世界で起きている「エネルギー危機」は日本でも起こり得ること

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「地政学的リスク」との言葉は、様々な面に対して当てはまることですが、いよいよ緊張感が高まってきているのがウクライナとロシアの関係。
 
米FOXニュースは22日、米国務省が在ウクライナ大使館員の家族に対し、24日にも国外へ退避を始めるよう命じたと報じたとあり、この理由は、国境付近でロシアとの緊張が高まっているための措置とのこと。
 
当局者の一人は、国務省が一般の米国人に対しても民間機での退避を近く促す見通しを明らかにしたともあり、ロシアのウクライナ侵攻が現実のものになる可能性が極めて高まっていることに肝を冷やすところであります。
 
冒頭、「様々な面に対して当てはまること」と申し上げましたが、この侵攻が現実になった場合、ロシアからのガス供給に依存する欧州諸国のエネルギー事情にも重大な影響を及ぼすことは避けられないと考えられ、まさに「エネルギー」と「地政学リスク」は切っても切れない関係にあることも強く認識する次第です。
 
まさにこうしたタイミングにおいて、昨日は国際エネルギー事情に精通されているエネルギー経済社会研究所代表の松尾豪氏よりお話しを伺う機会を得ました。
 
お話しを伺うこととなった経過までは控えますが、松尾氏においては、私も以前からTwitterなどで発信される情報で勉強させていただいているほか、昨年末に開催されたとある団体の講演会では拙い質問もさせていただいていたところ。
 
こうした有識者から直接お話しを伺えること自体感謝しかない訳ですが、さすがこの分野では国内で一目置かれる方だけあり、マクロの視点、ミクロの視点の両方を持ち合わせた説明により、いま世界で発生している「エネルギー危機」について理解することができました(といっても話しについていくのに必死でしたが)。
 
細かなデータ分析を基にし、世界各国で相次ぐ電力需給ひっ迫や停電など、足元の電力事情や特性のほか、政治的リスク、地政学的リスクについまで及んだ内容は、私が以前から述べている「世界の熾烈なエネルギー資源獲得競争」がより一層激化していることを表すとともに、とりわけ欧州各国では電気料金上昇(例えば伊では55%上昇)が深刻な問題となっていることに加え、英国では2018年以降、40社以上の事業者が撤退に追い込まれており(そのほとんどが小売専門事業者)、エネルギー危機に直面しているほか、政府の最終保証サービスが今後1兆円にも及ぶ見込みとなっており、もはや電力自由化は破綻しつつあることなど、ほんの一例を見ても、現実に起きている状況から日本は学ばなければならないと強く認識した次第です。。
 
ここで全てをご紹介するのは到底無理な内容とボリュームであることと、松尾氏の知見を簡単に開示をしてはいけないと思うため、多くは控えますが、一点だけ、冒頭のロシアと欧州の関係についてだけご紹介しますと、欧州がエネルギー供給を委ねるロシアからのガスパイプラインに関しては、大きく分けて4ルート、6系統となっており(下図①)、欧州各国への供給量は以下の通り(下図②)となっています。
 

【①ロシアのガス供給状況(松尾豪氏の公式Twitterより引用)】

【②欧州各国のガス調達状況(松尾豪氏の公式Twitterより引用)】
 
欧州28ヶ国の天然ガス輸入量の合計では、供給元をロシアが35%を占め、欧州に最もガス供給をおこなっているのがロシアですが、特にドイツ、イタリア、ギリシャでは需要の1/3以上をロシアに依存しています。
 
①②の図に表される通り、ここでウクライナ経由(①の3・4)も非常に重要なラインということがお分かりになるかと思いますが、ただでさえエネルギー危機に陥っているところでの「地政学的リスク」が、この緊張感の高まりからどう転じるのかは、まさに「究極の政治対応」に委ねられている「いま」だということになる訳であります。
 
欧州へのガス供給に関しては、ロシア政府はこれまでも声明により数々の牽制をしており、本当に強かな国だとも思う訳ですが、世界の「エネルギー資源獲得競争」というのはこれが現実であり、日本はいつもまでもお花畑の中にいてはいけないと。
 
ここでは一端を述べるに過ぎませんでしたが、こうした貴重なお話しをお伺いする機会を与えていただきました松尾先生には、この場を借りて心より感謝するとともに、認識したことを胸に、この日本の電力事情にも当てはめ考えていきたいと思います。
 

【最後に、欧州各国の電源構成・電力取引フローを掲載します(松尾豪氏の公式Twitterより引用)。リスクを回避するためには、いかなる電源オプションも排除してはならないとも思う次第。】