国家備蓄石油放出の妥当性はどこにあるのか?

エネルギー ブログ

朝方は晴れ間が覗いたかと思いきや、鉛色の空が広がり、強い風雨が降ったり止んだり。
 
12月を前に、いよいよ冬将軍を思わせる天気の昨日でしたが、これも北陸地方の特徴であることから、ガッカリするのではなく、流れる四季のひとつと楽しむくらいの余裕を持って過ごしたいものです。
 
そんな昨日のお昼休みは、原電総連敦賀総支部の皆さんへ活動報告会の機会を頂戴し、自身の議会活動を始め、至近の市政・議会トピックス、さらにはエネルギー政策に関する考えなどについてお話しさせていただきました。
 
とりわけエネルギー政策に関しては、10月22日のエネルギー基本計画閣議決定や先般閉幕したCOP26の裏事情などについてお伝えする中で、「カーボンニュートラルをめざす欧米は、あらゆる脱炭素オプションを総動員している」ことや「脱原子力は世界の潮流ではなく、逆に原子力を一層利用していこうというのが世界の潮流である」ことなどについてお話ししたうえで、つまりは日本の選択すべきは、「再エネ偏重ではないエネルギーベストミックスでしかない」との思いを共有させていただいた次第。
 
このことは母体労組の皆さんだけに言うのではなく、これまでも他の労組さんや地域の皆さんに対してもお伝えしているものであり、自身の役割、ライフワークとして、今後も「日本の国情に則した現実的なエネルギー政策」に関する理解を広く深めていただけるよう活動していきたいと考えます。
 

【昨日の活動報告風景。皆さん熱心に聞いていただき感謝です。】
 
さて、エネルギーに関して言えば、世界的な原油価格高騰に対応し、日米中などの主要な消費国が備蓄石油の協調放出を決めたとあり、国際的な連携で市場に石油を供給し、石油価格の引き下げをめざすとのこと。
 
原油高騰はコロナ禍からの景気回復機運に水を差すだけでなく、インフレにつながりかねないこと、産油国への増産圧力を掛けるなどの考えなどから、備蓄石油の放出を消費国に呼び掛けるバイデン米大統領の言いなりだ、あるいはサウジアラビアなど産油国と緊密な外交関係を構築してきた日本は、産油国への増産要請にもっと積極的に動くべきだなどとの意見のほか、余剰分備蓄石油には限りがあることから、放出したとしても価格の引き下げ効果は限定的(確かに具体的な価格引き下げ効果は聞いたことがない)だとの見方が強い現状にあります。
 
そして、国民民主党の玉木代表などが「法律違反の可能性がある」と指摘しているよう、私自身も問題ではと思うのは、そもそも価格引き下げを目的に国家の備蓄石油を放出して良いのかという点です。
 
日本の原油備蓄は海外有事や災害時などの供給途絶に備えた制度であり、放出による価格引き下げを想定していないことは、先日「トリガー条項凍結解除」のことを記載した際にお伝えしましたが、実際の法律「石油の備蓄の確保等に関する法律」(昭和五十年法律第九十六号)を確認すると目的は以下のようにあります。
 
(目的)
第一条 この法律は、石油の備蓄を確保するとともに、備蓄に係る石油の適切な供給を図るための措置を講ずることにより、我が国への石油の供給が不足する事態及び我が国における災害の発生により国内の特定の地域への石油の供給が不足する事態が生じた場合において石油の安定的な供給を確保し、もつて国民生活の安定と国民経済の円滑な運営に資することを目的とする。
 
さらに、国家備蓄の放出に関する条項を探しましたが、直接的な文言はなく、類するところでは以下のような条項がありました。
 
(国家備蓄石油の譲渡し及び貸付け)
第三十一条 前条に規定するもののほか、経済産業大臣は、我が国への石油の供給が不足する事態又は我が国における災害の発生により国内の特定の地域への石油の供給が不足する事態が生じ、又は生ずるおそれがある場合において、石油の安定的な供給を確保するため特に必要があると認めるときは、経済産業省令で定めるところにより、国家備蓄石油を譲り渡し、又は貸し付けることができる。この場合において、国家備蓄石油を交換するために譲り渡すときは、同条第二項の規定を準用する。
 
なお、岸田首相は、11月24日に行った「国家備蓄石油の売却」についての会見で「法律に反しない形での対応をしっかりと検討しています。」、同日の松野官房長官会見では「国家備蓄の放出に関しては油種の入れ替えの前倒しで実施するため、石油備蓄法には違反しないとした。」と述べています。
 
法解釈の範囲において、それぞれの考え方があることは分かるものの、「価格の引き下げ目的」で行うことは、法にある「供給不足の事態」「安定的な供給確保」に該当するのか、政府として明確な説明が必要ではないかと考える次第です。
 
私の勉強不足で、既に明確に説明されていたのであれば恐縮ですが、とりわけ自国のエネルギー資源に乏しい日本にとって、有事に備える国家備蓄石油の位置付けの重さを鑑みれば、米政権の呼び掛けに応じるため、あるいは減税したくない(トリガー条項の凍結解除)との理由によって対応されるのだとしたら、それは過去の教訓が生かされない本末転倒の考えではないかと危惧して止みません。
 
もっとも、私如きの危惧などには及ばない、高レベルの政治判断なのかもしれませんが。。。