「若狭原電紀行」にて敦賀半島を巡る

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アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催されている国連の気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)。
 
岸田首相は1日、首脳級会合で演説し、温室効果ガスの排出削減対策の取られていない石炭火力発電所の新規建設を「終了する」としたうえで、「徹底した省エネと、再エネの主力電源化、原子力の活用などを通じたクリーンエネルギーの最大限の導入を図る」と表明したとのこと。
 
国際会議においては日本の取組みに理解を求めつつ、国内では「野心的」ではなく粛々と、環境、経済成長とエネルギー安全保障が両立する政策を進めていただきたいと強く願うところです。
 
さて、昨日からは、「現実的」な視点でエネルギーを考える「若狭原電紀行」の皆さんと行動をともにしています。
 
「若狭原電紀行」とは、東日本大震災以降の原子力に対する不安や風評を払拭、さらには原子力の理解につなげるため、全国の原子力関連施設(主に発電所立地地域)の見学をしながら、地域各団体とのワークショップや意見交換などを通じて各地の文化に触れ、情報発信する企画を開催し続けている、団体というよりはツアー。
 
私は、昨年に続き、2回目の参加となりますが、今回もエネルギー分野の有識者や原子力関係、金融機関にお勤めの方など、様々な方面から集った9名にて工程を進めました。
 
2泊3日工程の初日は、日本原電の敦賀発電所から日本原子力研究開発機構「もんじゅ」、同じく日本原電の敦賀総合研修センターを見学。
 
敦賀発電所では、敦賀原子力館での概要説明に続き、現在審査が進められている敦賀発電所2号機敷地内破砕帯調査現場、敦賀3,4号機建設予定地を回り、破砕帯調査現場では、今月予定されている原子力規制委員会の現地調査を前に、地層表面の確認をしている様子を、3,4号予定地では、ここに革新軽水炉が建設されることをイメージしつつ、いずれも大規模な調査、開発が行われていることをご覧いただきました。
 

【敦賀発電所2号機敷地内破砕帯調査現場】

【敦賀3,4号機建設予定地】
 
また、その後は「もんじゅ」にて、高速増殖原型炉の設計や現在進める廃止措置工事の状況について説明を受けるとともに、プラントが一望できる展望台より全景を拝見。
 
敦賀総合研修センターでは、原子力人材育成の取組みや同センターの設備紹介に続き、フルスコープシュミレーターを用いた福島第一原子力発電所の事故模擬ではまさに、ブラックアウトで中央制御室が真っ暗のなか鳴り響く警報など、リアルな体験ができたことに感嘆の声をいただいた次第です。
 

【教育用シュミレータの説明を聞く様子(フルスコープではありません)】
 
こうして一日目は、私もコーディネートする中で、敦賀半島の原子力施設をともにしましたが、一部時間をオーバーするほど熱心に、質問や意見が挙がったところです。
 
昨年と同様、宿泊先の高浜町の旅館まで移動し、現在を迎えており、二日目は大飯町漁協でのワークショップや関西電力大飯発電所の見学を予定していますが、私は、本日東京で予定があるため、ご一行とは、宿の出発に合わせてお別れ。
 
誠に残念ではありますが、道中の安全を祈る次第です。
 
こうして、昨年に続き参加した「若狭原電紀行」。
 
広い視点をもって、日本のエネルギーと原子力を考える皆さんとは、生まれた関係を大切に、引き続き連携させていただければと存じます。

欧州大陸で衰えつつある「脱炭素」の勢い

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写真は、熊本県阿蘇の大地を覆う無数の大規模太陽光発電施設(メガソーラー)。
 
最大の地域は東京ドーム25個分、約20万枚もの巨大パネルが並ぶ状況に、地元住民や自治体からは景観破壊で世界文化遺産登録が危ぶまれるとの声が挙がっており、雄大な阿蘇の景色が様変わりしてしまったことに憤りを感じるところです。
 
2012年に国の「再生可能エネルギー固定価格買取制度」が始まると、設置計画が次々と出始め、「阿蘇くじゅう国立公園」の周辺10ヶ所ほどの場所にメガソーラーができたとのことですが、この太陽光発電について。
 
昨日の新聞記事によれば、太陽光発電施設の投資物件売買サイトへの売却依頼が急増し、今年1~6月は前年同期比約2.3倍となったことが分かったとのこと。
 
送電容量の関係から、再生可能エネルギーの発電事業者に一時的な発電停止を求める「出力制御」が今年過去最大となり、事業継続の不安が高まったとみられ、2019年では54件だった売却依頼件数が、2020年は240件、昨年は686件と年々増加傾向にあるとも。
 
