お互いの生徒が美しかった「激闘」 〜甲子園史に残る早実vs大社戦〜

ブログ 人生観

お盆も終わり、約1週間帰省していたわが家の長女も昨日、東京へ戻って行きました。
 
最後のお昼には、故郷のパワーチャージとばかりに「ヨーロッパ軒」をしっかりと味わってもらいましたが、敦賀のソウルフードも胸に、何をおいても健康第一でまた頑張って欲しいと思います。
 
こうしてお盆も過ぎると晩夏、季節は秋へと言いたいところですが、私の中で夏の終わりを告げるのは「甲子園の決勝戦」。
 
つまりは、今はまだ夏真っ盛りな訳ですが、それを象徴するかの如く、熱戦続く「第106回全国高校野球選手権大会」で昨日は「壮絶な」試合がありました。
 
その試合は、ベスト8進出を決める3回戦最後に登場した、早稲田実業(西東京)vs大社(島根)。
 
夏の選手権第1回から出場を続ける伝統校同士の対決は、まさに手に汗握る大接戦のうえ、大社が延長11回タイブレークの末、3―2で早稲田実業(以下、早実)にサヨナラ勝ちし、93年ぶりの準々決勝進出を果たしました。
 
両校ともに2回戦をタイブレークで制し勝ち上がってきましたが、この日も中盤まで同点のまま進む緊迫した試合展開。
 
試合が動いたのは1―1の7回表、早実の先頭打者が放った打球をセンターが後逸し、まさかのランニングホームランで勝ち越し。
 
万事休すと思われた9回裏、今度は早実の守備の乱れもあり、大社がスクイズで追いつき、なおも一死二、三塁の場面で球場がどよめく奇策に打って出たのが早実の和泉監督。
 
守備固めでレフトを交代させたと思いきや、代わって入った西村選手は外野に向かわず、ピッチャーと三塁の間を守らせる「内野5人シフト」を敷き(もちろんレフトはガラ空き)、続く大社の打者、藤原選手の打球は狙い通りそこに転がり、一塁へ投げて二死、さらに本塁に突入した三塁走者もアウトにスリーアウト。
 
記録上は「レフトゴロ」でサヨナラ負けを防ぎました。
 
この作戦を「奇策」と書きましたが、試合後、早実の和泉監督はインタビューで、西村選手の起用について「一番守備が安定している。スクイズだけはさせまいと思って。うまく彼のところにいって処理して、ホームタッチアウトもできた。予選からこういうのがあるよと練習はしていたが、練習試合を含めて試合では初めてだった。」と明かしました。
 
これも「想定内」とイメージのうえ、普段から練習していたことに脱帽した次第です。
 
この後、無死一、二塁から攻撃するタイブレークに入り、この場合の「鉄則」とも言える、まずは送りバントで二、三塁とすることを試みるも、両者素晴らしい守りでこれを防ぎ、試合は11回へ。
 
そして、この試合最大のポイントと言っても良い場面が、11回裏、大社の攻撃で代打で登場した安松選手。
 
両チームあれだけ決められなかった送りバントを、今大会初出場の安松選手が、見事に三塁線上に決めてチャンスを広げ、続くエース馬庭選手が決勝打を放ちサヨナラ勝ちとなった訳ですが、今度は大社石飛監督が、同じく試合後のインタビューで「もちろん(安松選手が)初出場なのは分かっていました。ただ、あの場面で選手たちに聞きました。“ここでバント決められる自信があるものは手を挙げろ”と。すると安松が手を挙げて”サード側に決めてきます”と」と話したところで声を詰まらせ、監督は「私は信じるだけでした」と絞り出しました。
 
また、石飛監督はインタビューで「選手、生徒の夢と可能性は無限大」、「試合の途中、ベンチではサヨナラで決めると言っていた」と、強豪早実を相手に凄まじい緊張感の中で、選手の可能性を信じ、勝利に向かって鼓舞し采配を振るった姿、言葉に感激した次第です。
 
この試合では、これ以外にも、7回に後逸で勝ち越しを許したセンター藤原選手に「気にするな」と手を振り、イニング終了後ベンチに戻っても励ます馬庭投手の姿があり、また馬庭投手のサヨナラ打に一番最初に抱きついたのが藤原選手であったなど、まさに地獄から天国へ、こうした人間ドラマに人生観を見た気がしたところです。
 
試合後の球場全体から両チームへの惜しみない拍手、早実の和泉監督が試合後のインタビューで涙して語った、「お互いの生徒が美しかった。負けは覚えられてないけど、今日の敗戦は監督を辞めても覚えていると思う」とうなずいたシーンが、この試合を物語っていましたが、まさに「激闘」。
 
甲子園100年の歴史に残る、100年以上の伝統を誇る両校の名勝負に涙し、心から拍手を送った次第です。
 
明治31(1898)年創立で、約3キロ離れた位置にある出雲大社に最も近い大社高校。
 
この日の実況が「神々の国からやって来た少年たちの快進撃は100年の甲子園でまだ続きます!」と言っていたとおり、次の準々決勝でも監督と選手、選手同士が信頼し合うこのチームの快進撃を期待して止みません。
 

【激闘を終えた甲子園球場。夏も残り3日。】