ALPS処理水の海洋放出「開始」

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今週になって、全漁連との意見交換、岸田首相の表明から閣議決定に至るまで、一気に進んだ福島第一原子力発電所で発生するALPS処理水の海洋放出の件。
 
東京電力は8月24日13時過ぎ、海洋放出を開始しました。
 
2023年度の計画では、約7,800㎥ずつ計4回の放出が行われ、トリチウム総量は約5兆ベクレル(事故前の放出管理値は年間22兆ベクレル)。
 
初回放出分は1日当たり約460㎥、約17日間で実施する見通しとするほか、東京電力では、データ公開に努めるべく、ALPS処理水の海洋放出における各設備での状況を1つにとりまとめたポータルサイト「ALPS処理水 海洋放出の状況」を開設しました。
 

 
ここには、海洋放出に至る各工程のモニタリング結果を表示するなど、透明性をもって公開されていますので、ぜひ一度ご覧いただければと思います。
 
 →「処理水ポータルサイト」(東京電力ホールディングスHP)はこちらから
 
なお、これを報じるニュースを見ておりますと、どこかおどろおどろしく、いかにも「いけないことをやっている」かの如く編集されている感が否めませんが、何故、自国を貶めるようなトーンなのか、私には理解できません。
 
再度申し上げておきますと、ALPS処理水は、トリチウム(*1)以外の放射性物質の告示濃度比総和(*2)が1未満となるまで浄化したものであり、福島第一原子力発電所では、こうしたALPS処理水をトリチウム濃度が1,500ベクレル/リットル未満となるよう、海水で100倍以上に希釈して海洋へ放出します。
 
この濃度は、排出にかかる国の規制基準値である60,000ベクレル/リットルの40分の1未満と十分に低い濃度であるため、環境や健康への影響は考えられません。
 
*1 トリチウムは「水素」の仲間であり、自然界でも生成されています。雨水や水道水、大気中にも含まれており、放射線を発しますが、とても微弱で紙1枚で防げる程度です。
 
*2 告示濃度比総和:施設から放出される水や空気に対し定められている放射性物質ごとの濃度の限度を告知濃度限度といいます。複数の放射性物質を放出する場合は、核種毎に告示濃度限度が異なることから、それぞれの告示濃度に対する比率を計算し、その合計値を「告示濃度比総和」と呼んでいます。
 
また、海洋放出開始で、一段とボルテージを上げて批判、反対している筆頭が中国ですが、これに対し、国民民主党の玉木雄一郎代表は「科学的根拠を欠く極めて政治的な対応であり、国際社会の理解を得ることはないだろう。日本国政府は科学的根拠をもって冷静に反論するなど毅然とした対応を取るべき。中国の国内経済が悪化する中、関心を外に向けさせようとする意図もあるのではないか。」とツイートしています。
 
岸田首相までとはいかずとも、林外務大臣くらいは、毅然と反論してはいかがかと、私も同じ気持ちであります。
 
なお、これも繰り返しとなりますが、トリチウムの海洋放出は、中国や韓国はもとより、世界各国で同じように行われており、まさに「おま言う」(お前が言うか)状態であることを申し上げておきます。
 

【近隣アジア諸国の年間トリチウム放出量(経済産業省HPより)】
 
世界各国のトリチウム放出量など、詳細は以下リンクをご覧ください。
 →外国の各発電所のトリチウム放出量(資源エネルギー庁:ALPS処理水資料集より)
 
福島の廃炉作業を進めるうえで大きな課題であった、ALPS処理水の海洋放出がこうして開始されましたが、科学的且つ客観的視点をもって対応し、そして冷静に見守りつつ、私は今後も福島県で獲れた魚を美味しくいただきたいと思います。

ALPS処理水の海洋放出を「事実上容認」

ブログ 原子力

「雨が降ろうが、風が吹こうがやる」との思いで続けている月曜朝の街頭演説ですが、実は先週お休みしました。
 
ちょうど先週月曜日は8月14日にあたり、各ご家庭で静かに御魂をお迎えするお盆に騒がしくするのもいかがなものかとの自己判断でそうさせていただいたことをご容赦いただく訳ですが、お盆明けの昨朝は再開。
 
