「原子力発電所の審査に関する説明会」。
 
事前の開催案内においては、会場参加のほかYouTube配信もされるとありましたが、こうした説明会はやはり肌感覚で雰囲気を感じなくてはと、迷わず「会場参加」で申し込みをし、会場の福井フェニックスプラザに行ってまいりました。
 
開会の18時でざっと会場を見渡すと、報道機関を除く参加者はざっと100名を少し超える程度であったかと思いますが、知った方もチラホラ拝見し、関心の高さを感じたところ。
 
今回の説明会の内容は、
(1)基準地震動の策定
(原子力規制部地震・津波審査部門 安全規制調査官 小山田 巧 氏)
(2)美浜3号炉および高浜1、2号炉の審査結果
(地域原子力規制総括調整官・福井担当 西村 正美 氏)
(3)質疑応答
 
ということで、関西電力が保有する原子力発電所全般に関わるものでしたが、本来の趣旨は、昨年12月4日に大阪地方裁判所における「大飯発電所3、4号機設置変更許可処分取消請求訴訟(行政訴訟)」に関し、原告の請求を認容する判決が下されたことを踏まえ、被告側である国側の見解(審査の妥当性)について説明を求める声が挙がっていたことを受け開催されたものと理解しています。
 

【会場内は写真撮影禁止でしたので資料のみ掲載】
 
私がどうしても参加したかった理由もこの説明を聞きたかったからということですので、今回はこの点(上記の(1)の部分)に絞ってご報告させていただければと存じます。
 
まず、地裁判決の報道では、裁判長が、耐震対策の元となる基準地震動の設定を巡り「規制委の調査審議および判断の過程には、看過しがたい過誤、欠落があるものというべきである」と断じた言葉ばかりが取り上げられている感がありますが、判決のポイントの正しくは以下の通りとなります。
 
【判決のポイント】
原子力規制委員会は、経験式が有するばらつきを考慮した場合、これに基づき算出された地震モーメントの値に何らかの上乗せをする必要があるか否か等について何ら検討することなく、本件申請が設置許可基準規則第4条3項に適合し、地震動審査ガイドを踏まえているとした。このような原子力規制委員会の調査審議及び判断の過程には、看過し難い過誤、欠落があるというべきである。
 
つまり、頭に置くべきは、大飯発電所3、4号機審査の基準地震動策定過程において、「何らかの上乗せをしていない」からダメなのではなく、「何らかの上乗せをする“必要があるか否か”等について何ら検討することなく」と指摘している点にあります。
 
審査を担当する原子力規制委員会の説明や資料自体、専門的な言葉が多く、聞き逃してはいかんと必死でついていった訳ですが、上記の点を反証する説明の概略は次の通りでした。
 
【基準地震動の策定に係る審査の基本的考え方】
◉基準地震動の策定に係る審査は、設置許可基準規則及びその解釈に適合するか否かを地震ガイドを参照しながら行うものであり、基準地震動が、地震動評価に大きな影響を与えると考える不確かさを考慮して適切に策定されていることを、地震学及び地震工学的見地に基づく総合的な観点から判断している。
 
◉こうした考えのもと、大飯発電所の地震動評価の方法は、最新の科学的知見として、地震調査研究推進本部(※1)によりまとめられた「震源断層を特定した地震の強振動予測手法(レシピ)」(※2)に従ったものとなっている。
 
(※1)地震調査研究推進本部とは、平成7年に発生した阪神・淡路大震災により、我が国の地震防災対策の多くの課題が浮き彫りとなり、とりわけ地震に関する調査研究の成果が国民や防災を担当する機関に十分伝達され活用される体制になっていなかったことを踏まえ、行政施策に直結すべき地震に関する調査研究の責任を明らかにし、これを政府として一元的に推進するため、設置された政府の特別の機関。
 
(※2)震源断層を特定した地震の強振動予測手法(レシピ)とは、①最新の知見に基づき、最もあり得る地震と強振動を評価するための方法論、②「レシピ」は、震源断層を特定した地震を想定した場合の強振動を高精度に予測するための「誰がやっても同じ答えが得られる標準的な方法論」を確立することを目的としている。
 