つまりは、採算が取れないと判断するやさっさと市場から撤退する事業者がこれだけ存在するということかと思いますが、このような状況を見るに、第6次エネルギー基本計画において、再エネ比率36~38%(2030年)とする「野心的な」目標自体、達成する見込みは極めて低く、ましてや再エネの「主力化」をめざすとする政策自体を見直さねばならない、直感的に考えるところです。
 
そうしたなか、キャノングローバル戦略研究所の杉山大志研究主幹は、政治的視点からこう述べています。
 
英国のリシ・スナク首相が、英国の脱炭素政策(ネットゼロ)に誤りがあったので方針を転換すると9月に演説して反響を呼んでいる。この演説はもっと重要な内容を含んでいる。具体的な政策について述べただけではなく、首相がこれまでの英国政府の誤りを指摘し、今後の方針を明確に述べたからだ
 
欧州大陸でもこれまでのような脱炭素の勢いは衰えつつある。ドイツは「エネルギーベンデ(転換)」というスローガンの下、最も急進的なエネルギー政策を取ってきた。脱炭素推進だけでなく、脱原発も同時に進めてきた。だが、これまで頼ってきた安価なロシアの天然ガスが入手できなくなり、エネルギーコストが高騰し、エネルギー集約産業は苦境に立ち、産業空洞化に拍車がかかっている。
 
欧州大陸では既に右派ないし右派中道政権が次々に誕生しており、さらに広がりを見せるかもしれない。そうすると、欧州でも脱炭素の見直しは進むことになるだろう。
 
日本政府は今も脱炭素一色である。だが気が付けば旗を振っていた欧米諸国が全く違うことになっているかもしれない。リスク管理としては、動向を注視する必要があるだろう。これは企業についても言えることだ。
 
そして日本として脱炭素一色のままでよいのか、エネルギー政策のあり方も再考すべきである。まずはスナク英首相に学んではどうか。日本政府は脱炭素で「グリーン成長する」という、経済学の初歩を無視した主張を展開し、コストがかからないフリをして国民を欺いてきた。日本も過去の過ちを認め、コストについて精査し国民に正直に語るべきだろう。
 
仰ることはごもっともと深く頷くところですが、これを示すのが、次期「第7次エネルギー基本計画」。
 
国際情勢が変化しつつあるのであれば尚のこと、日本だけ「夢物語」のままではいけません。
 
「望みなどの、身分不相応に大きいさま」を意味する「野心的な」政策から早く目を覚まし、今後は真に現実的なエネルギー政策論議に進ことを期待して止みません。

エネルギーも議会もキーワードは「より身近に」

エネルギー ブログ 敦賀市議会

議会が休会の昨日は、広報広聴委員会を開催。
 
「議会だより」次号に関することや、11月16日に開催する今年度の「議会報告会」について、活発に議論しました。
 
1期目の後半2年は委員長を務めた私ですが、今期は委員として参画。
 
委員会では、各委員のご意見を尊重しつつ、主に経験則からの意見をさせていただきました。
 
市民の皆さんにとって、議会をより身近に感じていただくため、この広報広聴活動は大変重要との思いをもって参画しておりますが、過去の慣例に固執することなく、小さくとも新たな視点を取り込んで、改善を続けていければと思います。
 
さて、議会と同じく、「固い」、「難しい」といったイメージを解き、分かりやすい広報広聴活動を行っているのは、エネルギー・原子力の世界。
 
ちょうど、原子力産業新聞ウェブ版を見ると、電気事業連合会(以下、電事連)が、電気の安定的な供給確保の必要性とカーボンニュートラルの取組を紹介する2種類の新テレビCMの放映を10月1日から開始したとの記事が掲載されていました。
 
構成は「持続可能な電気の供給」篇と「効率的な電気の利用」篇(各30秒)の2本立てで、昨秋に制作したテレビCMに続き、若手女優の今田美桜さんを起用。
 
今回は、「エネルギーから、明日をおもう。」というキャッチコピーのもと、明治時代と現代の教師に扮した2人の今田さんが、各篇CMで、「持続可能な電気の供給」、「効率的な電気の利用」をテーマに、教室の黒板やプロジェクターを使って、過去と現在の電気の価値や使われ方の違いを説明しています。
 
