「知っとるけ?小浜線ものがたり」から得た大切なこと

ブログ 敦賀の歴史・文化

今朝は「台風一過」の晴天を期待しカーテンを開けましたが、見事に期待を裏切る“どんより曇り空”
 
予報によるとこの後は晴れマークとなっていますので、予報的中に期待しつつ、三連休の中日、貴重な今日一日を有意義に過ごしたいと思うところです。
 
さて、これまでもこのブログにおいて、気比史学会主催の市民歴史講座などを通じ、敦賀の歴史や文化の深さ、学ぶ楽しさ、そこから得られる「今ある資源を生かしながら保存する」ことの大切さを記載してきているところですが、昨日はつるが観光ボランティアガイド主催の「鉄道カフェ」にて、改めてそのことを感じました。
 
ちなみに「鉄道カフェ」とは「港と鉄道のまち敦賀」を広く市民の皆さまに知っていただくことを目的とし、平成26年度から開催しており、今回で第22回目となるとのこと。
 
令和3年第1回の開催となる昨日は、事前申込みをしたうえで参加。
 
松原公民館を会場とし、新型コロナ対策もあって定員を40名に絞っての開催でしたが、開始時間にはほぼ定員どおりの参集があり、敦賀の鉄道歴史ファンの関心の高さを感じた次第です。
 
そして、今回のテーマは、「小浜線ものがたり 〜小浜線の今昔〜」
 
講師に小浜線鉄道遺産を守る会代表の桝郷三好氏をお招きし、今から100年前に建てられた蒸気機関車用の給水塔(小浜駅に現存)を始めとする鉄道遺産の保存や「知っとるけ?小浜線ものがたり」の発刊などを通じ、小浜線のことを広く知っていただく活動をされているお話しを拝聴し、大変多くの学びと大切な気づきがありました。
 
せっかく学んだこと、しかも身近にある小浜線の歴史ということとあっては、参加者だけのものにしておくのは勿体ないということで、市民歴史講座と同様、本日は概要メモを記載しますのでご覧いただければと思います。
 

【小浜線鉄道遺産を守る会編集の「知っとるけ?小浜線ものがたり」と大正10年当時の写真】
 
【小浜線ものがたり 〜小浜線の今昔〜】
 
(1)はじめに
◉鉄道に縁もゆかりもないところから、小浜線の鉄道遺産を守る活動に携わることになり、手探りで模索する中、県立図書館で見つけた一冊の記録「小浜線建設工事概要」が契機となった。鉄道建設工事の鉄道省敦賀建設事務所が記録した大正時代、約100年前の記録を読み解くことから活動が始まった。
◉小浜駅にある給水塔(蒸気機関車時代から使用)は現存するものの中でも貴重な鉄道遺産なのに、市民にすら知られていないことが残念であり、小浜線の歴史を含め、市民の方に知っていただくために「知っとるけ?小浜線ものがたり」を作成、2,000部発行し、市民や公民館に配布した。
 