朝から湿度の高い暑さのなか、約30分間、近況活動報告と敦賀でも「180円」の文字が現れているレギュラーガソリンの価格に関し、国民民主党は、政府が動くまで声(9月末までが期限の現行補助金の延長やトリガー条項の凍結解除など)を挙げ続ける旨、お伝えしました。
 
なお、国民民主党においては、昨日から玉木雄一郎代表と前原誠司代表代行の一騎打ちでの「代表選挙」が始まりましたので、その点に関しても注視いただければと思います。
 
さて、街頭演説でも少し触れました東京電力福島第一原子力発電所の処理水海洋放出の件に関しては、既に報道されているとおり、岸田首相は本日午前に関係閣僚会議を開催し、放出開始日を決定すると発表しました。
 
首相は開始日こそ明言しませんでしたが、政府は24日にも放出する方向で最終調整しているとのこと。
 
昨日は、その前提となる「全国漁業協同組合連合会(全漁連)」の「理解」について、西村経済産業大臣、岸田首相が相次いで面会し、「放出への理解」を求めましたが、これを高度な交渉というのか、正直、日本語は難しいと感じた次第です。
 
と申しますのも、首相との面談において、全漁連会長はまず、処理水放出については「反対であるということはいささかも変わりない」と述べたうえで、放出計画は国際的な安全基準に合致すると評価した国際原子力機関(IAEA)の包括報告書などに触れ、政府の支援策や科学的な安全性に関し「われわれの理解は進んできている」との認識を示しました。
 
これに対し首相は、漁業者支援などの十分な予算措置を求めた全漁連に対し、「(農林水産省の)水産予算とは別に、今後数十年の長期にわたろうとも政府全体で責任を持って対応する」と、政府が設けた風評被害対策300億円、漁業継続の支援500億円の基金を活用し、廃炉完了まで対策を続ける考えを伝えました。
 
この発言を受け全漁連会長は、「非常に重い発言だ」と評価。
 
報道では、十分な予算措置と安全性確保の継続を条件に、放出開始を「事実上容認した」とあります。
 
首相との面談に同席した西村経産相は終了後の記者会見で、「一定の理解を得たと判断した」と述べ、一方、同じく面会に同席した福島県漁連幹部は「約束は果たされていないが、破られたとは考えていない」と語ったとあります。
 
これまで「科学が風評に負けるのは国辱だ」と主張してきた私ですが、「反対であるということはいささかも変わりない」と前置きがあったうえでの一連のやり取りを伺うに、そのこと(科学>風評)を認識しつつも、「YES」か「NO」かの単純な答えで表せない、苦渋に苦渋を重ねた漁業関係者の方々の心中を察した次第です。
 
そして、「承知した」とまでは発しないものの、こうして関係者の皆さまが「一定の理解」と考えを示された以上、今後重要なのは、単に不安を煽る「風評加害」に加担してはならないということ。
 
今朝の朝刊各紙がどのように報道しているか、すべてに目を通した訳ではありませんが、とりわけマスメディアの存在は大きいことから、福島の復興を進めるうえにおいて、私たちは今後も表層的なことに惑わされることなく、科学で証明されたことをもとに思考し、対応をしていくべきと今一度認識する次第です。
 

【海洋放出を待つ、ALPS処理水が貯留するタンク群。これまでの、またこれからの関係者の皆様のご尽力に敬意を表します。】

長崎県対馬市議会の特別委員会が「文献調査」受け入れの請願を「採択」

ブログ 原子力

台風7号は通り過ぎたものの、昨日は大雨の影響で東海道新幹線が大混乱。
 
15日の運休で移動できなかった、お盆の帰省客でごった返す各駅の様子や乗車したは良いものの、9時間車内に缶詰め状態などのニュースに触れ、大変な状況を目にしたところ。
 
同じく帰省していたわが家の長女も昨日、東京に戻る予定でしたが、通常ダイヤに戻るとされる本日の移動に変更。
 
勤務先のご配慮に感謝するところですが、いずれにしても、大動脈にも影響を与え続けた自然の脅威をまざまざと感じたお盆となりました。
 
さて、そのようななか、お盆の時期にも関わらず開催されたのが長崎県対馬市議会。
 
対馬市では6月20日、原子力発電所で発生する高レベル放射性廃棄物の最終処分場に向けた文献調査を巡る請願書8件(5件は反対)の取り扱いについて、特別委員会を設けて付託すると全会一致で決定していたところ。
 
