「後手」は許されない中国「海警法」施行への対応

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早や1月も終わり、今日から2月。
 
ちょうど自宅に届いた敦賀防衛懇話会(会員になっているので)からの封筒を開くと、会報と併せて、1月10日に大雪による北陸自動車道の立ち往生に対する自衛隊災害派遣活動の様子も同封されていました。
 
写真には、陸上自衛隊金沢駐屯地第10師団第14普通科連隊の皆さんが人力による車両救出やドライバーらの健康状態の確認、食料の提供など、迅速且つ懸命に対応された様子が記録されており、改めて当日の状況を振り返るとともに、日頃の訓練から培われた屈強な部隊への感謝と敬意を表するところです。
 


【テレビでご覧になった方もおられると思いますが、せっかくの機会ですので共有させていただきます。】
 
万事休すの時に頼りになるのが自衛隊の存在ですが、こうした災害派遣要請に応えるシーンは無いに越したことはありませんね。
 
さて、自衛隊の本来の役割である国家防衛でありますが、防衛白書などにもあるよう中国・ロシア軍機に対するスクランブル発信回数増加や北朝鮮のミサイル開発、さらにはサイバー、宇宙を含めた各国の新たな軍事開発など脅威は増すばかりの国際情勢にあって、最も警戒すべきは尖閣諸島を巡る中国の動きではないでしょうか。
 
現に尖閣諸島周辺では、中国海警局所属の船が今年もハイペースで現れており、昨年は領海外側にある接続水域内で確認された日数が最多を更新。
 
1月30日にも中国海警局の船2隻が航行しているのを海上保安庁の巡視船が確認するなど、今年は昨年に次ぎこれまでに24日間、海警局の船が接続水域内で確認されており、尖閣諸島周辺での「常在化」が進んでいると言えます。
 
そうしたなか、中国で日本の海上保安庁にあたる海警局の権限などを定めた「海警法」が本日2月1日施行されます。
 
この「海警法」について知っておくべきと少し調べてみると、この勝手な法改正がいかに国際法に反しているかが良く分かりました。
 
まず中国海警局は、日本の海上保安庁にあたる海上法執行機関ですが、中央軍事委員会の指揮を受ける人民武装警察(武警)に編入され、昨年6月の武警法改正により、海上権益保護及び法執行の任務が付与されています。
 
こうした一連の改編が行われていく中で「軍隊」と一体化しており、また1万トンを超える非常に強力な巡視船も有していることから、「第2の海軍」とも言われています。
 
その海警局の具体的な任務内容を規定したのが、今回新法として制定された海警法です。
 
問題のひとつは法執行権限が及ぶ範囲であり、同法第3条においては「管轄海域」として規定はしているものの、「中国が管轄するその他の海域」という文言については意味が曖昧で中国政府が一方的に決められるようにもとれます。
 
従って、日本にとって見れば、尖閣諸島までが含まれる可能性は十分あるといえます。
(尖閣をターゲットをしていると思えば当然のことですが)
 
もうひとつ大きな問題は、「武力行使や威嚇」について。
 
現代においては、国連憲章2条4項の規定により、武力行使や武力による威嚇はすべて違法行為となっていると認識したうえで、まず海警法21条を見ると、「外国軍用船舶、非商業目的の外国船舶が中国管轄海域で中国の法律に違反する行為を行った場合、海警はこれを制止するために必要な警告と管理措置を講じ、直ちに当該海域からの即時退去を命じる権利を有する。退去を拒否し、深刻な損害あるいは脅威を与えるものに対しては、強制退去、強制連行などの措置をとることができる」と定め、外国公船に対しても、強制的措置を執ることが出来るとしています。
 
さらに22条では、「国家主権、海上における主権または管轄権が、外国の組織、個人によって不法に侵害されている場合、または違法な侵害が差し迫った危険に直面した場合、海警局は本法およびその他の関連法に基づき、武器使用を含む一切の必要な措置をとって侵害を制止し、危険を排除することができる」と規定しており、21条と合わせれば外国公船に対しても武器を使用することが出来るように読めます。
 
軍艦や巡視艇のような外国公船は、一般船舶や漁船などと異なり、警察権による拿捕や差し押さえの対象外とされています。つまり外国公船は他国領域内であっても特別な法的な地位を認められており、これを「管轄権免除」と言うのだそう。
 
つまり、国連海洋法条約30条において、法令に従わない外国の軍艦に対しては、あくまで退去を要求できるに留まるとのこと。
 
余談ですが、調べているうちに、すべての国家は主権を有しており、国家主権に優越する主体は存在しないこととなっていることから、「対等なものは対等なものに対して支配権を持たない (per in parem non habet imperium)」という原則が、近代以降の国際法の基本的枠組みということを知りました。。。
 
横道に逸れましたが、本日施行される海警法が規定している外国公船に対する強制措置の規定は、こうした国際ルール、国際法の秩序に反するものと言え、自国に有利な解釈によって、領海を犯し実効支配へ向かうことは断じて許されないのは当然のことと考えます。
 
対して日本の動きについてですが、こうした緊張の高まりに対し、自民党の国防部会などは領域警備を強める法整備を求めるとしていることや、国民民主党においては2019に独自法案として提出した新法「領域警備法案」で、グレーゾーン事態に切れ目なく対処できるよう、海上保安庁などと連携を強化し、国土交通大臣の要請により、自衛隊が海上保安庁が行う警備を補完すること等が出来るよう求めています。
 
日本国内での法整備や対応はもとより、虎視眈々と世界の覇権を握ろうと目論む中国に対しては、同じ脅威に晒されている東南アジア諸国を始め、諸外国とも連携し、国際世論を醸成しつつ強く抗議を行っていくべきと考えるところです。
 
コロナ対応は最優先すべき国家的課題であることに異論はありませんが、世界が「コロナ禍」のドサクサに紛れてこうした行為を行おうとしているのであるとすれば、これはコロナに匹敵する主権を脅かされる有事であり、「後手」となることは許されるものではありません。