(2)小浜線の歴史
◉明治25年に鉄道敷設法「京都府殿田附近ヨリ福井県小浜に至ル鉄道」が規定。
◉明治28年には、同法に「舞鶴ヨリ福井県小浜ヲ経テ敦賀に至ル鉄道」が追加。
・若狭地方選出の小畑岩次郎衆議院議員が帝国議会で北陸線の改正を提案。
・当初は「敦鶴線」と呼ばれていた。
◉明治35年「敦鶴線」は北陸と山陰を結ぶ日本海側のバイパス路線としての期待もあり、早期着工すべき「第一期線」に昇格。
◉明治39年、地元では敦鶴鉄道規制同盟会が設立される
◉大正4年5月、敦賀側から暫次建設開始。
◉大正6年に敦賀〜十村間開業。
◉大正11年には若狭高浜〜新舞鶴館開業により全線開通。
・小浜出身の山口嘉七代議士が「小浜線と名付けるべし」と断固主張し、その名が決まった。
・敦賀・小浜間、小浜・新舞鶴間にそれぞれ6往復の列車が運転され、そのうち2本は京都への直通列車で、京阪地方へは一日で往復できるようになった。
・停車場は、既設の敦賀・舞鶴を除いて12箇所を新設。うち、十村と小浜の停車場に給水の設備を設けた(小浜の給水塔は国内で現存する20基あまりの中でも良好なもの)。
・なお、現在、敦賀〜東舞鶴まで24の駅があり、うち11の駅が無人となっている。
◉昭和43年には、名古屋〜小浜〜東舞鶴間で臨時急行「エメラルド」の運転がスタート。京都、大阪からは「おばまビーチ」、「わかさビーチ」といった海水浴臨時列車が運行されて、賑わいを見せた時期もあった。
◉昭和46年に蒸気機関車廃止、ディーゼルエンジン機関車導入
◉平成15年に電化開業
◉平成29年に敦賀〜十村間開業100周年
◉平成30年に十村〜小浜間開業100周年
 
(3)給水塔の保存活動、小浜線を知ってもらう取組みについて
◉毎月1回、会では保存に関するトータル的な議論を続けている。
◉まずは子ども達に小浜線の歴史を知ってもらうことと、駅のプラットホームで給水塔の写生大会を実施した(夏休みの恒例行事)。
◉絵は市役所のロビーや公共施設などに掲示。
◉蒸気機関車も子ども達に描いてもらった。
◉地元の鉄道を身近に感じてもらうためには、話しをするだけでなく、小浜線に乗ってもらうことが重要と、小浜から西は東舞鶴、東は十村までの往復ツアーを行ったほか、敦賀〜長浜間130年記念の行事にも参加した。
 
(4)さいごに
◉国鉄にお勤めされていた方からの小浜線への思いを綴った「小浜線の思い出」も作成、発刊した。
◉小浜線の写真パネルは後日、都賀の鉄道資料館に展示される予定。
 
そして最後に、「知っとるけ?小浜線ものがたり」の編集協力人であり、枡郷さんの娘さんでもある岩崎春美さんが書かれた「あとがき」にホロリときてしまいましたので、併せて掲載させていただきます。
 
【あとがき】
父が小浜駅にある給水塔の保存活動に取り組んでいることを知ったのは、最近のことです。そこには、利害とは無関係なところで一生懸命、活動に取り組んでいる姿がありました。地元、小浜を何とか盛り上げたという熱い思いを感じ取り、私も小浜に生まれ育ったひとりとして、この度微力ながら冊子作成に協力させていただきました。
海あり、山あり、田園風景あり、そして夕日のきれいな小浜線からの眺めは、本当に気持ちが落ち着きます。いにしえの人たちがずっと見守り、静かにたたずむ給水塔。小浜のシンボルとして、これからも皆で大切にしていきましょう。
この冊子を通して、皆さまが地元の文化財の存在を知り、愛着を感じるきっかけになれば幸いです。(編集協力・岩瀬春美)
 
大正6年の敦賀〜十村間(現若狭町)開業からは今年で104年、大正11年の新舞鶴までの全線開業からは99年の歴史を持つ小浜線。
 
知れば知るほど興味が湧く路線な訳ですが、旧北陸本線同様、この歴史ある鉄道遺産をどう生かし保存していくか。
 
これは、今後の北陸新幹線延伸と並行しての大きな課題でありますが、一方こうして嶺南一円に広がる魅力と捉えれば、まだまだ秘めたポテンシャルありとの気づきも得た次第。
 
これまで学んだこと、そして昨日新たに得た気づきをしかと胸に置き、引き続き、先人達が残した歴史や文化を大切にし、今ある資源を最大限生かすよう尽力していきたいと思います。
 
【会場ホールの壁面には、小浜線の貴重なパネルが掲載されていましたので、いくつか紹介させていただきます】