市議会ではその後、設置した特別委員会にて、請願団体の代表者や有識者を参考人として招致するなど議論してきましたが、昨日開催した同委員会で、地元の建設業団体が提出した調査受け入れを促進する請願を賛成多数で採択しました。
 

【文献調査受け入れの請願を賛成多数で採択した対馬市議会の特別委員会(産経NEWSより引用)】
 
文献調査を巡っては、市内の建設業団体が人口減少や経済衰退を理由に受け入れを要請する一方、漁協の一部や市民団体は1次産業や観光業への風評被害を訴え、反対する請願を出していましたが、反対の請願は不採択に。
 
9月12日に予定されている本会議でも採択される見通しであり、今後は、処分場に慎重な姿勢を示してきた比田勝(ひたかつ)市長の判断に注目が集まるとされています。
 
現在、文献調査を進める北海道の寿都町、神恵内村に続き、調査にはより多くの自治体(原子力発電所の立地自治体も含め)に手を挙げて欲しいと考える私としては、対馬市議会の判断を尊重し、市長も前に進める姿勢を示していただきたいと思うところです。
 
また、原子力の関係で言えば、中国電力と関西電力が山口県上関町で建設を計画している原子力発電所の使用済み燃料の中間貯蔵施設を巡っては、西町長が18日にも、調査の受け入れに対する態度を表明するとされていることや、さらには「夏頃の放出」としている東京電力福島第一原子力発電所の処理水海洋放出の件についても、判断時期が近づいています。
 
こうした件に触れるに、決して課題を先送りしないとの覚悟のもと、客観性ある科学的根拠をもって進めることが、日本の原子力政策にとって極めて必要なこと。
 
寿都町や神恵内村が文献調査に手を挙げたのは、日本にとってこの最終処分の問題をどうにかしないといけないという、まさに「国家観」あっての行動。
 
繰り返しになりますが、バックエンド側の問題に関しては、原子力立地自治体も電力消費地も関係なく、自分ごととして捉えていただくことが肝要であることから、先に述べた相次ぐ原子力関連の話題に対しても、関心を高めていただけますようお願いいたします。

「中間貯蔵施設」設置に向けて中国電力と関西電力が共同開発

ブログ 原子力

7月28日に原子炉を起動、12年ぶりに稼働した関西電力高浜発電所1号機については、昨日15時に発電機と送電設備をつなぐ並列操作を行い、発電を開始しました。
 
工程通り進めば、5日には100%出力に到達するとのこと。
 
この暑さの中での点検作業など、現場の緊張感は続くことと思いますが、定格電気出力82.6万キロワットは、厳しい夏場の電力需給に大きく貢献することから、無事のフルパワー到達に向けて心からエールを送るところです。
 
さて、同じ原子力の話題で、昨日「注視」と書きました上関町(山口県)における使用済み燃料「中間貯蔵施設(以下、中間貯蔵施設)」設置検討の件について。
 
中国電力は、上関原子力発電所の建設に時間を要する中で、上関町長からあった地域振興策の検討要請に対し、上関町の同社所有地内において「中間貯蔵施設」の設置に係る検討を進めることとし、立地可能性を確認するとともに、計画の検討に必要なデータを取得するための調査を実施したい旨、昨日、町長に回答しました。
 
なお、中間貯蔵施設の検討にあたっては、施設規模や経済性等を勘案する中で、同社単独での建設・運営は難しいと判断し、同社と同様に中間貯蔵施設のニーズがある関西電力との共同開発を前提に、今後、調査・検討を進めていくことも公表しました。
 
 →中国電力のプレスリリースはこちら
 

【中国電力 上関原子力発電所の建設予定地(産経NEWSより引用)】
 
一方、関西電力はホームページで、「原子力発電所の将来の安定運転に必要な使用済燃料の搬出容量を確保するため、引き続き、あらゆる可能性を追求して最大限取り組んでまいります。」とのコメントを発表。
 
福井県においては、関電が示した「フランスへの使用済み燃料搬出」について、再度国に説明を求めている段階にありますが、この共同開発はあるにせよ、段階を経て明らかにするのでなく、この時点で公表することに大きな意味があるものと感じた次第です。
 