実際の内容は、言葉より映像にてということで、以下のリンクよりご覧ください。
 
 →電気事業連合会 CM特設サイトはこちら
 

【電事連 CM特設サイトページより。今田美桜さんに説明されると妙に説得力があると感じるのは私だけでしょうか?】
 
なお、2つのCMを通じ、「私たちの暮らしに欠かせない電気を、より身近に感じもらう」のが狙いとのこと。
 
エネルギーも議会も、キーワードはやはり「より身近に」ですね。
 
結びは自分のことで恐縮ですが、昨夕は、いつもの粟野交番前ではなく、木崎の交差点にて街頭活動を行いました。
 
市役所通りと新旧木崎通りが交差するこの場所では2回目でしたが、格段に多い交通量のなか、車中からお声掛けいただけたりと嬉しい限り。
 
暗くなるのが一段と早くなってきましたので、最後は安全運転の呼び掛けをし活動を終えましたが、各所での街頭活動の目的は、自分ごとというより、政治や議会に少しでも関心を持っていただきたいとの思いの方が強いのかと。
 
こちらも「より身近に」をキーワードに、今後も引き続き頑張ります。
 

【18時前にはこの暗さ。交通安全の支障にならないよう注意して活動いたします。】

2025大阪・関西万博に向け「水素ロータリーエンジン」が完成!

エネルギー ブログ

「やまたけブログ」を通じてお便りをいただいたり、その後お付き合いさせていただくことになったりと、人間関係が広がる切掛けの場ともなっていることをありがたく感じてきましたが、7月末にも1通のメールが届きました。
 
その方は、私のブログ(2021年5月23日投稿:2025大阪万博へ「敦賀から羽ばたく水素の翼」)をご覧いただき連絡をされたという、大阪枚方市にある日東工作所の社長さん。
 
 →「2021年5月23日 やまたけブログ」はこちら
 
実はこの日東工作所さんは、近畿経済産業局(以下、近経局)が「水素でつくる未来社会『水素×ドローン』〜2025大阪・関西万博の空へ〜 (関西スマートエネルギーイニシアティブ)」と題し、関西地域の中小企業等の力を集結して、地球にやさしい「水素の翼(ドローン)」を2025大阪・関西万博でお披露目させることを目指す「HyDrone(ハイドローン)プロジェクト」で「水素ロータリーエンジン」の開発を任されている会社。
 
水素を燃料とする高出力、高航続距離のドローンを開発する「ハイドローンプロジェクト」は、近経局との官民連携プロジェクトであり、平成31年度には、敦賀市が掲げる「ハーモニアスポリス構想」先導事業の敦賀市産業間連携推進事業費補助金において、株式会社日東工作所による「高効率水素エンジン利用ドローン研究開発」を採択。
 
その後、同社による開発が進められてきたところですが、社長からのメールによれば、「敦賀市さんの応援で水素ロータリーエンジンが実用の域まで完成が出来ました。」とのこと。
 
また、このことが、7月18日の日刊工業新聞第1面にカラーで紹介されたことやyahooニュースで取り上げられたことまでご報告いただいた次第。
 
yahooニュースの詳細は、以下リンクよりご覧ください。
→「日東工作所が開発した『水素ロータリーエンジン』の実力」(令和5年7月20日:yahoo掲載)はこちら
 
記事には、「日東工作所は、小型発電機用の水素ロータリーエンジン(RE)を開発した。燃やしても二酸化炭素(CO2)を排出しない水素を燃料とし、排気量80ccで1分間に3600回転、4時間弱の連続運転に成功した。動力試験で1キロワットを超える出力を得られており、小型発電機やマイクロモビリティー駆動に使えるという。発電機メーカーなどに今回のREシステムを提案し、早期の実用化を目指す。」とありましたが、社長のメールには「エンジンですのでまだまだ改善をしていきます」との言葉がありました。
 
こうして並々ならぬ意欲をもって、中小企業が新たな技術に挑戦し、見事に完成させたことはまさに、「下町ロケット」を彷彿させるところですが、こうした開発に敦賀市が関わりを持ち、支援できたことを嬉しく思えた次第です。
 
(参考)以下リンクをご覧ください。日東工作所は、独自の技術を持つスゴい会社でした。
 →日東工作所のホームページはこちら
 

【大阪万博会場で飛ぶ水素ドローンのイメージ(出典:近経局)】
 
社長のメールの最後には、「取り急ぎ、ご報告と3年間の敦賀市へのお礼にて失礼致します。」とありました。
 
私なんぞにご丁寧にご報告いただき、こちらこそ感謝ですが、ここからさらに乗用水素ドローンとして完成させていくに、まだまだあろうハードルを乗り越え、2025年には「水素ロータリーエンジン」を動力に、大阪の空を飛ぶことを願い、エールを送らせていただきます。
 
なお、準備の遅れが懸念される2025大阪・関西万博に関しては、2日に西村経産相が、「抜本的な体制強化を行い、建設への支援を経産省の総力を挙げて取り組みたい」と省内の会議で述べ、運営を立て直す方針を示すとともに、海外パビリオンの建設を後押しする保険も創設するなど、異例の陣容で対応を急ぐとのこと。
 
