原子力災害時の住民避難は「効果的運用」を

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定期検査中の関西電力 高浜発電所4号機が4月23日夜に原子炉を起動。
 
東日本大震災以前も含めて、関西電力の原子力発電プラント全基が稼働するのは、全11基体制であった2008年12月~09年2月以来となるとのことであり、今夏の電力需給に対しても盤石の体制となることを喜ぶとともに、これを支える現場の皆さんに敬意を表する次第です。
 
原子力発電に関しては、こうして西日本のPWR(加圧水型)プラントの再稼働が進むなか、遅々として進まないのがBWR(沸騰水型)プラントですが、先般ブログでエールを送った東京電力の柏崎刈羽原子力発電所7号機を始め、東北電力 女川原子力発電所2号機や中国電力 島根原子力発電所2号機、日本原電 東海第二発電所の早期再稼働に期待が高まるところ。
 
そうしたなか、昨日は茨城県東海村議会の会派「新政とうかい」の皆さんが敦賀市を訪れ、嶺南Eコースト計画を始めとし行政視察をされ、一部私もアテンドさせていただきましたが、当地に設置される東海第二発電所の再稼働に向けた課題は、原子力災害発生時の「避難計画」。
 
この「避難計画」について、原子力規制委員会は4月22日、原子力災害時に屋内退避する場合の、効果的な運用を明確化するための検討チームを始動し、原子力規制庁および内閣府(原子力防災)の担当官に加え、放射線や原子力防災などの外部専門家、地方自治体の関係者をメンバーとして、今年度内に検討結果をとりまとめる方向で検討を進めています。
 
原子力災害対策指針では、原子力発電所が全面緊急事態となった場合にUPZ(概ね5~30km圏)内の住民は屋内退避をすることとしていますが、屋内退避の解除や避難への切替え等の判断は示されておらず、検討チームは2月14日の規制委で了承された、
 
・屋内退避の対象範囲及び実施期間の検討に当たって想定する事態の進展の形
・屋内退避の対象範囲及び実施期間
・屋内退避の解除又は避難・一時移転への切替えを判断するに当たって考慮する事項
 
の3点を検討課題とし、地方自治体等の意見も踏まえて効果的な運用の考え方や必要な事項をまとめるとしています。
 
原子力産業新聞の記事によれば、この課題に関連して、本検討チームの委員となっている敦賀市の藤村弘明危機管理対策課長は「住民への広報のタイミングや範囲も検討に加えていただきたい。能登半島地震以降、住民の皆さんの意識は高まっている」と指摘し、安定ヨウ素剤の確実な配布についても検討に含めることを要望。
 
規制委は、住民への周知とヨウ素剤配布について、検討課題に含めて必要な議論を行う考えを示したとのこと。
 
続く記事には、内閣府では屋内退避についてのわかりやすいリーフレットを作成し、各自治体に配布するなど、地域住民への理解促進につとめているが、今後とりまとめられる検討の結果をどう周知していくかも重要な課題になるとありました。
 

【内閣府の「屋外退避」リーフレット】
 
 →「屋外退避」の詳細はこちらをご覧ください
 
原子力発電所の再稼働に向けては、個々のプラントの安全性向上対策が整うことに加え、周辺自治体の避難計画策定も条件となるところ。
 
とりわけ首都圏に近く、100万人近い対象者を有する東海第二発電所においては、この計画策定が注視される訳ですが、先に述べたよう、「効果的な運用」に主眼を置いた議論が進むことを期待する次第です。