中国電力によれば、準備が整い次第、調査を開始するとあります。
 
現地調査には半年程度を要するとしていますが、発電所建設にあたっての評価等を踏まえれば、施設立地点として成立するのは間違いないと推察するところ。
 
このことが今度は、国を含めた、関電と福井県の間でどうなるのか。
 
福井県の原子力行政とも大きく関わるものであり、引き続き、動向に注視する所存です。
 
(投稿後、追記)
上関町長が、今後議会の判断を仰ぐと述べていらっしゃる通り、地元の同意、ご理解があって進められるものであり、現時点で実施が決定した訳ではございません。
私の投稿が「ありき」と誤解を招かぬよう補足、追記いたします。

高浜発電所1号機が「再稼働」

ブログ 原子力

昨日は、午前中、先の統一地方選挙等での改選を踏まえ開催された嶺南広域行政組合の臨時議会、夕刻は、北陸電力労働組合福井県支部の「ユニオン研修」に出席。
 
とりわけ、ユニオン研修では、県内各地から参集された労組役員の皆さんに対し、日頃のご支援への御礼、そしてこの猛暑のなかにおいても北陸エリアの電力安定供給を守っていただいていることへの感謝をお伝えしました。
 
「北陸エリアでんき予報」(北陸電力送配電HP)では、昨日の需要ピーク時の使用率は88パーセント。
 
「安定した状況」ではあったものの、こうした現場の方々の努力あって成り立っていることを忘れてはならないと、改めて感じた次第です。
 
さて、電力供給といえば、同じ福井県内で再稼働を果たした関西電力の高浜発電所1号機(以下、高浜1号)。
 
高浜1号は、1974年に運転を開始し、新規制基準に基づく原子力規制委員会の審査に合格した国内で最も古い原子力発電所。
 
「原則40年、最長60年」と定められた現行ルール下で、2016年に40年超運転の審査に国内で初めて合格したプラントですが、新規制基準で義務づけられたテロ対策の「特定重大事故等対処施設(特重施設)」の整備を終え、こうして再稼働を迎えたもの。
 
7月28日午後3時には、12年7ヶ月ぶりとなる原子炉起動となり、ここに至るまでの関係者の皆様のご努力に心より敬意を表する次第です。
 

【原子炉を起動した高浜1号(手前)奥は再稼働の準備が進む2号(福井新聞web版より引用)】
 
新規制基準下で運転開始から40年を超えた原子力発電所が稼働するのは、関電美浜発電所3号機に続き国内2基目ですが、高浜1号が稼働したことで、関電の稼働中原子力発電所は約12年ぶりに6基体制となり、9月15日に再稼働予定の高浜2号が続けば、福島第一原子力発電所事故後初めて、廃止措置に進んだ発電所を除く全7基が稼働する見通しであり、これを喜ぶところです。
 
電力需要の厳しい、いわゆる「夏季ピーク」に、高浜1号の82.6万キロワット(定格出力で)が戦線復帰することの意味合いは大変大きく、さらなる安定供給に寄与することを忘れてはなりません。
 
こうして関電の若狭のプラントがほぼ再稼働を果たすことにより、ここ福井県嶺南地方が日本の電力安定供給を支えるうえで重要なエリアであることを改めて強く認識するところですが、これに何としてでも続かねばならないのが我が「敦賀2号」。
 
「原子の灯」をもって社会に貢献するとのマインドのもと、前進あるのみです。

三菱重工の革新軽水炉「SRZ-1200」を聞く

ブログ 原子力

昨晩は、福井県原子力平和利用協議会(以下、原平協)敦賀支部の令和5年度第1回研修セミナーに参加させていただきました。
 
この日のテーマは、「革新軽水炉 SRZ-1200をメインに次世代軽水炉について」。
 
しかも、実際に設計を担当する三菱重工業(株)の原子力セグメント SRZ推進室の西谷室長にお話しいただけるとあって、大いに興味をもって会場のあいあいプラザに向かった次第。
 
1992年に三菱重工に入社された西谷室長は、原子力畑を歩み、日本原電の敦賀2号にも来られたことがあるほか、美浜、大飯、高浜と主に若狭にある関西電力のプラントの保守管理に携わられてこられたとお聞きし、親近感が湧いたところですが、第1部では、三菱重工が開発を進める革新炉のうち、小型軽水炉、高温ガス炉、高速炉、マイクロ炉、第2部では本題の「SRZ-1200」について、大変丁寧に説明いただきました。
 