私にとって大阪での万博といえば、敦賀発電所1号機及び美浜発電所1号機が「原子の灯」を会場に送り届けた、53年前の「1970大阪万博」ですが、この時と同様、2025年もまさに「新たな時代」を迎える象徴的なイベントになることを期待する次第です。
 
最後に、前述の3年前のブログにも記載しました、渕上隆信前敦賀市長が記者会見で仰られた言葉を再掲します。
 
「(当時)50年前の大阪万博では原子力の灯を届けましたが、次の万博には『敦賀から羽ばたく水素の翼』をキャッチフレーズに敦賀から水素の翼を送り届けたいというふうに考えております。」
 
半世紀を経て開催される万博においても、「敦賀」の名が刻まれんこと切に期待いたします。

「エネルギーについて真剣に考える仲間によるオンライン意見交換会」を開催

エネルギー ブログ 原子力

早いもので今日から6月。
 
時節柄から入りたいところですが、本日1日をもって、電力大手7社が家庭向け電気料金(規制料金)の値上げを実施。
 
背景は以前に述べた通りですが、ロシアのウクライナ侵略を発端とするエネルギー資源高騰は表層的な要因であり、根本的には、国がこれまで進めてきた電力システム改革や電力の全面自由化が問題としてあることを改めて指摘しておきたいと思います。
 
また、帝国データバンクによると、この6月には3575品目の食品が値上げする予定との調査結果。
 
電気代や人件費の上昇を背景に値上げは少なくとも今秋まで続く見通しで、消費者の値上げ疲れ、生活防衛志向が強くなっているとあります。
 
ガソリン値上げ時、原油高の際も価格転嫁がされたよう、電気代も然りであり、低廉で安定したエネルギーの確保は国民生活と経済活動に直結していることを痛感する次第です。
 
さらには、今政府が行なっているガソリン、電気料金値下げへの補助金も当然、税金で賄っているもの。
 
これに捻出する分があれば、例えば昨日の少子化対策など、もっと他の予算に配分できる訳であり、やはり構造的な見直しを行わねば、この状態はいつまでも続くものと推察する次第です。
 
さて、そうしたなか、昨日はエネルギー安全保障と脱炭素社会に向けて重要な法案が国会で可決。
 
本年2月に閣議決定された「GX実現に向けた基本方針」に基づき、原子力利用に係る原則の明確化、安全確保を前提とした既設炉の最大限活用に向けた運転期間に係る規律の整備、円滑かつ着実な廃止措置の推進、再エネ導入に向けた系統整備や事業規律の強化等を盛り込んだ「GX脱炭素電源法案」(衆議院で原案一部修正)が、本日31日午前の参議院本会議で、自民・公明両党や国民民主党、日本維新の会等の賛成多数により可決成立しました。
 
法案審議の過程では、参議院経済産業委員会・環境委員会の連合審査(5月23日)で質問に立った浜野よしふみ議員(電力総連組織内国会議員)が、運転期間に係る新たな規律における停止期間の扱いや新制度への移行に際した課題への対応、60年超プラントの安全性に係る科学的・技術的評価の可能性の確認、競争環境下における原子力事業環境整備の必要性等について、政府から重要な答弁を引き出すとともに、円滑で着実な廃止措置のための環境整備や再エネ導入に向けた系統整備費用負担の在り方等が盛り込まれた附帯決議が採択されました。
 
とりわけ、附帯決議にある「競争環境下における原子力事業環境整備」に関しては、「安全確保を大前提とした原子力施設の研究や運営・保守管理、廃止措置等、原子力の安全の ための施策が長期にわたって必要となることを踏まえ、原子力事業者を取り巻く経営環境にかかわらず、施設の安全性の向上やバックエンド事業の着実な実施等に事業者が確実に取り組むことができるよう、必要な人材の確保及び技術の維持・強化等に向けた事業環境の整備を進めること」としており、政府においては、今後この認識に立って、各種施策を進めていただきたいと期待するところです。
 
たまたま、このような法案が成立した日と重なった訳ですが、昨日19時からは、原子力ユニオン(日本原子力研究開発労組)・明日の東海村を創る会(吉田充宏・東海村議会議員の後援会)共催による「エネルギーについて真剣に考える仲間によるオンライン意見交換会」が開催されました。
 
この会はこれで2回目となるもので、水戸市議会の佐藤昭雄議員、東海村議会の寺門定範議員と吉田充宏議員、そして敦賀からは私の4名の議員、並びにそれぞれの労組関係者が参加のもと、「我々が今やるべきこと」について語り合う場として設定されたもの。
 

