2024年12月25日
もんじゅ敷地内に設置する「新試験研究炉」の建設予定地、設置許可申請見込み時期の公表が延期
昨日午後は、今年最後の会議となる嶺南広域行政組合議会定例会に出席した後、敦賀市議会の議員説明会へ。
文部科学省(以下、文科省)より、「新試験研究炉の建設予定地、設置許可申請見込み時期公表に係る対応について」説明を受けました。
【議員説明会開始前。自席にて。】
廃止措置作業が進む高速増殖炉「もんじゅ」の敷地内に新設する試験研究炉は、長らく原子力施設の新設がない中で計画されていること、廃止を迎える京都大学の試験研究炉KURに変わる役割を果たすこと、敦賀を「西の原子力研究拠点」に位置付けるものであり、私としては大いに期待しているもの。
「試験研究炉 山本たけし」でインターネット検索していただくと、私の過去ブログが4〜5件ほどヒットするので、経過はぜひそちらからご覧いただきたく存じますが、直近では、2023年の11月30日に「三菱重工業が『試験研究炉』の主契約者に選定」のタイトルにて、「試験研究炉」に関し、設計、製作および据付を実施する主契約企業に三菱重工業が選定され、実施主体である日本原子力研究開発機構(以下、JAEA)との間で基本契約を締結し、今後はJAEAの下で新試験研究炉の整備に係る事業を一括して取りまとめ、建設を推進していくことを掲載していたところ。
その試験研究炉に関しては、「もんじゅ」敷地内の具体的な建設地選定ならびに原子炉の設置許可を原子力規制委員会に申請する見込みの時期を今年中に公表するとしており、先の敦賀市議会12月定例会の原子力発電所特別委員会においてもそのように説明されていたところ。
こうした中、国土地理院が今年10月に「もんじゅ」の敷地内に活断層の可能性がある「※推定活断層」が存在することを示す活断層図を公開したことを受け、11月に開催された原子力規制委員会の定例会合では、もんじゅの廃止措置作業については安全上問題ないとした上で、山中伸介委員長は記者会見で「新しい研究炉を設置するのであれば、事業者がきっちりと断層の活動性を否定することを申請書の中で示してもらうことが第一」と指摘していたところ。
※推定活断層とは?
地形的な特徴により活断層の存在が推定されるが、現時点では明確に特定できないもの。
この日の文部科学省、JAEAからの説明では、主に以下の内容が示されました。
◉推定活断層の取扱いも含め、原子力規制庁と意見交換を行い、もんじゅ敷地内に設置するのであれば、地盤調査等をしっかり進め、客観的なデータ等のエビデンスを用意し審査基準への適合性を示す必要があるとの見解が原子力規制庁から示された。
◉技術的な観点から必要な対応について検討したが、安全性の確保を最優先に考え、しっかりとした検討・調査等が必要と判断した。このため、建設予定地及び設置許可申請見込み時期の公表を延期させていただきたい。
◉推定活断層については、位置が不明確であるなど不確定要素が多く、必要な調査項目や調査期間が見通せない状況であるため、今後のスケジュールについて現段階で具体的なことを申し上げることは困難であるが、原子力機構内での検討状況について適宜地元に説明するとともに、建設予定地及び設置許可申請見込み時期決定の公表時期については、調査の進展を踏まえて改めてお示しする。
その後の質疑では、複数の議員から、特別委員会の時と見解が180度変わったことを遺憾とする厳しい意見があったところ。
私は、11月の原子力規制委員会定例会合での議論経過も把握した上で質疑しましたが、そもそも商業用原子炉か試験研究炉か否か、出力の大小によらず、原子力施設の設置基準で定める「地盤」に係る要求事項は同じ。
(参考)
試験研究の用に供する原子炉等の位置、構造及び設備の基準に関する規則
(試験研究用等原子炉施設の地盤)
第三条 試験研究用等原子炉施設(水冷却型研究炉、ガス冷却型原子炉及びナトリウム冷却型高速炉に係るものを除く。以下この章において同じ。)は、次条第二項の規定により算定する地震力(試験研究用等原子炉施設のうち、地震の発生によって生ずるおそれがあるその安全機能の喪失に起因する放射線による公衆への影響の程度が特に大きいもの(以下「耐震重要施設」という。)にあっては、同条第三項の地震力を含む。)が作用した場合においても当該試験研究用等原子炉施設を十分に支持することができる地盤に設けなければならない。
2 耐震重要施設は、変形した場合においてもその安全機能が損なわれるおそれがない地盤に設けなければならない。
3 耐震重要施設は、変位が生ずるおそれがない地盤に設けなければならない。
とりわけ、3項にある基準が、さらに噛み砕いた「規制基準の考え方」において「(後期更新世以降の)活動性の可能性を否定できない」ものは適合しないとするしており、敦賀発電所2号機もこれに当たるとされているもの。
ついては、「推定活断層」が公開された以上、最新知見を取り込んで評価することは、現行規制の考えからいって致し方ないことであり、文科省やJAEAを責めるのは筋違いかと思うところ。
地点選定と設置許可申請見込み時期の公表が延期されることは、誠に残念であるものの、今後は、調査に関する必要な体制や予算を確保のうえ、早期の調査完了と一日も早い両項について公表いただきたく存じます。
前述のとおり、JAEA、京都大学、福井大学の3者連携のもと、コンソーシアム形式にて検討を進める本計画の先には、「西の原子力研究拠点」と位置付けられる敦賀の将来があります。
将来的には、多くの産業利用をはじめ、若い学生や国内外の研究者が集い、学び、磨いた技術や成果をもって、ここ敦賀から世界で活躍する。
そのような環境が構築されることへの期待に変わりありませんので、引き続き、今後の取組みを確認していく所存です。