革新軽水炉「SRZ-1200」に関しては、これまで24基の加圧水型軽水炉の国内建設および保守に携わってきた三菱重工が、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、既設プラントの再稼働と安全安定運転に貢献するとともに、「SRZ-1200」の早期市場投入を目指すものであり、名称のSRZにはそれぞれ以下の意味を込めているとのこと。
 
S:Supreme Safety(超安全)、Sustainability(持続可能性)
R:Resilient(しなやかで強靭な)light water Reactor(軽水炉)
Z:Zero Carbon(CO2排出ゼロ)で社会に貢献する究極型(Z)
数字の“1200”は電気出力120万kW級を表す。
 

【革新軽水炉「SRZ-1200」(三菱重工ホームページより)】
 
 →三菱重工HP 革新軽水炉「SRZ-1200」のページはこちら
 
PWR4電力(北海道、関西、四国、九州)との共同研究による「SRZ-1200」の標準プラントの開発を進めており、2020年度末にプラント概念設計を完了。
 
2021年度より基本設計を開始し、現在は許認可向けのプラント設備使用検討を実施中であり、今後並行してプラント建設に向けた立地等の固有条件を考慮した個別プラントの基本設計、詳細設計を進め、2030年代半ばの実用化を目指すとありました。
 
国がGX実行会議の次世代革新炉ロードマップで、最も早く開発を進める「革新軽水炉」ですが、まさにこの「SRZ-1200」はこれにあたるものと認識した次第です。
 
開発経緯とコンセプトを伺った後は、「SRZ-1200」の設計目標とプランと仕様、主要機器の概要、安全性の向上、運用性・経済性の向上と、それぞれ現時点の設計の考えをお伺いすることができました。
 
なお、最後の運用性の向上の観点では、「再生可能エネルギーの発電電力量に合わせた大規模な出力調整能力を付加」したとありました。
 
つまりは、系統の負荷に追従した運転を可能にするということであり、これまでのベースロード電源(熱出力一定運転)と発送を変えるもの。
 
これは、19日のブログで紹介した「再循環流量により原子炉出力の調整を容易化することで再生可能エネルギーとの共存も図る」とする東芝ESSの革新軽水炉「iBR」の考えと同じであり、これが潮流であるとも認識した次第です。
 
これまでも「原子力か再エネか」ではなく、「原子力も再エネも」利用していくとの考えからすれば、この負荷追従運転の必要性も理解するところですが、これも時代の変化ということでしょうか。
 
こうして約1時間半のセミナーはあっという間に時間が過ぎてしまいましたが、最新の設計、しかもリアルに設計されている責任者からお話しを伺えたのは大変貴重なことであり、講義いただいた西谷室長はもとより、この場をセットいただいた原平協敦賀支部の皆さんに感謝申し上げます。
 
19日のブログと重複しますが、こうして国内のプラントメーカー(GE日立→BWRX-300、東芝→iBR、三菱重工→SRX-1200)が揃い踏みで「次世代革新炉」の開発を進め、日本の原子力技術が世界に誇るものであると証明することにつながればと切に願い、心より応援する次第です。

東芝ESSが革新軽水炉「iBR」を発表

ブログ 原子力

三連休明け、週始めの朝は街頭活動からスタート。
 
いつも通り、車を停めさせていただく「つるが薬局」さんにご挨拶した後、晴天のもと8時までの約30分間、マイクを握らせていただきました。
 
話しながら見ておりますと、ワチャワチャとじゃれあいながら登校する男子中学生の姿を微笑ましく感じたところですが、思えばもうすぐ「夏休み」。
 
梅雨が明けないまま夏本番を迎える勢いですが、暑さに負けず頑張りたいと思います。
 
さて、先の6月定例会の一般質問では「次世代革新炉」を現実的に進めるための施策のひとつとして、事業者が予見性を高めるため〝政府の直接投資”による事業環境整備の必要性を国に求めるべきと意見し、〝直接”か否かは置き、ファイナンスの面で重要であることは、米澤市長と意見が一致したところ。
 
その際、例として英政府がサイズウェルC号機建設に「直接投資」した約1100億円の話しをしましたが、英政府では「小型モジュール炉(SMR)」の導入に向け、開発技術を競うコンペを実施すると発表。
 