【オンライン意見交換会の開催チラシ】
 
昨日のテーマはまさに「GX実現に向けた基本方針」について、さらには地元の東海第二発電所、敦賀発電所2号機の再稼働に向けて等々、まず議員それぞれから考えを述べた後、参加者から議員に対して「やってほしいこと」等のご意見を頂戴し、最後は双方向の意見交換会の流れで約1時間半、大変有意義な時間となりました。
 
ここで感じたのはやはり、原子力だけ進めれば良いというのでは決してなく、あらゆる電源を活用していくことが必要不可欠であり、そのための情報発信や関係各所との対話に、私たち自身が本気になって汗をかいていくとの思い。
 
つまりは、会のタイトルにある「エネルギーについて真剣に考える仲間」であるということでした。
 
「GX脱炭素電源法案」成立と電気料金値上げ実施直前のタイミングで開催されたことに大きな意味合いを感じつつ、この場で頂戴したご意見、共有した事項、そしてこうした「同志」の存在を念頭に、「自分のできること」を今日からまた取り組んでいく所存です。

電気料金値上げの責任はすべて電力会社に負わすのか

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以前より大手電力7社が申請していた電気料金(規制料金)値上げについて、昨日、政府が開いた物価問題に関する関係閣僚会議でこれを了承し、7社が即日値上げを再申請しました。
 
西村経産大臣が近く認可するとあり、電力7社は6月1日から値上げを実施すると発表。
 
火力発電に使用する燃料価格の高騰などを反映させ、経済産業省によると、標準的な家庭(月の電気使用量400キロワット時)の値上げ率は14~42%となり、月の負担増は2千円程度~5千円程度となる見通しとのこと。
 
なお、値上げするのは中部、関西、九州の3電力を除く7社で、政府の試算によると、43年ぶりに値上げする北陸電力の値上げ率は42%。北海道電力は21%、東北電力は24%、東京電力14%、中国電力29%、四国電力25%、沖縄電力38%。
 

【当初申請と今回圧縮された各社の料金(産経NEWSより引用)】
 
これまで耐えに耐えた末、43年ぶりの値上げとなる北陸電力の長高英常務執行役員は「お客様にご負担をおかけすることになり非常に心苦しく思っている。了承された査定案の値上げ幅は当社にとって非常に厳しいものだが、引き続き効率化を進めて補っていきたい」と述べました。
 
一方、西村経済産業大臣は閣議の後の記者会見で、「直近の燃料価格などを踏まえ、原価の再算定を行うなど前例に捉われない極めて厳格な査定を行った。」と、さも政府の成果と言わんばかりに述べています。
 
正直申し上げ、このように電気料金値上げの責任を旧一般電気事業者に押し付けるかの姿勢には大いに疑問があります。
 
即ち、値上げの主要因となった、海外に燃料を依存する火力発電の比率を高めなければならなくなったのは、純国産エネルギーである原子力発電の長期停止を余儀なくされていることに加え、原子力なきまま進めた再生可能エネルギーの普及拡大によって、※代替する火力の必要性が増したことに原因があるからです。
 
※日照や風のある時しか発電しない再エネには必ず代替電源(今は火力)が必要であり、再エネ比率を高めれば高めるほどその代替電源の燃料負担が増える。要するに個社の経営判断でなく、国のエネルギー政策(電源比率)によって生じていると言える。
 
また、東日本大震災以降に進めた電力システム改革や電力自由化は聞こえこそ良いものの、結果して電力需給逼迫と料金高騰を招いているほか、自由化なのに何故、旧一般電気事業者だけ国の厳格な審査が必要なのか。
 
これ以外にも、電力市場が高騰した際には、調達価格の上昇に耐え切れず、いくつもの新電力が撤退したり、需給逼迫時には旧一般電気事業者が所有する、本来停止していた年数の経過した火力を再稼働させて対応したことなど、様々な事柄が思い出されるところであります。
 
要するに、こうして国が整備してきた制度自体に理不尽な点や根本的な問題があると、私は思う訳であり、そのような中で「大手電力の料金値上げをギリギリと絞り上げた」と言わんばかりの姿勢は、責任から逃れる政府のパフォーマンスとしか思えません。
 
制度自体が複雑化し、専門家でなければ分からなくなっている状況において、まさにこうした点を国会で指摘しているのは、国民民主党の竹詰ひとし議員(参議院比例)でありますが、わが国の安価で安定した電力供給の根幹に関わる制度につき、悪しき点があるのであれば改善すべきと、強く望むところであります。
 
