日米で大きく異なる原子力規制

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イラン攻撃に伴う原油価格の高騰が日本経済に及ぼす影響を第一生命経済研究所のエコノミストが試算。
 
試算によれば、米原油先物指標WTIが1バレル=80ドル台に上昇し、その価格水準が1年続いた場合は日本の実質国内総生産(GDP)を0.21%押し下げ、2年続くと0.35%下振れさせる。
 
さらに、戦況悪化で同130ドル台に上がり、その水準が1年続くと0.58%、2年続くと0.96%と1ポイント近くの押し下げを予測し、影響が深刻化すれば実質賃金の悪化が懸念され、日本銀行の利上げにも逆風と指摘しました。
 
先日も敦賀市内のガソリンスタンドで、給油する車が長蛇の列になっている光景を見ましたが、言うまでもなく、原油価格の影響は日本経済、国民生活に直結することから、イラン情勢が早期に収束することを願うばかりです。
 
さて、3月3日のブログでは、ホルムズ海峡の事実上封鎖とわが国のエネルギーについて思いを述べましたが、こちらは「直ちに」ではなく「長期化」した場合の懸念として述べたものであり、変に不安を煽ることや、これみよがしに原子力発電を推進したいがために書いたものでないことはご理解いただきたいところ。
 
その上で、以前からご紹介しているよう、エネルギー供給力確保のための世界各国の原子力開発の進捗は著しく、その先頭をいくであろう米国では、原子力開発ベンチャー企業「TerraPower(テラパワー)」社が現地時間4日、ナトリウム冷却高速炉と溶融塩エネルギー貯蔵を組み合わせた第4世代のナトリウム冷却小型高速炉「Natrium(ナトリウム)」(基本電気出力34万5千キロワット)初号機の建設許可を米原子力規制委員会(NRC)から取得したと発表しました。
 
商業規模の先進的原子力発電所として建設許可を取得したのは初めての事例。
 
同社はワイオミング州でナトリウムの原子炉以外の部分を建設中で、今後数週間以内に原子炉部分の建設を始め、2030年代初頭に運転を開始する計画とのこと。
 

【ナトリウム炉とエネルギー貯蔵システムの完成予想図(テラパワー社資料より引用)】
 
なお、テラパワー社は2008年に設立した、米マイクロソフト社の創業者ビル・ゲイツ氏が会長を務める原子力開発ベンチャー企業。
 
あらためて、猛烈なスピードで原子力開発を進める米国の政策推進力に驚くばかりですが、同社がNRCに建設許可を申請したのは2024年3月末。
 
ちょうど2年で許認可されたことになり、やはり原子力規制の面で、日本との大きな違いがあると認識する次第です。
 
そのNRC。
 
本年2月には、さらなる原子力技術の許認可審査の効率化と迅速な導入に向けて、意思決定の合理化および業務機能の統合を柱とする大規模な組織再編に着手すると発表。
 
今回の再編は、2025年5月の大統領令「原子力規制委員会改革の命令」および、同年2月の「政府効率化に向けた人員最適化の実施」に基づく要件をふまえたもので、当面は、原子炉安全プログラムの主要ポストの任命を進めるほか、今後60日以内に新たな組織図と変更管理計画を策定し、9月末までの実施をめざすとのこと。
 
原子力政策は国策であるという点は、日米とも変わりませんが、政府(政治)が関与し、主導している点において、ここでも日本の違いが。
 
NRCのホー・ニエ委員長が述べた、「本再編は、原子力技術の安全な導入を加速するという国家的優先事項に沿ってNRCの組織構造を見直すものであり、より効率的かつ迅速な意思決定を可能にする」との言葉が、米国の姿勢を象徴するものとして、強く印象に残った次第です。