ALPS処理水の海洋放出「開始」

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今週になって、全漁連との意見交換、岸田首相の表明から閣議決定に至るまで、一気に進んだ福島第一原子力発電所で発生するALPS処理水の海洋放出の件。
 
東京電力は8月24日13時過ぎ、海洋放出を開始しました。
 
2023年度の計画では、約7,800㎥ずつ計4回の放出が行われ、トリチウム総量は約5兆ベクレル(事故前の放出管理値は年間22兆ベクレル)。
 
初回放出分は1日当たり約460㎥、約17日間で実施する見通しとするほか、東京電力では、データ公開に努めるべく、ALPS処理水の海洋放出における各設備での状況を1つにとりまとめたポータルサイト「ALPS処理水 海洋放出の状況」を開設しました。
 

 
ここには、海洋放出に至る各工程のモニタリング結果を表示するなど、透明性をもって公開されていますので、ぜひ一度ご覧いただければと思います。
 
 →「処理水ポータルサイト」(東京電力ホールディングスHP)はこちらから
 
なお、これを報じるニュースを見ておりますと、どこかおどろおどろしく、いかにも「いけないことをやっている」かの如く編集されている感が否めませんが、何故、自国を貶めるようなトーンなのか、私には理解できません。
 
再度申し上げておきますと、ALPS処理水は、トリチウム(*1)以外の放射性物質の告示濃度比総和(*2)が1未満となるまで浄化したものであり、福島第一原子力発電所では、こうしたALPS処理水をトリチウム濃度が1,500ベクレル/リットル未満となるよう、海水で100倍以上に希釈して海洋へ放出します。
 
この濃度は、排出にかかる国の規制基準値である60,000ベクレル/リットルの40分の1未満と十分に低い濃度であるため、環境や健康への影響は考えられません。
 
*1 トリチウムは「水素」の仲間であり、自然界でも生成されています。雨水や水道水、大気中にも含まれており、放射線を発しますが、とても微弱で紙1枚で防げる程度です。
 
*2 告示濃度比総和:施設から放出される水や空気に対し定められている放射性物質ごとの濃度の限度を告知濃度限度といいます。複数の放射性物質を放出する場合は、核種毎に告示濃度限度が異なることから、それぞれの告示濃度に対する比率を計算し、その合計値を「告示濃度比総和」と呼んでいます。
 
また、海洋放出開始で、一段とボルテージを上げて批判、反対している筆頭が中国ですが、これに対し、国民民主党の玉木雄一郎代表は「科学的根拠を欠く極めて政治的な対応であり、国際社会の理解を得ることはないだろう。日本国政府は科学的根拠をもって冷静に反論するなど毅然とした対応を取るべき。中国の国内経済が悪化する中、関心を外に向けさせようとする意図もあるのではないか。」とツイートしています。
 
岸田首相までとはいかずとも、林外務大臣くらいは、毅然と反論してはいかがかと、私も同じ気持ちであります。
 
なお、これも繰り返しとなりますが、トリチウムの海洋放出は、中国や韓国はもとより、世界各国で同じように行われており、まさに「おま言う」(お前が言うか)状態であることを申し上げておきます。
 

【近隣アジア諸国の年間トリチウム放出量(経済産業省HPより)】
 
世界各国のトリチウム放出量など、詳細は以下リンクをご覧ください。
 →外国の各発電所のトリチウム放出量(資源エネルギー庁:ALPS処理水資料集より)
 
福島の廃炉作業を進めるうえで大きな課題であった、ALPS処理水の海洋放出がこうして開始されましたが、科学的且つ客観的視点をもって対応し、そして冷静に見守りつつ、私は今後も福島県で獲れた魚を美味しくいただきたいと思います。