そして何と言っても「電力危機」の改善に向けて鍵を握るのは原子力発電。
 
「再エネか原子力か」ではなく「再エネも原子力も」使わなくては、この日本は成り立たないことを改めてお伝えし、本日のブログを閉じます。
 
本日はやや批判的な論調となりましたが、昼夜を分かたず、懸命に安定供給を守り続ける全国の電力関連産業にお勤めの皆さんが、上っ面の報道だけで批判に晒されることだけは我慢なりませんでしたので、思いの丈を書かせていただきました。
 
考えに間違いがあればご指摘いただきたく存じますが、記載の趣旨についてはご理解賜りますよう宜しくお願いいたします。

「水素基本戦略」改定と「ハーモニアスポリス構想」         

エネルギー ブログ まちづくり

新たな年度を迎え、初の出勤日となった昨日、多くの企業や省庁で行われた「対面」や「マスクを外しての」入社式や入庁式のニュースを拝見し、フレッシュで若い皆さんの門出を祝うとともに今後の活躍を祈念する次第です。
 
また、政府の子ども政策の司令塔となる「こども家庭庁」の発足式も行われましたが、こちらは縦割り行政を打破し、各省庁間が連携のもと、真に「異次元」の少子化対策に進むことを期待いたします。
 
さて、桜咲く4月の雰囲気と相まって、こうした明るいニュースに触れるなかではありますが、やはり気になるのはエネルギー関連の話題。
 
同じく昨日は、脱炭素化を加速させるため、政府は水素のエネルギー化に向けた「水素基本戦略」を改定する方針の骨子を固めたとの報道がありました。
 
これによれば、2040年の水素供給量の目標を、現在の約6倍となる「年1200万トン程度」に設定し、官民で今後15兆円を投資する計画を示すことが柱。
 
2030年頃に水素の商用化を実現させるため、大規模なサプライチェーン(供給網)やコンビナートの拠点を構築する必要性も指摘し、財政的な支援や官民の投資で後押しすることも明記したとのこと。
 
さらには、企業の負担を軽減して供給網を構築するため、石炭や天然ガスの市場価格との差額を補助する制度を創設する方向で調整を進めているともありました。
 
以前に聴講した有識者のセミナーで、「水素は今後20兆円規模の市場になる」とありましたが、まさにその通りとなったことに加え、政府が本腰を入れて技術開発や市場の整備に取組む意思の表れと理解したところです。
 
さて、こうした国の動きを踏まえ、頭に浮かぶのは、従前から水素の取り組みを進める敦賀市のこと。
 
敦賀市においては、産業構造の複軸化とエネルギーの多元化を目的とした「ハーモニアスポリス構想」とその基本計画である「産業間連携推進計画」、「調和型水素社会形成計画」、「道路網整備計画」を策定のうえ、それぞれ取り組むところですが、今般の基本戦略改定を受け、戦略を見直す必要は無いのか。
 

【「ハーモニアスポリス構想」概要版の表紙】
 
とりわけ「調和型水素社会形成計画」に関しては、水素エネルギーの活用とサプライチェーンの構築を目指すものであり、渕上市長が掲げた目玉政策であったと認識しますが、市議選と同時に行われる市長選で誕生する新市長におかれては、これをどう取り扱うのか、大変高い関心を持つところであります。
 
昨年度は、全国初となる「原子力由来水素」の実証試験を行なった敦賀ですが、集積する原子力関連施設や火力などと合わせ、水素の利用拡大で、あらゆる電源を活用する真の「エネルギー都市」を目指せる。
 
そんなポテンシャルがあるまちは、全国、いや世界広しといえど、ここ敦賀にしか出来ないことと考えるため、この点に関しては、私自身も思考を重ね、今後もその任を与えていただけるのであれば引き続き、建設的に意見していく所存です。

この際「再エネ賦課金」を考える機会に

エネルギー ブログ 政治

昨日から始まった統一地方選前半戦。
 
国政選挙と同様、ここでも争点のひとつとして挙げられるのは、生活に直結する物価やエネルギー価格高騰などへの対応になろうかと思います。
 
そうしたなか、3月22日に開催された政府の「物価・賃金・生活総合対策本部」では、高騰が続いている電気料金に関して、料金に上乗せする形で徴収されている「再生可能エネルギー賦課金」を4月使用分の料金から減額されることが報告されました。
 
具体的には、標準家庭(月の電気使用量が400キロワット時の)で月平均800円に相当する額が、5月請求分から追加で値下げされるほか、鋳造など「特別高圧」契約の企業は約80万円/月(年間約1000万円)の値下げとなります。
 
いわゆる「再エネ賦課金の一時徴収停止」による「電気料金値下げ」は、国民民主党が昨年夏の参議院選挙の時に追加公約をし、10月24日には高騰する電気代値下げのための「再エネ賦課金停止法案」を参議院に提出したほか、年末には物価高騰に苦む国民、企業の負担軽減策のひとつとして、岸田総理に直談判した案件でもあります。
 