その中で、官民合わせ、関連事業に数十億ポンド(数千億~1兆数千億円)の投資が行われる可能性があることが明らかになりました。
 
もちろん、エネルギー安全保障の強化につなげるのが狙いでありますが、技術革新に向け、国が資金面でも前面に出て後押しする姿勢は、まさに「国策」として進める意思を表すものであり、日本においても是非、こうした形で国の意思を示して欲しいと考える次第です。
 
また、国内における次世代革新炉(とりわけ革新軽水炉)に関しては、三菱重工が「SRZ-1200」の開発を進め、一歩リードするところですが、7月11日には東芝エネルギーシステムズ(東芝ESS)が、報道関係者らと意見交換を行う「東芝技術サロン」を開催する中で、革新軽水炉「iBR」のコンセプトを紹介したとのこと。
 

【革新軽水炉「iBR」のイメージ(東芝ESS提供)】
 
紹介されたコンセプトでは、堅牢な建屋、静的メカニズムを取り入れた安全システムを採用し、さらなる安全性向上と安全設備・建屋の合理化を同時に達成するほか、再循環流量により原子炉出力の調整を容易化することで再生可能エネルギーとの共存も図るとありました。
 
後段の部分はつまり、太陽光など再生可能エネルギーによる発電量に合わせて、原子力発電所側で負荷調整をするとの意味であり、これまでの発想とは異なるもの。
 
「再エネとの共存」の言葉がそのことを表していると解釈した次第ですが、この先、どういった炉に設計していくのか楽しみなところでもあります。
 
なお、敦賀発電所1号機では東芝、日立、敦賀発電所2号機では三菱重工の方とお仕事させていただいた私ですが、こうして国内のプラントメーカーが息を吹き返し、日本の原子力技術が世界に誇るものであることを証明することになればと強く願い、応援する次第です。
 
奇しくもウクライナ侵略により、世界のエネルギー事情が劇的に変わったことによって、欧米各国が原子力発電に再び舵を切ることになった訳ですが、これがなければ恐らく、世界の原子力は中露に席巻されていたことでしょう。
 
中露が原子力の技術も人材も握ってしまっていたと思うと恐ろしくてなりませんが、そう思えばやはり、今こうして欧米、そして日本が原子力を進めることは、世界の安全保障上のバランスを取る意味でも極めて重要です。
 
そうした意味も含め、既に開発を進めるGE日立とともに、東芝、三菱重工が揃い踏みで、「次世代」に向けた技術革新が進むことを切に期待する次第です。

文句や疑義があるのならば科学的に論理的に反論を

ブログ 原子力

中国が日本に対し、「核汚染水の海洋放出は人類の命と健康に関わる」と主張し、「独断専行してはならない」と牽制する東京電力福島第一原子力発電所「処理水」の海洋放出。
 
国内では、西村経済産業相が昨日、全国漁業協同組合連合会(全魚連)の会長らと面談し、「国際的な安全基準に合致している」と理解を求めたものの、全漁連側は「反対」の立場を崩さず、歩み寄りはみられなかったとのこと。
 
また、政治においては、立憲民主党の阿部知子衆議院議員らが処理水の放出計画中止を求める共同声明を発表したことに対し、国民民主党の榛葉賀津也幹事長は記者会見で、「(放出されるのは)汚染水ではなくて科学的に安全が証明された処理水だ。科学は嘘をつかない。文句や疑義があるのならば科学的に論理的に反論をしてほしい」と述べ、苦言を呈しました。
 
さらに、「こういう問題を政治利用して世論を煽ったり、ミスリードをするような言動を繰り返すのは極めて残念、遺憾だ」とも語ったとのこと。
 

【会見する国民民主党 榛葉賀津也幹事長】
 
榛葉幹事長には「良くぞ言ってくれた。その通り!」と深く相槌を打った次第ですが、難しい問題だからこそ、政治家が前面に出て、態度を明らかにすることが重要なことと認識するところです。
 
なお、そもそもの「ALPS処理水」は、建屋内に溜まった放射性物質を含む水を浄化処理した水で、増え続ける処理水の処分方法について、6年以上にわたる専門家らによる議論を経て、2021年4月に海洋放出する方針を決定したもの。
 
除去するのが困難な「トリチウム」は宇宙から降り注ぐ宇宙線によって生成され、自然界にも広く存在するほか、雨や飲料水にも含まれており、体内に入っても、蓄積されることはなく、水と一緒に排出され、人体への影響はほとんどないと考えられています。
 
