電事連も節電要請。電力需給逼迫の背景にある現実と実態。

エネルギー ブログ

福井県嶺北地方や富山県、新潟県などに大雪をもたらした今期最強寒波は、北陸自動車道での立ち往生を始め各交通機能麻痺など影響を及ぼし、昨日ようやく緩みました。
 
これによる流通・物資調達への影響というのはすぐさま如実に表れており、昨日妻が買い物に行くと、野菜やパン、牛乳などの棚が見事に空であったとのこと。
 
この影響範囲は、決して一部のエリアに留まらないことを思えば尚のこと、今回の事象も我がことと考え、対策に反映すべきことがないか検証を行っておくべきと考えるところです。
 
北陸地方の寒波が過ぎたと思えば、今日は関東地方でも雪の予報。
 
コロナ緊急事態宣言の1都3県を含め、混乱なきようリスク意識を高めた行動をお願いするところであります。
 
さて、この寒波と電力需給の関係については、9日のブログでも節電のお願いなどをお伝えしたところですが、電気事業連合会や大手電力も10日、全国的な電力需給逼迫を受けて節電への協力を呼び掛けています。
 
電力各社は安定供給を確保するため今冬は最大限の対策を取っている訳ですが、電事連は「3連休明けの12日は全国的に悪天候が見込まれ、需給がさらに悪化する可能性がある」と強調したとあります。
 
電事連が需要が増える夏や冬前を除いて節電への協力を求めるのは、東日本大震災直後の2011年3月14日以来となることを思えば、事態は極めて深刻なものと受け止めています。
 
需給逼迫は実態として、各電力会社間で電力を融通し合う綱渡りの状況にある訳ですが、自身のFacebookでのやり取りにおいて、九州管内では廃止を決めた発電機の再稼働や災害用の高圧電源車を系統連携し何とか電力供給しているとの実態を知り、国民生活に欠かせない電気の安定供給に昼夜を問わず懸命な努力を続けている電力関連産業の皆さん、いわゆる「電力マン」の奮闘に対し、改めて心からの感謝と敬意を表するところ。
 
こうして現場は必死でライフラインを守っている状況にありますが、今期の需給逼迫は、単に寒波で需要が高まる一過性の理由ではなく、LNG(液化天然ガス)燃料調達の関係が起因していることが、より深刻さを増している所以と受け止めるところ。
 
NPO法人国際環境経済研究所理事の竹内純子さんの「アゴラ」での投稿を拝見するとタイトルは『ブラックアウトの危機!「電力緊急事態宣言」を出すべきだ』とし、このLNG燃料調達の件に関しては、「中国での寒波や炭鉱事故、中国と豪州の政治問題から中国が豪州産石炭の輸入抑制措置を取り、その代替として天然ガス依存が高まったこと、韓国でも公害対策として石炭火力を16基停止させて天然ガスの利用が増えたなどの事象が重なり、東アジアのマーケットが影響を受けたこともあるのだろうと推測しています。」とあります。
 
また、「豪州やカタールなど天然ガスの産地でトラブルがあったという話も仄聞している。」ことや「天然ガスは-162℃という超低温で液体にして輸送・貯蔵するので、低温冷却するタンクを大量にはもてませんし、LNGは長期保存には向かないのです(長くても1-2カ月)」、つまりは、「石油は半年分くらい国内備蓄がありますが(オイルショックの後にできた石油備蓄法という法律による)、LNGは2週間分程度しか国内に在庫がない。」という現実があります。
 
さらには、「LNG船から陸にLNGを荷揚げするときには、太さ数十センチのパイプを接続します。冬の荒海でそのパイプを接続するなど至難の業で、荒れているときは荷揚げをできない日も当然あります。冬の日本海側でこの作業を安定的にできるなんて思っちゃいけません。」ともあり、陸地続きでガスのままパイプラインで安価で安定的に供給ができる欧州やロシアとの違い、日本は液化して輸送してまた温度を上げてガスに戻して使うということをしないといけないことから、コストも安定供給リスクも他国と同等に語れないと述べています。
 
最後には、「それなのに再エネ比率など含めて、エネルギー政策を他国と比較して安易に語ることが多すぎたように思う。」、「LNG調達のリードタイムに通常2カ月程度は必要でしょうから、早く国民に周知して、電力の節約に努めてもらわねば、燃料が底をつくことになりかねません。」と根幹に関わる部分への懸念と危機意識のもと投稿を結んでいます。
 
電事連や大手電力会社が節電要請する背景には、こうした内外の要因による「調達リスク」があることを強く念頭に置く必要があると考えます。
 
また、あらゆる物資は、需要が供給力を上回れば(需要過多)、必ず価値(価格)は上がる市場の原理と同様、電気とてこの需給逼迫によって市場価格は高騰してきています。
 
この点は、あまり報道されない事実でありますので、また整理のうえお伝えできればと思います。
 
いずれにしましても、外国からの資源調達には地政学上のリスクなど様々な不安定要素があるのは当然の如きであり、こうしたリスクを可能な限り低減させるためにも、エネルギー自給率を高めていくことは、少資源国の我が国において不変の考えであります。
 
本日以降も、仮に需給逼迫を煽ったり、電力会社の手落ちだなどと報道されることがあった際には、ここまで述べたような実態と現実、根本的なエネルギー政策の問題があることを是非頭に置いて、お聞きいただければ幸いに思います。
 
こうしている今も、危険と隣り合わせの中、昼夜を問わず停電復旧に励む電力マンの姿があって電力供給が成り立っていることも現実として胸に留めていただければ尚幸いに存じます。
 


【大雪により電線と干渉した倒木を点検・撤去している状況(北陸電力送配電Twitterより)】