→→→この時点で、現在国内で最もベーシックで信頼ある手法にて評価されていると理解(最新の知見やあり得る地震と強振動も考慮)
 
また、「不確かさ」の反映や「保守的」に評価されているのかといった部分に関しては、主な点として、
【基本ケース】
◉震源断層の長さについて、当初申請時の「FO-A~FO-B断層」(断層長さ約35km)と「熊川断層」(断層長さ約14km)との間には約15kmの離隔があったことから「連動」を考慮していなかったが、これを両断層を連動(断層長さ約64km)するものとし評価。
 
◉断層幅については、当初申請では上端深さ、下端深さをそれぞれ4km、18kmに設定していたものを、速度構造や微小地震の発生状況を考慮して、上端深さを3kmと評価結果が厳しくなるよう見直し。
 
→→→これらの見直しにより、※地震モーメントは、当初申請時の約3.70倍となった。
   ※断層を境にした2つの面を異なる方向にずらそうとするエネルギー
 
【不確かさケース】
「不確かさケース」とは、「基本ケース」の地震動評価結果を以下の項目において、さらに保守性を確保するため、震源特性パラメータをより厳しい結果が出る値に設定することであり、以下の点を見直し。
 
◉短周期の地震動レベル(1倍 → 1.5倍)
◉断層傾斜角(90° → 75°)
◉すべき角(0° → 30°)
◉破壊伝播速度(0.72β → 0.87β)
◉アスペリティ配置(敷地近傍に設定するなど、敷地への影響が大きくなるよう2つの形状を設定)
◉不確かさの重畳(短周期の地震動レベル1.25倍+破壊伝播速度0.87β)
 
→→→最終的に、全てのケースを踏まえ算出された地震動は「856gl」となった。
 

【不確かさを反映したことによる地震動評価結果(説明会配布資料より)】
 
ただでさえ分かり難いところ、文字だけで理解するのは難しいとも思う訳ですが、私はこの説明を聞いて、「“これでもか”というほど十分に、あらゆる条件を加えた保守側の評価がされている」審査であったものと理解しました。
 
なお、原告側が主張する「上乗せ」について、原子力規制委員会は、「審査では、入倉・三宅式を用いて地震モーメントを計算する際、式の基となった観測データのばらつきを反映して計算結果に数値を上乗せする方法は用いていない」とし、「このような方法は、強震動予測レシピで示された方法ではなく、且つこのような方法の科学的根拠を承知していないからである」とまで言い切っています。
 
現に、仮に「上乗せ」したとする評価は、レシピで参照する知見に反することや震源モデルに「破綻が生じる」ことが明らかとなっています。
 

【例:経験式に何らかの値を上乗せする操作を行った結果(説明会配布資料より)】
 
以上が、大飯発電所3、4号機審査における基準地震動策定プロセスの経過、真実であります。
 
規制委員会からの説明の後、予め提出されていた質問事項への回答、さらには会場からの質問がされましたが、「質問にきちんと答えていない」、「この説明では納得できない」のオンパレード。
 
私にとっては、この説明を聞いて「納得できないと言うことが納得できない」訳でありますが、そこは個々の受け止めによるもの。
 
ただ、「質問は簡潔明瞭に」との司会者からの声を無視するかのように、弁論大会さながらの質問が繰り返され、終了時間は予定の19時30分を1時間近く超過。
 
ルールが守られなかったことは、会場で時間を共有する立場として残念でなりませんでした。
 
そうしたことから、帰りの北陸道でラーメンをすすり、家に着いたのは22時となりましたが、思えばこうした雰囲気を肌で感じるために会場に足を運んだことを思えば、大いに得たもの多き1日となりました。
 
大飯発電所3、4号機の審査に関しては、科学的且つ客観的に見て、私は完全に国側の主張・説明に分があると思いますが、ここは既に司法の場。
 
昨日聞いた中身を頭に叩き込んで、この後の裁判を注視していきたいと考えます。
 

【最後に。。。初出演の記念としてラジオ生放送中の様子を掲載させていただきます】