また、国内外の原子力施設からも各国の規制基準を満たした上で、海洋や河川、大気中に放出されています
 
さらに、放出するトリチウムについては、ALPS処理水を大量の海水で希釈することにより、濃度を国の規制基準値(60,000ベクレル/リットル)の40分の1、世界保健機関(WHO)が定める「飲料水基準」(10,000ベクレル/リットル)の約7分の1、1500ベクレル/リットル未満にまで薄めることとしています。
 
被災者であり、当事者である全漁連の皆さんが「反対」している部分が、こうした科学的な面でない「不安」から来るものであるとするならば、これを取り除くのは極めて難しい訳ですが、出来ることは、繰り返し丁寧に、あらゆる角度から説明を重ねることに尽きると考えるところ。
 
そこから生まれる、互いの「信頼関係」がまさに、「不安」に対する解決策であるとも考える次第です。
 

【放出を待つ、福島第一原子力発電所敷地内のタンク群(東京電力HDより)】

関西電力労働組合「第15回 若狭地区本部定時大会」にてご挨拶   

ブログ 働く仲間とともに 原子力

昨日のブログにて、日本原子力研究開発機構の「もんじゅ」で蓄積された知見が今後に生かされることを期待すると述べましたが、ちょうど視察をさせていただいた12日には、資源エネルギー庁の高速炉開発会議戦略ワーキンググループが開催され、その中で、高速炉実証炉の開発に向け、三菱FBRシステムズ(MFBR)が提案する「ナトリウム冷却タンク型高速炉」を概念設計対象に、将来的にその製造・建設を担う中核企業として三菱重工業を選定したとのこと。
 
今回、概念設計対象として選定された「ナトリウム冷却タンク型高速炉」は、同じナトリウム冷却型でもループ型の高速増殖原型炉「もんじゅ」とは異なる仕様ですが、フランス、中国、インドなど、海外では多く採用されているものであり、今後、資源エネルギー庁では、高速炉開発の司令塔となる組織のあり方について検討していくともありました。
 
2022年末の原子力関係閣僚会議にて、高速炉開発の戦略ロードマップを改訂し、「常陽」、「もんじゅ」を経て、民間企業による研究開発が進展し、国際的にも導入が進んでいることから、ナトリウム冷却型高速炉を「今後開発を進めるに当たって最有望」と評価して以降、2024年以降の概念設計を開始するに当たって最有望となるナトリウム冷却型高速炉について、その炉概念の仕様・中核企業選定のための公募を3月より行っていたものでありますが、こうして具体的な選定がされ、開発が前進することを歓迎するところ。
 
なお、これを受けて日本原子力産業協会の新井史朗理事長が発表したメッセージ、「今後の高速炉開発に伴う関係産業の全体の実力涵養とともに、若者の原子力技術への興味を高め、人材育成にも寄与するものとして大いに期待したい」には、私も全く同感。
 
日本の科学技術と原子力の将来に、夢を持って携わってくれる若者が一人でも増えることにつながればと思う次第です。
 
さて、こうして明るいニュースに触れた昨日は、関西電力労働組合「第15回 若狭地区本部定時大会」にて来賓としてお招きいただき、ご挨拶の機会を頂戴しました。
 
会場入りの前には、以前、私が労組本部役員を務めていた時にお世話になった、関西電労本部執行委員長の方とも久々に再会、お話しすることもでき、大変嬉しかった訳ですが、聞けば、大雨で特急が運休となり、この日は自家用車で大阪から来られたそう。
 
普通であれば、欠席としてもおかしくない状況であったかと思いますが、大会に参加される皆さんに何としてでも思いを伝えたいとの「気概」を大いに感じた次第であり、組織のリーダーのその姿勢に心打たれました。
 
私のほうは、連合福井の矢野会長に続きご挨拶をさせていただきました。
 
先の敦賀市議会議員選挙はもとより、日頃のご支援に対する感謝を述べた後、6月定例会の一般質問で取り上げた「次世代革新炉」を進めるに当たっての考えや国家的課題である「高レベル放射性廃棄物の地層処分」に関わる取り組みの重要性など、原子力に携わる立場として共有いただきたいことをお伝えしました。
 

