経済産業省主催の「エネルギー政策」説明会が開催される

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福井県議会においては連日、関西電力が保有する3基の原子力発電所の40年超運転と使用済み核燃料に係る中間貯蔵施設の問題について議論が繰り返されている状況にあります。
 
こうした中、先月2月9日には、福井県主催の「原子力発電所の審査に関する説明会」が開催され、この時は大飯発電所3,4号機に関わる地盤・耐震性の審査、評価について、原子力規制庁からの説明がメインでありました。
 
これに続き、昨晩は、今度は経済産業省資源エネルギ-庁主催による「エネルギ-政策と高浜発電所1・2号機、美浜発電所3号機に関する住民説明会」が、同じく福井フェニックスプラザで開催されたことから、私も事前申し込みのうえ、会場参加してまいりました。
 

【会場の写真撮影は禁止であったことから、YouTube配信画面を撮影】
 
この日の議題は以下の通り。
 
(1)我が国のエネルギー政策について(経済産業省 資源エネルギー庁)
(2)高浜地域と美浜地域の原子力防災について(内閣府 原子力防災担当)
(3)高浜発電所1・2号機と美浜発電所3号機に関する安全対策の取り組みについて(関西電力株式会社)
 
昨日、来週行います代表質問通告の内容をお知らせしましたが、私自身「エネルギー政策」を取り上げていることも踏まえ、ここでは経済産業省からの(1)の点だけご紹介したいと思います。
 
まず「日本のエネルギー情勢」に関して、日本のエネルギー政策の要諦が、安全性(Safety)を前提としたうえで、①エネルギーの安定供給(Energy Security)を第一とし、②経済効率性の向上(Economic Efficiency)による低コストでのエネルギー供給の実現と同時に、③環境への適合(Environment)を図るため、最大限の取り組みを行うものとし、様々な電源を組み合わせた「エネルギーミックス」により進めるとしています。
 
よって、エネルギー政策の基本的視点を、これらの頭文字を取り「3E+S」との言葉で表しています。
 
この「3E+S」ですが、安全の「S」が大前提であるとすれば、正しくはSが先に来る「S+3E」ではないかということで、ここではそのように使わせていただきます。
 
さて、その「3E」を個別に見てみると、
 
①「エネルギーの安定供給」の観点では、エネルギー自給率の低下が顕著。
東日本大震災前2010年度:20.2%であったものが、2019年度では12.1%に低下。
これは、G7で最下位、OECD36ヵ国中2番目に低い水準となっています。
 
原子力は国際的に「国産エネルギー」と位置付けており、日本では「準国産」の原子力発電の再稼働が東日本大震災以降、少数に留まっていることが起因。
 

【経済産業省資源エネルギー庁説明資料より】
 
②「経済効率」の観点では、電気料金の上昇の問題。
◉一般家庭(2人以上世帯)では、同じく2010年度:約9.8万円(モデル的試算、いずれも1年間の合計値)であったものが、2019年度では約11.9万円(22%上昇)。
◉中規模工場では、2010年度:約4,400万円が、2019年度では約5,500万円(約25%上昇)。
 
東日本大震災以降の原子力発電所長期停止の影響により、一般電力事業者が電気料金値上げをせざる得なかったことが要因。
 

 
③「環境適合」の観点では、電力セクターにおけるCO2排出量はやや減少。
2010年度:4.55億トンであったものが、2019年度で4.40億トン(1,500トン減少)となっています。
 
ちなみに、2018年度までは増加傾向であり、原子力発電所の再稼働により火力の焚き増しが抑えられたことにより、減少傾向に転じたもの。
 

 
この「3E」の状況を見ても、原子力発電の稼働如何で数値に大きく影響する、つまり各側面に対する寄与度の大きさが分かっていただけるのではと思います。
 
次に「エネルギー政策」に関しては、現行の「第5次エネルギー計画」は、先に述べた「S+3E」の基本的考えに基づき、各電源の位置付け、2030年における構成比率を設定し、原子力発電においては「20〜22%」としたうえで、2050年に向けては「エネルギー転換への挑戦」として、あらゆる選択肢を追求する「野心的な複線シナリオ」を掲げていることは周知の事実かと思います。
 
本年は、この「エネルギー基本計画」の改訂年次(3年ごと)にあたっていることから、資源エネルギー庁の基本政策分科会などの場にて、基本的考えは堅持しつつ、大きいのはやはり、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、「2050年カーボンニュートラル」、「脱炭素社会の実現」を目指すとしていること。
 
カーボンニュートラルの実現に向けては、梶山経済産業大臣が「再エネ、原子力など使えるものを最大限活用する」、「全ての手段や技術をしっかりと駆使していかなければ達成は難しい。そういった観点でも原子力をしっかり活用していくということ。」などと過去の記者会見でも述べられているところであります。
 
こうして説明は進み、(2)、(3)までを終えた後、会場参加者との質疑が行われました。
 
同じ敦賀市議会議員として参加されていた和泉明議員からは、「2050年カ-ボンニュ-トラルに伴う政府のグリ-ン成長戦略の内容も踏まえ次期「エネルギ-基本計画」を策定される段階であるが、どういった方向で進んでいるのか。また、原子力発電の新増設・リプレ-スについてはどう取り扱われるのか」との質問に対し、資源エネルギー庁からは、「2050年に向けては小型炉など原子力のイノベーションを進めていく。また基本計画を検討する基本政策分科会の場においては、有識者の一部からも新増設・リプレースの必要性を求める意見が挙げられている。エネ庁としては、この先電力需要が1.5倍に伸びたとしても2050年の原子力比率は20%程度を維持するとの考えもシナリオのひとつとして提示をしており、そういった中での議論を見守りたい」との回答がありました。
 
この質疑をどう受け取るかは、皆さんそれぞれかと思いますが、私は、既に24基もの原子力発電所が「廃炉」を決定していることや、40年超運転も含めた再稼働の進み具合などを踏まえたとしても、「S+3E」、さらには「カーボニュートラル」の達成に向けては、新増設・リプレースの選択肢は無くてはならないものと強く認識したところです。
 
先に述べた、エネルギー情勢に加え、災害に対する脆弱性、中東からの資源がなければ成り立たない地政学的リスクなども最大限考慮した政策でなければ、国家の根幹を成す「現実的なエネルギー政策」とは言えないことから、この点、昨晩改めて認識できたことを胸に、来週、自身の代表質問に望みたいと考えます。
 

【全ての面で完璧なエネルギーはありません。少資源国の我が国において採るべき電源構成についてお考えいただく機会となったのであれば幸いに存じます。】