文句や疑義があるのならば科学的に論理的に反論を

ブログ 原子力

中国が日本に対し、「核汚染水の海洋放出は人類の命と健康に関わる」と主張し、「独断専行してはならない」と牽制する東京電力福島第一原子力発電所「処理水」の海洋放出。
 
国内では、西村経済産業相が昨日、全国漁業協同組合連合会(全魚連)の会長らと面談し、「国際的な安全基準に合致している」と理解を求めたものの、全漁連側は「反対」の立場を崩さず、歩み寄りはみられなかったとのこと。
 
また、政治においては、立憲民主党の阿部知子衆議院議員らが処理水の放出計画中止を求める共同声明を発表したことに対し、国民民主党の榛葉賀津也幹事長は記者会見で、「(放出されるのは)汚染水ではなくて科学的に安全が証明された処理水だ。科学は嘘をつかない。文句や疑義があるのならば科学的に論理的に反論をしてほしい」と述べ、苦言を呈しました。
 
さらに、「こういう問題を政治利用して世論を煽ったり、ミスリードをするような言動を繰り返すのは極めて残念、遺憾だ」とも語ったとのこと。
 

【会見する国民民主党 榛葉賀津也幹事長】
 
榛葉幹事長には「良くぞ言ってくれた。その通り!」と深く相槌を打った次第ですが、難しい問題だからこそ、政治家が前面に出て、態度を明らかにすることが重要なことと認識するところです。
 
なお、そもそもの「ALPS処理水」は、建屋内に溜まった放射性物質を含む水を浄化処理した水で、増え続ける処理水の処分方法について、6年以上にわたる専門家らによる議論を経て、2021年4月に海洋放出する方針を決定したもの。
 
除去するのが困難な「トリチウム」は宇宙から降り注ぐ宇宙線によって生成され、自然界にも広く存在するほか、雨や飲料水にも含まれており、体内に入っても、蓄積されることはなく、水と一緒に排出され、人体への影響はほとんどないと考えられています。
 
また、国内外の原子力施設からも各国の規制基準を満たした上で、海洋や河川、大気中に放出されています
 
さらに、放出するトリチウムについては、ALPS処理水を大量の海水で希釈することにより、濃度を国の規制基準値(60,000ベクレル/リットル)の40分の1、世界保健機関(WHO)が定める「飲料水基準」(10,000ベクレル/リットル)の約7分の1、1500ベクレル/リットル未満にまで薄めることとしています。
 
被災者であり、当事者である全漁連の皆さんが「反対」している部分が、こうした科学的な面でない「不安」から来るものであるとするならば、これを取り除くのは極めて難しい訳ですが、出来ることは、繰り返し丁寧に、あらゆる角度から説明を重ねることに尽きると考えるところ。
 
そこから生まれる、互いの「信頼関係」がまさに、「不安」に対する解決策であるとも考える次第です。
 

【放出を待つ、福島第一原子力発電所敷地内のタンク群(東京電力HDより)】