欧州、中国の「電力危機」と課される「省エネ」から思うこと

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「シャワーは5分以内」「料理には余熱利用を」
 
このような「省エネ」を政府から呼び掛けられたとしたらどう受け止めるでしょうか。
 
まさか先進国ではなかろうと思うこの呼び掛けは、まさに今、ドイツで実際に起きていることであり、政府が国民向けの省エネキャンペーンを実施する中で、冒頭の呼び掛けのほか、首都ベルリンでは観光地の旧王宮など200ヶ所で夜間照明を停止、一部自治体では公共施設での暖房や給湯の制限を決めているとのこと。
 
これは、ロシアがドイツへの主力ガスパイプライン「ノルドストリーム」による供給を6割削減すると発表したのを受けた措置で、緊急調達計画に基づく3段階の2番目にあたる「非常警報」を政府が発令したことによるものであり、電気料金の高騰とも相まって、まさにエネルギー危機を表す事態がここまで差し迫っていると認識するところです。
 

【ガス供給を6割まで削減される重要なガスパイプライン「ノルドストリーム」】
 
また、欧州を襲う熱波と少雨で、ドイツ国内で最も重要な輸送航路とされるライン川の水位が低下しており、これにより石炭の輸送も停滞するなど、代替電源である石炭火力発電所稼働への影響も懸念されているとあります。
 
ロシアのガス供給大幅削減を受けたこうした対応は、ドイツのみならず欧州各国で生じており、スペインでは今月1日、官民で省エネを進める政令が閣議決定され、公共施設のほか、飲食店や映画館などの商業施設を対象に、冷房は27度以上、暖房は19度以下に設定するよう基準を設けたほか、無人の公共施設、店舗のショーウインドーは22時以降の消灯が定められました。
 
また、イタリアでも政府が「サーモスタット作戦」と名付けた省エネ作戦を実施しており、公共施設の空調は19~27度とする基準を設けたとあります。
 
一方、アジアに目を向けると、顕著なのは中国。
 
中国各地では60年ぶりともいわれる記録的な猛暑と水不足に見舞われており、四川省などでは電力需給が逼迫(主に水力発電の水不足)し、トヨタなどの工場に操業停止が命じられたとあります。
 
事態を深刻視した習近平指導部も、電力不足は景気悪化や社会不安につながるため、今秋の党大会を前に神経をとがらせているとみられ、対応に乗り出しているようです。
 
翻って日本。
 
欧州や中国のレベルにまではいかないにしろ、厳しい電力需給に変わりはなく、とりわけ今冬の電力供給に関しては予断を許さない状況となっています。
 
こうしてみれば、世界がエネルギー危機にあり、裏を返せば、自国の電力をいかに安価で安定的に供給できるかのエネルギー資源争奪戦になっていると言えます。
 
日本のLNG輸入量の約9%を占める「サハリン2」の調達を巡っては、ロシアの新会社が従来と同じ条件を維持する契約を提示しているとも報じられていますが、何せ相手はロシア。
 
欧州がそうであったよう、突然の契約変更を要求してくるリスクは大いにあります。
 
こうして、エネルギー安全保障は単一国で考えられるものでないことは容易に理解できることですが、少資源国の日本は一層、この問題を真剣に考え、具体的に対応せねばならないことも、同じく容易にご理解いただけるのではと考える次第です。