外圧なき「高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定」論議を望む

ブログ 原子力

先日、「原爆」をイメージさせる「原発」ではなく、「原子力発電所」と正しく呼ぶことを述べましたが、もうひとつ「核のごみ」や「トイレなきマンション」と揶揄されることも以前から気にしているところ。
 
ここでいう「核のごみ」とは、原子力発電所から出る「高レベル放射性廃棄物」を表しており、その廃棄物を最終処分する場所の選定などが未だ決まっていないことから、「トイレなきマンション」と呼ばれ、原子力発電を今後も活用することに対するネックであると指摘されている訳であります。
 
現実は現実でそういうことなのでありますが、何やら汚れた悪いイメージを持つ「ごみ」ではなく、ここでも私は言葉の使い方に拘り、正しく「高レベル放射性廃棄物」と使っているところ。
少し長いのですが、以降もそのように引用させていただきますことご容赦いただきたく。
 
さて、その高レベル放射性廃棄物でありますが、これまで最終処分の方法などに関しては、廃棄物を封入したガラス固化体を地下深くに埋設する方法に関して、日本原子力研究開発機構が地盤の比較的硬い「岐阜県瑞浪市」、逆にゆるやかな「北海道幌延町」にて長年に亘り調査研究を重ね、地層埋設処分の実現性について成果を上げてきているところです。
 
私も幾度か瑞浪市の東濃地科学センター(瑞浪超深地層研究所)を見学させていただき、深度500mまで坑道を掘り進め、各大学などとも連携のうえ地道な地層研究を進めてきた姿を確認してきたところです。
 →→→視察の詳細を記載した、以前のブログをリンクします。
 

【深度300m地点の坑道(昨年、敦賀市議会で訪れた時の写真)】

【坑道の全体レイアウト概略図】
 
このような研究を踏まえ、国が平成29年に最終処分の適地を示した「科学的特性マップ」を公表し、原子力発電研究整備機構(NUMO)においては「地域社会と共生する安全な放射性廃棄物の地層処分を実現する」との使命に従い、地層処分に関して国民の皆さんとの話し合いを通じて理解を深めていくため全国の各拠点での説明会開催を継続するなどの取り組みを進めてきているところ。
→→→原子力発電環境整備機構(NUMO)のホームページはこちらから
 
ここまで、前置きが長くなりましたが、このような経過や背景があるなか、昨日は光が差し込むようなニュース。
 
最終処分場選定に向けた文献調査に北海道の「寿都(すっつ)町」が応募を検討していることが明らかになりました。
先ほどの「科学的特性マップ」を公表して以来、初めての応募につながる可能性を持つ自治体の動きとなります。
 
同町では今月下旬に町民との意見交換会を開いたうえで、9月中旬にも応募するかどうかを決めることにしているということです。
 
これを受け、まず高レベル放射性廃棄物について、「持ち込みは慎重に対処すべきであり、受け入れ難い」とする条例を既に制定している北海道は、鈴木直道知事が13日に発表したコメントの中で「私としては、条例を順守しなければならないと考える」との考えを示しています。
 
次に梶山弘志経済産業相は同じく13日、「条例があるのも十分に承知をしている」としたうえで、「次に進むかどうかというのはまた別の段階になる。文献調査はあくまでも文献調査だ」との考えを示しました。
 
また、「寿都町を始めとした複数の基礎的自治体から問い合わせを受けている」と述べ、関心のある自治体が寿都町以外にもあると明らかにしたうえで具体名は「コメントできない」と述べておられます。
 
この最終処分場の問題については、13年前に前向きな考えを発表した高知県東洋町の場合には、反対派が押し寄せるなどして調査の受け入れ断念に至った例があります。
沖縄の辺野古基地にも見られるよう、判断を行うのはあくまでも当該地域の住民の皆さんであり、それ以外の外圧が自治体の意思決定に干渉することはあってはならないことと思う次第。
 
高レベル放射性廃棄物は、万年単位にわたって放射線を出し続けるのは事実でありますが、地上の施設で人間が管理するよりも地下300メートル以深の安定した岩盤中に埋めて隔離する方が、確実性かつ合理性で勝ることは、フィンランドでは既に処分場の建設が始まり、スウェーデンでも建設地が決まっていることが物語っています。
 
最終処分場の選定は、NUMOによって、約20年を要する3段階の調査で進められます。
今回の文献調査は、その第1段階で、既存の地質調査資料や歴史文献などを対象としています。
 
「核のごみ」、「トイレなきマンション」との揶揄をいつまでも続けていては、既に発生している高レベル放射性廃棄物の扱いを将来世代に先送りすることになり、それこそ現代世代の責任において判断、解決をしなければなリません。
 
国のエネルギー政策に深く関わる課題であるということは、国民全員の課題でもある本件に関して、他人ごとと思わず、冷静且つ科学的視点をもって議論の動向を見守っていただけますようお願いいたします。