地層処分を考えるフォーラムin福井 〜私たちから考えよう、そして次世代へ〜

ブログ 原子力

これまでにも幾度かお話ししている「科学が風評に負けてはならない」との考え。
 
とりわけ原子力に関して言えば、福島第一原子力発電所ALPS処理水の海洋放出や発電所で発生した高レベル放射性廃棄物の地層処分がまさに、この考えに当てはまるもの。
 
「風評」を招かないためには、関係者のみならず、科学的知見に基づく国民理解が必要であることは言うに及ばすですが、昨日はそうしたスタンスに立ち、敦賀市民文化センターにて開催された「地層処分を考えるフォーラムin福井」に出席してまいりました。
 

【開催チラシとフォーラム会場の様子】
 
フォーラムは、主催者代表あいさつに始まり、前半は2つの講演。
 
政策アナリストの石川和男氏からは「地層処分 〜国策にどう向き合う〜」、次世代層の学習活動についての発表では福井南高校の浅井佑記範先生より、「教育における地層処分 〜生徒たちが自ら考えて実践する学習活動〜」を拝聴しました。
 
浅井先生の紹介によると、実は不登校経験者が多い福井南高校では、
 
・教科横断型授業
・知識ではなく、思考法の伝授
・学問は楽しいを大切に
・教科の壁はつくらない
・余白のある授業(答えを言わない)
 
を教育方針とし、浅井ゼミでは、地層処分の探究授業を実施。
 
兵庫県の高校に原子力に関する意識調査をお願いしたら、「調査は繊細で政治的なので協力できない」との回答を受けるなど、リアルな意識ギャップを感じつつも、東京の4つの大学、4つの高校と交流しての意見交換、ATOMOΣ(原子力学会の雑誌)にゼミ生が隔月でコラムを連載するなど、様々な角度から学んでいることを知りました。
 
浅井先生曰く、地層処分に関しては、
 
・誰がアクセスし、情報提供するか
・地層処分は「学ぶ」のではなく、「知る」ことが重要
・世代間交流より、まずは同世代間交流
・この問題を社会教育のモデル形成ツールに
 
との考えのもと、学校だけでなく、社会や家庭での教育が不可欠との考えに、私も共感した次第です。
 
また、後半の<パネルディスカッション>では、「待ったなし!“高レベル放射性廃棄物の地層処分” いま私たちにできること」をテーマに福井大学の学生さんを含む5名がパネリストとして登壇(コメンテーターは石川和男氏)。
 
コーディネーターの仕切りのもと、次のような意見が挙げられました。
※以下、議事メモとして記載いたします。
 

【パネルディスカッションの様子】
 
Q:寿都町と神恵内村が文献調査を行う現場から思うこと
・寿都町や神恵内村の応援をしていかないといけない。最終処分は解決しないといけない問題との思いをあらゆる世代が持つべき。
・「自分ごと」と考えることになったのは、国民理解の第一歩。敦賀では、もんじゅの公開ヒヤリングの際に6000人もの反対派が押し寄せた経験があり、当該地域以外の人があたたかく見守ることも大事と思う。
・原子力発電は身近なものであったために、同世代で原子力の話題があまりなかった。であるから、最終処分のことも知らない訳だが、今回の寿都町、神恵内村の文献調査で関心を持つことができた。
 
Q:寿都町、神恵内村しか手を挙げてないことについて
(石川和男)政治プロセスが3つ(文献、概要、精密調査)もあると、候補地はリスク分散の意味で「10箇所」くらいは要るのではないか。3つ、4つと出るうちに、国民の関心も高まると思うし、それによって国策が進むこともあると考える。
 
Q:「GX基本方針」での原子力政策(政府の責任において今後も活用する)についての受け止めについて
・科学が著しく進歩している中で、最終処分問題が進まないと、若い学生さん達が「将来大丈夫なのか」との気持ちになるのでは。
・将来、原子力技術者に進む上での覚悟が強まった。最終処分のことは、開発した当初から課題としてあったのに、なぜこの世代が負担を負わないといけないのか。
 
Q:政府が原子力発電所の再稼働を急ぐ理由について
・日本の国情を考えた場合、原子力発電が国民生活や経済を向上させていく手段。
・原子力の人材確保・育成が大事であり、再稼働を進めることがそのことにつながる。
・太陽光パネルは、2012年のFIT導入時は国産メーカーだったが、今はほぼ中国製。国内で完結する産業を育てるという意味では原子力も再エネも同じ。
 
Q:将来世代にツケを回さないためにやるべきことは
・地層処分とは何か、どういうプロセスを経て決定するのか、どのような交付金があるのかなど、成功事例のある海外の有識者より示唆いただくような形が必要なのではないか。
・「知ること」が大事。まずは、発電所のあるまちに住む私たちが「学ぶべき」ではないかとの思いのもと取り組んでいる。学んだことを紙芝居にして地域の小学校や団体に貸出して知っていただく活動をしている。
・その地域が風評被害に遭わないことが大事。若狭地域も「原発銀座」と呼ばれていい気持ちはしなかった。地層処分地に選定されるまちが、「核のまち」出身というような偏見の目を持たれることのないよう、我々は正式な名称を使うことも大事。
・スウェーデンでは、誰もやっていない事業(地層処分)を自分たちが受け入れたことを誇りに思っていることを知り、そうしたマインドが必要なのではと感じた。
 
Q:中間貯蔵の問題について
・(石川和男)報道は煽るものが多い。結婚より離婚の話題の方が取り上げられる。フランスに持っていくことがそんなに紛糾することか。過去のしきたりにいつまでも拘っている場合ではない。地域においては、人口減少が深刻な問題であり、県外搬出を認めるか否かでなく、代わりに何を求めるかを議論した方が良い。後世に何を残すかだ。国と立地地域はWin-Winの関係であるべき。
 
Q:文献調査に手を挙げることについて
・消費地の皆さんにも「自分ごと」として考えて欲しい。
・これから先を見込んで、敦賀も文献調査をやっていってもいいのではないか。
・文献調査を行うというだけで、廃棄物を受け入れるのではないかと先読みする人もいるが、フラットに考えられる人を増やす意味でも、(文献調査に)手を挙げることは大歓迎である。
・最終処分場は「ごみ処理施設」ではなく、「科学の英知」が集まってくる場所のイメージになれば良いのではないか。全国の人に真剣に考えて欲しい。
・(石川和男)文献調査は、掘削して「良いかどうか」を評価するための調査なので、そのことに躊躇するのは滑稽。調査して「ダメ」という結論が出るだけでも調査した価値がある。
 
最後に石川和男氏からは、「原子力発電にしろ、地層処分の話しにしろ、考えや思想信条が違うのは当たり前。批判し合うのではなく、賛成・反対双方が尊重し合うことが大事。」との言葉がありました。
 
確かに、批判し合う姿勢から生まれるのは「分断」であり、そこから「風評」につながるのだとすれば、「負けてはならない科学」とはシンプルに、物事の真実を追究することにあると認識した次第です。
 
主催者発表によると、フォーラムに参加された方は、会場94名、YouTube51名の計145名。
 
聴講された145名とともに、このフォーラムのサブタイトル「〜私たちから考えよう、そして次世代へ〜」の思いのもと、私も引き続き、情報発信に努めていきたいと考えます。