すなわち、提案から約8ヶ月を経て、同党がまた公約を実現したことになる訳ですが、政治判断さえすればすぐにできて、しかも国民、企業すべて一律に「電気代値下げ」効果があり、目に見える形の方法をここまで選択しなかったことは遅きに失していると、私は思う次第です。
 

【昨年9月に発表した国民民主党の緊急経済対策。電気代値下げの方法はまさに「再エネ賦課金の一時徴収停止」】
 
「再エネ賦課金」に関しては、これまで何度も紹介していますが、改めて、この賦課金は固定価格買取制度において、「再エネ由来の電力を決められた価格で大手電力が買い取る制度(FIT)の費用など、再エネの普及促進のため、電力会社が利用者から賦課金という形で電気料金に上乗せして徴収している」ものです。
 
経産省によると、賦課金は平成24(2012)年の導入開始時は1キロワット時あたり0.22円でしたが、その後増え続け、令和4年度は1キロワット時当たり3.45円が徴収されている状況になっています。
 
また、下図をご覧いただくとお分かりの通り、年々賦課金は上昇しており、国民から徴収する賦課金総額は「2.7兆円」となっていることを、改めて認識いただければと思いますが、皆さんはこのシステムをどうお感じでしょうか。
 

【固定価格買取制度導入後の賦課金の推移(資源エネルギー庁HPより引用)】
 
皆さまにおかれましては自己チェックの観点から、毎月支払う電気料金明細を確認いただくとともに、現在の日本のエネルギー政策で一番に掲げる「再エネ主力電源化」の意味するところは、今以上の国民負担を強いて進めることであり、本当にそれで良いのか、是非についてご一考いただければ幸いに存じます。
 
なお、くれぐれも誤解なきよう、私は、再エネ否定論者では決してなく、「超」現実的なベストミックス論者であることを最後に補足しておきます。

電気代が高い理由はみんな「亡国のエコ」のせい

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2023年1月から9月にかけて、電気代と都市ガス料金を値下げする経済産業省の「電気・ガス価格激変緩和対策事業」。
 
電気代の値下げ額は一般家庭向けで1kWhあたり7円、企業向けの値下げ額は3.5円ですが、高騰を続ける電気代に苦しむ家庭・企業にとっては大変有効なこと。
 
オール電化住宅の我が家も然り、元々、冬場の電気代が高いこともあって、この冬は蓄熱暖房の使用を2台から1台に、お風呂の保温を長時間しないなどの節電効果ともあいまって、3月の請求分はやや落ち着いたところです。
 
以前にもご紹介した通り、この「電気代値下げ」は国民民主党が一早く提案し、政府が取り入れたものですが、この4月以降の値上げも視野に、同党は更なる値下げ策の必要性を主張しており、物価高騰対策を含めた今後の政府の対応に注視する次第です。
 
さて、この電気料金高騰に関しては、ロシアのウクライナ侵略に起因したものと思われている方が多いかと思いますが、これをみな、「亡国のエコのせい」と3つの要因を挙げられた方がいましたのでご紹介します。
 
その方とは、キヤノングローバル戦略研究所の杉山大志研究主幹。
 
杉山氏によれば、電気代が高騰している。この理由は3つで、①反原子力、②再エネ推進、③脱炭素。
 
以下、杉山氏の意見を抜粋掲載します(一部、表記修正)。
 
【理由1】原子力の停止
 
原子力発電を運転すれば電気代は下がる。図1は、原子力比率(=供給される全電力に占める原子力発電の割合)と家庭用電気料金の関係を示したもの。原子力比率の高い九州、関西は電気料金が低いことが分かる。
東日本大震災から10年以上経過したが、いまだに、日本は多くの原子力を動かせないでいる。
 

【図1:原子力比率は平成21年度のもの。データ出所は以下リンク(関西電力、四国電力、九州電力)。家庭用電気料金は日経新聞調べの標準家庭の規制料金(2023年6月)】
 
【理由2】再エネの大量導入
 
太陽光発電などの再生可能エネルギーの大量導入によって電気代は上がった。再生可能エネルギー賦課金の推移では、2021年度の賦課金総額は2.7兆円であり、一人あたり年間2万円、3人家族なら6万円になる。月額873円とあるのは年間約1万円でこれが平均的な家庭の直接の負担額。残り5万円は企業の負担になっていて、その分、物価が上がったり給料が減ったりしている。
 
