台湾有事は存立危機事態か?

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『令和7年度版 防衛白書』2.わが国の防衛の「1.武力攻撃事態等および存立危機事態」には、以下記載されています。
 
事態対処法は、武力攻撃事態および武力攻撃予測事態(武力攻撃事態等)並びに存立危機事態への対処のための態勢を整備し、もってわが国の平和と独立並びに国および国民の安全の確保に資することを目的としている。同法では、武力攻撃事態等および存立危機事態への対処についての基本理念、基本的な方針(対処基本方針)として定めるべき事項、国・地方公共団体の責務などについて規定している。
わが国に対するミサイル攻撃や島嶼(しょ)部への侵攻などの武力攻撃が生起した場合や、存立危機事態が生起した場合、政府は、同法に基づき対応していく。
 
現在、台湾有事をめぐって高市総理が国会答弁した「存立危機事態」発言が波紋を呼んでいる訳ですが、この「存立危機事態」とは、上記に続けて、次のように解説されています。
 
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わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態。
 
さらに防衛白書は続き、「武力攻撃事態等または存立危機事態に至ったときは、政府は、事態対処法に基づき、次の事項を定めた対処基本方針を閣議決定し、国会の承認を求めることになる。」と述べています。
 

【武力攻撃事態等および存立危機事態への対処のための手続き(『令和7年度版 防衛白書』より抜粋引用)】
 
あらためて、基本の「キ」を読み返すに過ぎませんが、この「存立危機事態」と今回の高市総理発言について、国民民主党の玉木雄一郎代表が、X(旧Twitter)にて整理をされており、大変分かりやすかったため、本日はこのポストをご紹介いたします。
 
以下、玉木代表Xポスト引用。
 
【台湾有事は存立危機事態か?】
 
「台湾有事」が日本にとって「存立危機事態」(=限定的な集団的自衛権の行使が可能となる事態)に該当するかどうかが、国会やメディアでも話題になっていますので、少し整理しておきます。
 
◾️存立危機事態の定義
 
事態の認定は、「武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律」第2条第1項第4号の定義に基づいて、政府がその都度、判断することになります。
 
「存立危機事態」の法律上の定義は以下のとおりです。
①我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより
②我が国の存立が脅かされ、
③国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある
事態です。
 
◾️「密接な関係にある他国」への攻撃が条件
 
よって、「存立危機事態」が認定されるためには、例えば、以下のような条件が満たされることが必要です。
 
①「我が国と密接な関係にある他国」に対する武力攻撃
→ 日本は台湾を「国家承認」していないため、台湾への攻撃のみをもって日本が集団的自衛権を行使することはできません。法律上は、「密接な関係にある他国」が攻撃を受けることが条件で、この「密接な関係にある他国」には米国が想定されています。その上で、
 
②「我が国の存立が脅かされる」
→ 例えば、台湾周辺海域での戦闘が拡大し、日本のシーレーンや離島の防衛、在沖米軍基地の機能に直接影響が及ぶような「我が国の存立が脅かされる」ことが条件です。さらに、それだけではなく
 
③「国民の権利が根底から覆される明白な危険」
→ 例えば、日本本土や在日米軍基地が攻撃対象となったり、エネルギー・食料供給が遮断されて、国民生活に致命的な打撃を受けるといった「国民の権利が根底から覆される明白な危険」が発生することが条件です。
 
◾️台湾への攻撃だけでは、存立危機事態を認定できない
 
要は、台湾への攻撃があっただけでは、存立危機事態を認定できません。そして、仮に、米国への攻撃があった場合であっても、それだけで認定できるものでもなく、我が国や国民への地理的、機能的影響の有無について冷静に見極めなければなりません。
 
そして、先日のトランプ大統領の発言からも分かるように、米国は、台湾有事の際に米国が介入するかどうかについては明言せず、「あいまい戦略」を取り続けています。仮に、米国の介入がないのであれば、「存立危機事態」の認定はできません。
 
よって、「台湾有事は日本にとって存立危機事態か?」と問われれば、「すべての情報を総合的に勘案してケースバイケースで判断」としか言えません。それは歴代の総理も防衛大臣も同様に答弁してきました。
 
◾️武力行使の「新3要件」
 
加えて、存立危機事態と認定されただけでは、「武力行使」はできません。
 
武力を行使するためには、いわゆる「新3要件」を満たす必要があり、
(1)「存立危機事態」であることに加え、
(2)「他に適当な手段がない」こと、
(3)「必要最小限の実力行使」にとどまること
との要件も満たさなければなりません。
憲法上の制約に起因するハードルが設けられています。
 
◾️政治家もメディアも慎重で正確な情報発信を
 
安全保障の問題はすべての国民に関わることです。
 
法律上の要件や定義などについて、政治家やメディアは慎重かつ正確な情報を発信することが重要です。また、日中国交正常化の際、田中角栄総理、大平正芳外相が署名した「日中共同声明」をはじめとした歴史的経緯への理解も不可欠です。少なくとも、TVなどのメディアが、「台湾有事は存立危機事態か?」といった“雑な“設問をすることには、ことの重要性と複雑性を考えれば、慎重になるべきです。誰の利益にもなりません。
 
<引用終わり>
 
なお、最後にあった◾️政治家もメディアも慎重で正確な情報発信を に関しては、別のXポストで次のように述べています。
 
<さらに引用>
 
週末も様々な世論調査の結果が出ていますが、“台湾有事”に関しては、案の定、「台湾有事で集団的自衛権を行使するという考えに賛成ですか、反対ですか。」などと言った「雑な」設問が多く、その賛否の回答の拡散が、いたずらに分断や対立を煽る結果になることに強い懸念を抱きます。
 
本件に関しては、メディアの「聞き方」「報じ方」の責任も大きいと感じます。まずは、「存立危機事態」とは何か、日本が限定的な集団的自衛権を行使できるのは法律上いかなる要件を満たすときなのかなどを正確に伝えるのが先ではないでしょうか。
 
『TVなどのメディアが、「台湾有事は存立危機事態か?」といった“雑な“設問をすることには、ことの重要性と複雑性を考えれば、慎重になるべきです。誰の利益にもなりません。』
 
<引用終わり>
 
結びの言葉は、先のポストと繰り返しているため、相当な思いがあるものと認識するところ。
 
主語の「メディア」を、そもそも本件を質問した立憲民主党の岡田克也議員に当てはめると、外務大臣経験者でもあるが故、「存立危機事態」の重みを理解し、どのような状況であれば事態を認定するのかといった具体例はすなわち「機密情報」であり、これを公開の場で明示することの意味(デメリットしかない)は重々承知していると思う次第ですが、国益をどう考えてこれを取り上げのか。
 
いずれにしても、冷静かつ毅然と対処すべき問題なだけに、政治に携わる立場として、法的位置付けに基づく、考えの整理だけはしておきたいと思います。