【多くの代議員さんらを前にご挨拶。真剣に耳を傾けていただいたことに感謝。】
 
最後には、原子力職場に働く皆さんの思いを受け止め、今後も活動に邁進する旨、お約束申し上げるとともに関西電労若狭地区本部の益々のご発展をご祈念申し上げ、挨拶を閉じました。
 
なお、今大会をもって退任される若狭地区本部の藤本委員長におかれましては、委員長が大飯支部の時代からお付き合いさせていただいたこと、また何より、長きに亘り、この厳しい時代にあっても明るく、実直に組織を牽引されてこられたことに対し敬意を表するとともに感謝申し上げます。
 
今後は職場に戻られるとのことですが、藤本さんの新たなステージでのご活躍を心よりご祈念申し上げます。

「ふげん」「もんじゅ」の廃止措置、「新試験研究炉」候補地を視察

ブログ 原子力

福井地方気象台によれば、現在敦賀市には、大雨警報(土砂災害)及び雷、高潮注意報が発表されています。
 
また、天気予報ではちょうどこの後、通勤・通学時間帯に強い雨が降るようですので、車の運転などに十分注意して行動いただければと思います。
 
さて、天候不順が続く今日この頃ですが、昨日は、日本原子力研究開発機構さんよりお声掛けいただき、敦賀市議会議員7名にて、新型転換炉原型炉「ふげん」、高速増殖炉「もんじゅ」の廃止措置、「もんじゅ」敷地内に建設予定の「新試験研究炉」の候補地について視察させていただきました。
 
朝9時に敦賀市役所を出発し、「ふげん」では、概況説明の後、タービン建屋での廃止措置工事の様子やクリアランス物保管倉庫などを拝見。
 
25年に亘る運転を2003年3月に終え、2008年2月に廃止措置計画認可を受けた「ふげん」は、その後廃止措置を進め、現在は原子炉周辺設備の解体撤去を行なっており、併せて、発生する廃材に関しては、国のクリアランス制度に基づきながら、資源循環に向け、再利用に取り組んでいるとのことでした。
 
クリアランス金属再利用に関しては、福井県の嶺南Eコースト計画に基づき、車止めを製作し、同機構敦賀事業本部の駐車場に設置するほか、国のプロジェクトとして、若狭湾サイクルルート上の計10箇所にサイクルスタンド設置(2023年3月16日現在)、敦賀工業高校や福井南高校では照明灯を設置するなど、理解促進に向けて取り組んでおり、特にサイクルスタンドのニーズが増えていると伺いました。
 


【敦賀事業本部の駐車場に設置された、クリアランス金属再利用でできた「車止め」(2023年4月28日 やまたけ撮影)】
 
その後は、高速増殖炉「もんじゅ」へ。
 
概況説明いただいた後、まず始めに、つづら折りの取り付け道路をバスで上り、「新試験研究炉」の建設候補地に。
 
現候補地である山側盛土部(資材置場にしている更地)のボーリング調査地点を教えていただいたほか、追加候補地の2箇所についてもご教授いただきました。
 
「もんじゅ」に関しては、原子炉格納容器の原子炉上部にて、昨年終えた530体の燃料移動・燃料池貯蔵の流れと仕組み、タービン建屋オペレーションフロアでは、今年度から2026年度にかけて、タービン発電機や復水器、給水加熱器などについて解体撤去を予定している旨、説明を受けました。
 
事務所に戻ってからの質疑では、私を含め、全議員から関心高く質問があり、これに丁寧にお答えいただきました。
 
「百聞は一見に如かず」と言いますが、こうして貴重な機会を頂戴しましたこと、幹部の皆さん勢揃いで対応にあたっていただいたことに対しまして、日本原子力研究開発機構の皆様に心より感謝申し上げます。
 
7月18日には、同じく12名の市議が視察に参加されるとのことであり、議会全体で知見を高めることにつながればと思います。
 
最後になりますが、廃止措置やクリアランスに関しては、日本原電の敦賀発電所1号機とも連携のもと着実に進めていただくこと、また「もんじゅ」に関しては、今後、次世代革新炉のひとつとして、蓄積された知見が生かされることで、関係者の方々のマインドが継承されること、さらには新たな「試験研究炉」においては、世界に羽ばたく原子力人材をここ敦賀から輩出できますことを切に期待いたします。

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