【理由3】天然ガスの高騰
 
欧州の脱炭素政策は大失敗した。天然ガスを筆頭にロシアのエネルギー頼みとなった。この足下をみたプーチンは欧州の経済制裁などたかが知れていると見てウクライナに侵攻した。欧州がエネルギーで脆弱性を作りだしたことが戦争を招く大きな要因になったのだ。
欧州は(プーチンの予想には反して)ロシアからのエネルギー購入を止めたが、代わりに世界中からエネルギーを買い漁って、天然ガス、石油、石炭の何れの価格も暴騰した。
過去数年、脱炭素のためとして、世界的に化石燃料の採掘事業が停滞していたことも、価格暴騰に大いに拍車をかけた。
この煽りで日本の主要な発電燃料である液化天然ガス(LNG)価格も高くなった。欧州(TTF)、東アジア(JKM)のスポット価格に比べればそれでも安いが、これは長期契約を結んでいたおかげで、じつは電力会社のファインプレーだ。
 
そして最後にこう結んでいます。
 
「以上のように、いまの電気代高騰は、反原子力、再エネ推進、脱炭素といった、「エコな」政策のせいだ。これを変えない限り、また同じことが起きるのは必定だ。最近、原子力政策には変化がみられる。しかし政府は相変わらず脱炭素、再エネ最優先に邁進している。電気代はどこまで上がるのだろうか。
 
私も杉山氏の懸念に同感であり、本質を突いたこうした要因分析がまったくといっていいほど報じられないのは何故なのか(特に原子力比率と電気料金の関係)。
 
報道もさることながら、やはり「再エネ主力の電源化」を謳っている、現行のエネルギー基本計画は見直すべきと考える次第。

「GX脱炭素電源法」が国会に提出される

エネルギー ブログ

一昨日の全体会に続き、昨日は予算決算常任委員会(分科会)を開催。
 
令和5年度当初予算案の各議案について、3つの分科会に分かれての審査を行いました。
 
私が所属する産経建設分科会では、所管する水道部、産業経済部、観光部、建設部、都市整備部に対し、順次質疑。
 
終わってみれば、一番遅くまで審査をしてましたが、審査の結果は、3月16日に開催される予算決算常任委員会(全体会)にて報告することとなっておりますので、以降、正副分科会長で論点を絞って取りまとめていきたいと思います。
 
さて、2月28日のことになりますが、政府はエネルギー関連の5つの法改正案を閣議決定し、これらをまとめた束ね法案「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案」(GX脱炭素電源法)として、今通常国会に提出しました。
 

【GX脱炭素電源法の概要(内閣官房発表資料より)】
 
GX脱炭素電源法のうち、とりわけ原子力に関しては、以下の4法案が柱となっています。
 
◉原子力発電の利用に係る原則の明確化(原子力基本法)
◉高経年化した原子炉に対する規制の厳格化(原子炉等規制法)
◉原子力発電の運転期間に関する規律の整備(電気事業法)
◉円滑かつ着実な廃炉の推進(再処理等拠出金法)
 
原子力基本法の改正では、安全最優先、原子力利用の価値を明確化したほか、運転期間については、原子炉等規制法から電気事業法に移され、経済産業相の認可を受けた場合に限り延長を認め、「延長しようとする期間が20年を超える」場合は、事業者が予見しがたい事由(東日本大震災以降の安全規制に係る制度・運用の変更、司法判断など)に限定して運転期間のカウントから除外することで、実質的に60年超運転を可能とするとされました。
 
なお、運転期間に関しては、経産省資源エネルギー庁の遠藤原子力政策課長が記者会見で、「明らかに電力会社側に責任があって停止している期間は、追加延長の期間には入れない」と説明のうえ、テロ対策の不備で規制委員会から事実上の運転禁止命令を受けている東京電力柏崎刈羽(新潟県)は、命令中の期間分は追加延長に加算しない、日本原電の敦賀2号機に関しては、「ケース・バイ・ケースで判断する」と、追加延長の基準についてあいまいな説明に終始したとあります。
 
法案で明記はしたものの、停止している理由によって、除外するしないか判断するとあっては、これまた「非科学的」と思わざるを得ない訳ですが、果たしてペナルティ意味合いの強い、この条件は必要なのでしょうか。
 
なお、今後判断するのは、独立性の高い原子力規制委員会ではなく、利用施策側の経済産業省となりますが、逆に世論や政治の意向に左右されやすくなるのではと、別の意味で危惧するところ。
 
本件については特に、敦賀2号機を例に挙げて話しがあったものでもあり、重要なポイントかと思いますので、今後の国会での法案審議に注視するとともに、あいまいな状態とならないよう、あくまでも「科学的」な考えを根拠に制度化されるよう求める次第です。

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